不動産売却における値下げのタイミング

2019/06/17 投稿

家を売り出していて、なかなか売れない時期が続くと、「価格を値下げした方がいいかな?」と悩むときがあると思います。

しかし、「もしかしたら明日にはこの値段で買う人が現れるかもしれない…」と思ってなかなか価格を下げることができない方も多いでしょう。

価格を下げるにしても、どのタイミングで、いくらまで落とせばいいのかって分からないですよね。

今回は、家を売るときに知っておきたい適切な値下げのタイミングについてや、いくら値下げするのか、そして値下げを前提とした解説売り出し価格の決め方について解説していきます。

やっぱり家を売るときは値下げがつきものなのかな…。
値下げをせずに売れるに越したことはないですけど…。値下げも立派な家を売るための戦略ですからね!
戦略?なるほど、それなら面白い…!家を売る戦いに備えてしっかりマスターしてやろう。
(変なスイッチ押しちゃったかしら…)

 

適切な値下げのタイミング

  1ヶ月以内 2ヶ月以内 3ヶ月以内 6ヶ月以内 9ヶ月以内 12ヶ月以内
累計事例シェア(%) 39.6 55.5 67.3 86.7 96.2 100.0
売出価格(万円) 2,597 2,675 2,731 2,695 2,673 2,562

「累計事例シェア」とは、その時点で成約した事例の割合になります。つまり、約67%もの物件が3か月以内に成約しているということです。

媒介契約の期間が3か月

売り出してから3か月以内に成約しているケースが多い理由の1つは、不動産会社と結ぶ媒介契約の期間を、多くの物件で3か月(上限)という期間にしているからです。

言い換えると、多くの不動産会社は、査定金額を3か月で売れるような価格設定にしており、売却活動もその期間に合わせています。

というのも、3か月で売れなければ媒介契約の期限を迎えてしまい、売主がほかの不動産会社と媒介契約を結んでしまう可能性があるからです。

不動産会社は基本、3ヶ月以内に家を売ってしまいたい。このような背景から、不動産売却においては一旦3か月を目安に売却計画を練りましょう。

値下げのタイミングを考えるコツ

前項までで、売り出し~成約までは3か月で考えるべきということが分かりました。次

に、その3か月の間で「いつ」値下げするのか?という点について解説します。

値下げのタイミングを考えるためには、相場動向と売り出した物件に対する問い合わせ件数を常にチェックしておく筆余があります。

また、季節的な要因を重視するのではなく、実際の販売期間を重視して値下げのタイミングを冠がるようにしてください。

つまり、値下げのタイミングを考えるコツは以下の3点です。

・相場動向を常にチェックする
・問い合わせの件数を把握する
・季節ではなく販売期間を重視する

相場動向を常にチェックする

まずは、相場動向を常にチェックしましょう。具体的には、周辺で売り出している競合になり得る物件の価格を、不動産ポータルサイトなどでチェックすることです。

というのも、不動産価格は周辺の競合物件の価格に連動するので、周辺の競合物件が価格を下げたのであれば、自分の売り出している物件も値下げを考えた方が良いからです。

問い合わせの件数を把握する

ただし、「競合物件が値下げした=自分の物件も値下げする」と、短絡的に考えてはいけません。

なぜなら、仮に競合物件が値下げしても、問い合わせの件数が減っていなければ値下げしなくても良い可能性があるからです。

問い合わせの件数とは、広告を見て検討者から電話やメールが来た件数です。

仮に、競合物件が値下げしていても問い合わせ数が落ちていなければ、その価格でも興味がある人が継続して存在するので、価格を下げなくても売れるかもしれません。

そのため、自分で競合物件をチェックしつつ、不動産会社の営業担当者に「問い合わせの件数は必ず報告してください」と伝えておきましょう。

季節ではなく販売期間を重視する

一般的に、転勤や大学入学などが伴う2~3月や9月は家が売れる時期といわれています。

しかし、そのタイミングに合わせて値下げするというよりも、売却期間に応じて値下げする方が賢明です。

というのも、転勤や入学になったときは「賃貸」を真っ先に考える人が多いため、「購入」に関しては季節によって需要が高まるかどうかはエリアによって異なるからです。

そのため、「3か月という販売期間」を目安に、現場をよく分かっている不動産会社とも良く相談して決めることをおすすめします。

値下げ価格の決め方

値下げのタイミングが分かったところで、次にいくら値下げするべきか?という点について解説します。

値下げ価格は物件によって異なるので一概にはいえませんが、重要なのはそのインパクトです。

そして「端数の原理」について知っておきましょう。

・値下げにはインパクトが重要
・端数の原理を知っておく

これら2点をふまえて値下げ価格を決めると、売却に一役買ってくれるはずです。

値下げにはインパクトが重要

まず、値下げにはインパクトが重要です。

というのも、値下げするということは、その価格では反響(問い合わせなど)がない、もしくは問い合わせがあるけど売れないということだからです。

つまり、その価格は「高い」と思われているのであり、その印象を変えなくてはいけません。

そのため、10万円ずつ刻んで値を下げるのではなく、最低でも50万円単位で下げましょう。

不動産は高額の商品であるが故、購入者もそう簡単に購入を決断できません。

物件や売り出し時期によっては、最終的に売り出し価格の1割減までは覚悟しておく必要があります。

その覚悟があるかないかで、インパクトがある値下げをするかどうかの判断ができるようになるでしょう。

端数の原理を知っておく

値下げをする際は「端数の原理」を知っておくことが重要です。

端数の原理とは、言い換えると「台替わり」のことで、端数を意識して百万円台…一千万円台…という台替わりを意識するということです。

これは、インパクトを重視して「50万円単位で値下げする」という点にも通じることです。

端数の原理を利用することで、値下げのインパクトが強くなり、また検索にも引っかかりやすくなります。

端数の原理の事例

たとえば、3,148万円で売り出している物件を、3,128(-20万円)にしてもインパクトは薄いですよね。もしかしたら、その物件に来訪している人すら、値下げしたことに気づかないかもしれません。

しかし、3,098万円(-50万円)にすることで、百万円台の数字が変わっているので値下げした感が出ます。

また、問い合わせ件数などによっては2,998万円(-150万円)にした方が良い場合もあります。2,998万円にすれば一千万円台が替わっているので、インパクトは非常に強いことが分かるのではないでしょうか。

検索にも引っかかりやすい

このように、端数を意識して値下げすることで検討者に値下げした感をアピールでき、問い合わせ数が増えやすいです。

さらに、中古不動産のポータルサイトの多くは、価格を「2,000万円~2,500万円」のように500万刻みで検索できます。

つまり、500万円台を意識することで検索に引っかかりやすくなり、さらに集客が期待できるということです。値下げする際にはこれらの点を意識して価格設定してみてください。

効果的な値下げとは

ここまでで、値下げするタイミングと値下げする金額について解説してきました。次に、値下げをより効果的にするための心構えと対策を紹介します。

心構えとは、「家が売れないから値段を下げるのではなく、家を売るために値段を下げる」と値下げを戦略的に考えるようにするということです。

その上で、まずは値段以外で家がなぜ売れていないかを考えることも大切です。

【効果的な値下げのためには…】
・値下げは戦略と考える
・値下げする前にそれ以外の原因を探る

値下げは戦略と考える

まずは、「値下げは戦略である」と考えることが重要です。

値下げをしなければ売れ残り物件になってしまう恐れもあるので、事前に値下げをする時期も決めてしまって、戦略として値下げを活用しましょう。

・値下げしないと売れ残り物件になる
・値下げする時期を決めておく

この2点について詳しく解説します。

値下げしないと売れ残り物件になる

値下げはネガティブなイメージを持つ人もいると思いますが、基本的に中古不動産の売却に値下げはつきものです。

そのため、逆に値下げを戦略的に行うことで「早く売りやすくなる」と、ポジティブに考えるべきです。

値下げにネガティブなイメージを持ちすぎて、なかなか値下げの決断ができないと「売れ残り物件」になる可能性があります。

売れ残り物件として認知されてからの方が、値下げ交渉はさらに激しくなるので要注意です。

値下げする時期を決めておく

そもそも、値下げを戦略に行う方法は、売り出しはじめから値下げする時期を決めておくことです。

3か月で成約するためにはいつ値下げすれば良いか?という視点で考えましょう。

もちろん、競合物件状況や問い合わせ件数によって途中で変更しても良いですが、まずは最初に計画しておくことが重要です。

計画を立てておけば、その計画に沿って値下げを検討すれば良いだけなので、値下げするタイミングを逃すリスクも小さくなります。

その方が柔軟な対応ができるようになりますよ。

値下げする前にそれ以外の原因を探る

当然ながら、値下げせずに売れれば、それに越したことはありません。

そのため、値下げをする前に、広告のチェックと市場調査を再度行い、売り出し価格以外に原因がないかチェックしてみましょう。

広告のチェックとは、「掲載している画像の点数や画像自体のきれいさ、アピールポイントや間取り図の見え方など、きちんと物件の魅力をアピールできているか?」という点のチェックです。

また、相場を改めて確認し、売り出し当初から環境が変わっていないか?を逐一チェックします。

環境が変わっているのに広告を変えない…接客を変えないのであれば、広告や接客方法に改善の余地があるかもしれません。

悪い言い方ですが、「営業担当者がきちんと仕事をしているのか?」と疑うことも大切ということです。

値下げと値引きを前提とした価格設定と交渉のポイント

さて、今から家を売却しようという方は、「そもそも価格設定はどうするべきか?実際に価格交渉されたときはどう対処すべきか?」という点が気になりますよね。

売り出し価格を決めるには、複数の不動産会社に査定を依頼すること、そして周辺で売りに出されている物件の相場価格を調べることが不可欠です。

また、上述したように、不動産売却に値下げ交渉はつきものです。

だからこそ、値下げされる前提で売り出し価格設定をし、いざ値下げ交渉されたときは上手に対処しなければいけません。

【売り出し価格を決めるためには…】
・複数社に査定依頼する
・相場価格を調べる
・値下げ交渉は必ずあるという前提の価格と交渉術を考える

複数社に査定依頼する

そもそも、売り出し価格は不動産会社が提案し、最終的には売主が判断します。基本的には値下げ交渉ありきの売り出し価格にすべきですが、その価格を判断するためには複数社に査定依頼しましょう。

査定依頼すると、周辺で過去に成約した事例や、現在売り出されている競合物件の価格を加味した査定額が提示されます。

その金額を提示した根拠を不動産会社ごとにヒアリングし、その根拠が信頼できる不動産会社を選定し売り出し価格を決めるという流れです。

家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

相場価格を調べる

また、複数社に査定依頼して信頼できる不動産会社を選定するときは、自分でも以下のサイトを利用して相場価格を調べておきましょう。

・REINS Market Information
・土地総合情報システム

これらのサイトで成約事例を調べておくことで、ざっくりとした相場価格が分かってきます。相場を理解しておくことで、より不動産会社が提示する査定額の根拠が検証しやすく、優良会社の見極めがしやすいです。

>家がいくらで売れるのかを自分で調べる方法

値下げ交渉は必ずあるという前提の価格と交渉術を考える

さいごに、値引き交渉されたときのテクニックは、値引き交渉を無視しないことと買い手がかぶった場合の対処法を知っておくことです。

【値引き交渉のテクニック】
・値引き交渉を無視しない
・買い手が被った場合の対処法を知っておく

この2点について詳しく解説していきます。

値引き交渉を無視しない

まず、前提として値引き交渉を無視しないという点です。値引き交渉をするときには、相手も「ここまでの交渉は無理かな…」と思っているケースも多いです。

そのため、その場でNOというのはではなく、歩み寄る姿勢が重要になります。そのためには、実際に値引き交渉をする営業マンに下限価格を伝えておきましょう。

たとえば、2,500万円を下限価格に設定しておき、2,450万円で値下げ交渉されたとします。

仮に、営業マンが下限価格を知っていれば、「2,450万円は厳しいです。ただ、2,500万円なら可能性があるので売主を説得してみます」という交渉が可能になります。

しかし、下限価格を伝えておかないと、その場で断って終わってしまい、せっかく売れるチャンスを無駄にしてしまうかもしれません。

買い手が被った場合の対処法を知っておく

仮に値下げ交渉している最中に、「売り出し価格通りに購入する」、つまり値下げゼロで購入したい人が現れたとします。

基本的には申し込みは先着順なので、価格が折り合って申込みを先にした人が優先です。しかし、結局ローンが否決になって契約できなかったというケースもあり得ます。

そのため、「ローンの仮審査に通っている」もしくは「現金で購入する」というように、資金計画が固まっていることを申込み条件とする…などのルールを不動産会社と話し合って固めておきましょう。

まとめ:不動産売却に値下げはつきもの

売り出した価格どおりに売れるケースは稀と考えて売却活動に臨む方が、かえって気を張らずに済みます。

売り出し価格を決める際に、自分の中で「最低でもこの価格では売りたい(下限価格)」という金額を設定しておくことは重要です。

とくに、住み替えのために家を早く売りたいという希望があるなら、値下げからの値引き交渉まで考えておくべきです。値下げを戦略と考えて、うまく家を売るようにしましょう。