親の家を売るには?親の代わりに実家を売却する方法

2019/04/17 投稿

株式会社野村総合研究所は、2033年には日本の家屋の3軒に1軒が空き家になっているとの予測を発表しました。

そんな中、「両親と同居するので誰も住まなくなる実家を親の代わりに売却したい」そう思っている方が増えてきているのではないでしょうか。

確かに、高齢の方では不動産売却の難しい用語などが理解しにくく、つい投げやりになってしまったり、本当は高く売れたのに安く買いたたかれたりなんてことになる可能性も捨てきれません。

今後、空き家の売却はますます難しくなっていくことが予想されます。

基本的には、名義人本人でなければ不動産の売却はできませんが、子供が親の代わりに実家を売却する方法が2つだけあります。

今回は、親の代わりに実家を売却する方法を紹介します。
よろしくお願いいたします!

 

親の代わりに家を売る2つの方法

まず、親の代わりに家を売る方法である以下について解説していきます。

・親の代理人として家を売る
・成年後見人として家を売る

親の代理人として家を売る

まず、親の代理人として家を売る方法を知るために、以下の点を理解しておきましょう。

・代理人として売却する流れ
・委任状とは?
・委任状に関する注意点
・代理人として売却する注意点

代理人として売却する流れ

代理人として家を売却する流れは、「委任状を取得する」という点以外は通常の売却と変わりません。つまり、委任状を取得した後は以下の流れで家を売却します。

①不動産会社と媒介契約を結ぶ
②売却活動を行う
③申込を受け売買契約を結ぶ
④家の引渡しを行う

通常であれば、上記の一連の手続きは売主本人(親)が行います。「代理人として売却する」とは、本人に代わり代理人が上記を行うということです。

委任状がない限りは、いくら親族といえども代理で不動産を売却することはできません。

委任状とは?

委任状とは、以下の内容が記載されている書面です。

・物件の詳細情報(所在地や構造、面積など)
・委任の範囲
・代理人の住所氏名および押印(実印)
・委任者(親)の住所と署名および押印(実印)
・書面の日付

上記の委任状のほかに、委任者(親)と代理人の印鑑証明書(3か月以内のもの)と住民票が必要で、それをもって実印・所在地の確認を行います。

また、代理人は代理人であることの証明のために、運転免許証などの写真付き身分証明書も必要になります。

委任状に関する注意点

委任状を作成するときの注意点は、前項で挙げた「委任の範囲」です。

というのも、委任の範囲を「不動産売買契約の締結に関する権限」だけにすると、媒介契約の締結や引渡しに関する業務ができません。

そのため、代理人が完全に家の売却を引き受けるなら、以下のように不動産売却に関する全ての業務を委任の範囲に指定しましょう。

・媒介委託に関する権限
・不動産売買契約の締結に関する権限
・手付金や売買代金の受領等に関する権限
・引渡しに関する権限など
フォーマットは、仲介を担当する不動産会社が持っている場合が多いですね。
ネットで検索しても入手できそうだな!

 

代理人として売却する注意点

代理人として家を売却する場合の注意点は、たとえ委任状があっても最終的には本人(親)の意思確認が必要という点です。

つまり、委任状を作成していたとしても、仲介する不動産会社が一度も本人確認をせずに売却を進めることはありません。

なぜなら、仮に代理人が勝手に売却していた場合、不動産会社が注意義務違反を問われる場合があるからです。

そのため、一般的には媒介契約を締結するときに親も呼び、不動産会社の担当者が本人の意思を確認した上で媒介契約を締結するという流れになります。

成年後見人として家を売る

2つ目の方法は成年後見人として家を売るという方法です。

成年後見人については以下を理解しておきましょう。

・成年後見人制度とは?
・成年後見人の申し立てが必要
・申し立てに必要な書類と費用
・成年後見人の注意点

成年後見人制度とは?

成年後見人制度とは、認知症などの障害によって判断能力が低下した人を保護する制度です。

成年後見人制度を利用して、たとえば子供を成年後見人にすることで、成年後見人である子供が本人に代わって家を売却することができます。

成年後見人の申し立てが必要

成年後見人となり親の代わりに家を売るためには、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行う必要があります。

申し立てを行う家庭裁判所は本人(親)が住んでいる地域の家庭裁判所であり、申し立て時に後見人にしたい人(この場合は子供)を推薦します。

そして、後見人の選任が3~4か月、不動産を処分する許可までは3~4週間程度とかかります。つまり、実際に不動産の売却活動がはじまるまで2か月程度の時間がかかる点は認識しておきましょう。

申し立てに必要な書類と費用

成年後見人の申し立てに必要な書類は以下の通りです。

・後見開始申立書
・申立付票(経緯を説明するもの)
・後見人等候補者身上書
・親族関係図
・本人の財産目録
・本人の収支予定表
・本人の健康診断書
・本人及び後見人等候補者の戸籍謄本
・まだ成年後見等の登記がなされていないことの証明書

ただし、家庭裁判所によって必要書類は異なる場合があるので、詳細は該当する家庭裁判所に問い合わせましょう。

また、後見人の申し立てには「司法書士報酬+登録免許税(国税)+実費(交通費、郵送費、事前調査費、登記事項証明書取得)」がかかり、登録免許税は不動産の評価額によって異なります。

成年後見人の注意点

成年後見人の申し立てに関しては、以下の点に注意が必要です。

・審議の結果では成年後見人になれない場合がある
・居住用不動産の売却は許可が必要

居住用不動産は本人(親)にとって重要な財産なので、売却価額の妥当性や売却益の用途などを加味した上で、裁判所が売却の可否を判断する点は覚えておきましょう。

成年後見人になっても、居住用不動産の売却は勝手にできないってことか。
GOOD!その通り!

 

空き家になった家をすぐに売却するメリット

ここまでで親の家を代わりに売る方法が理解できたと思います。

仮に、その家が空き家なのであれば以下の理由で、早めに家を売った方が良いでしょう。

空き家を早く売るメリット

・空き家のトラブルを回避できる
・親の介護費用などを捻出できる
・固定資産税の負担がなくなる
・資産価値が下落する前に売却できる

空き家のトラブルを回避できる

まずは、空き家を残すことで起こり得る、以下のトラブルを回避できる点です。

・放火や不法滞在などの犯罪行為
・建物の倒壊による二次災害
・景観劣化によるご近所トラブル

上記の問題は、実際に起こり得る「空き家問題」として社会問題となっているほどです。

親の介護費用などを捻出できる

生命保険文化センターによると、平均的な介護期間や介護費用は以下の通りです。

介護期間 平均4年7カ月
一時的な費用 平均69万円
月額 7.8万円(年間93.6万円)

介護期間が平均だとしても、500万円近い介護費用が必要になります。

介護期間が長引くほど、もちろん金額も高くなるので、空き家を売ることでその費用に充てることができれば、金銭面の不安は和らぐでしょう。

固定資産税の負担がなくなる

土地や建物などの不動産は、所有しているだけで固定資産税・都市計画税という税金がかかります。

空き家も例外ではなく、誰も住んでいないのであれば税金だけ支払っているという状態です。

利用していない不動産に税金を支払うのは無駄なので、売却することでその税負担を軽減できるのはメリットといえるでしょう。

資産価値が下落する前に売却できる

空き家とはいえ、その建物の構造・築年数・状態によっては売却金額が付くかもしれません。

しかし、当然ながら建物価格は築年数を経過するごとに下がりますので、早く売却した方が高く売りやすいです。

不動産会社に査定依頼すれば、今売却すればいくらで家が売れるかすぐに分かります。

査定自体は無料なので、売却を少しでも考えているのであれば査定依頼してみてください。

家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

売却後の税金

親の代わりに家を売ったときでも、その売却に伴う税金は変わりません。

ただし、親の家が古い場合には注意が必要なので、以下の点を認識しておきましょう

譲渡所得税がかかる

家を譲渡した場合、以下の計算式で譲渡所得がプラスになれば譲渡所得税がかかります。

譲渡所得
=(売却価格-売却諸費用)ー(購入価格+購入諸費用-減価償却費用)

 

譲渡所得の税率
(所得税+住民税)
課税譲渡所得
1000万円の場合
短期譲渡所得 39%(30%+9%) 納税額:390万円
長期譲渡所得 20%(15%+5%) 納税額:200万円

税率は、売却した年の1月1日時点で、その物件の所有期間が5年を超える(長期保有)か、5年以下(短期保有)かによって異なります。

長期保有の場合には約20%の税率がかかり、短期保有の場合には約39%もの税率になります。

購入時の不動産価格

親の家を代わりに売るということは、その家が古い家の可能性があります。

また、親が認知症などになっていれば、その家(建物+土地)の取得金額が不明な場合もあります。

その場合は「売却金額×5%」という非常に低い金額が取得価格になり、譲渡所得が高額になりやすいというデメリットがあるのです。

そのため、売買契約書や入出金が分かる通帳などを探して、手元に残しておくようにしてください。

相続してから売却する場合

ここまでは、親が存命の場合に親の代わりに家を売却するという話でした。

一方、親が亡くなり家を相続した後に家を売却する場合もあるでしょう。

その場合は、基本的に相続登記(名義変更)をして、その家の所有者にならないといけません。

その後は、通常の家の売却と同じ手順になります。

ただし、相続した家を売却するときには、相続開始から3年以内に売却することで譲渡所得を3,000万円控除できる、つまり譲渡所得が3,000万円以下であれば税金は非課税になる制度があります。

要件が当てはまるかは以下の記事で解説しているのでそちらを参考にしてください。

この特例は大きな控除になるので、売却するなら早めに売却した方が負担は少なくなります。

>古い家を相続したらすぐ売るべき?相続不動産の売却で気をつけたいこと

贈与の場合

最後に、贈与について以下の点を解説していきます。

・贈与税は高税率
・贈与を目的とした家の売却

結論からいうと、贈与税は高税率になるので、親の家の売却を考えているなら【贈与→自分の名義に変更→売却】という手順はあまりおすすめできません。

贈与税は高税率

贈与税は、贈与された財産価格から基礎控除である110万円を差し引いた後、以下の税率を掛けて控除額を引きます。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

たとえば、親の家を贈与され、その家の評価額が2,000万円であれば【2,000万円×50%-250万円=750万円】が贈与税になるということです。

贈与を目的とした家の親子間売買の注意

また、仮に親と子供の売買契約を結び、家を子供に売ったとします。その場合は以下が注意点です。

・通常の取引価格との差額は贈与と見なされる
・3,000万円の特別控除は利用できない

通常の取引価格との差額は贈与と見なされる

たとえば、通常の売買取引だと2,000万円の金額になる家を、子供に1,000万円で売ったとします。

その場合は、差額である1,000万円は贈与と見なされるので注意が必要です。

つまり、贈与税を逃れるために、通常(相場)よりも極端に安い価格で取引すると、その差額分は贈与と見なされて、結局は贈与税がかかるということです。

3,000万円の特別控除は利用できない

また、親と子で売買契約を結んだとしても、その取引で譲渡所得が発生していれば譲渡所得税がかかります。

自宅の売却であれば、もろもろの条件はありますが上述した「譲渡所得を3,000万円控除できる」という税制優遇を適用できるケースは多いです。

しかし、親と子のような近しい間柄の場合には3,000万円の特別控除は利用できないので注意しましょう。

安易に贈与目的で家を売ると、みなし贈与税や譲渡所得税が発生する可能性もあるのです。
税金の負担を軽くしたいなら、適正価格で家を売る必要があるね。

まとめ:親の家を売るなら早めの決断が肝心

親に代わって実家を売却する方法は、委任状をもらって代理として売却するか、成年後見人となって売却するかの2つ方法があります

多くの場合は委任状をもらってから売却することになるかと思いますが、最終的には名義人本人の意思確認が必要になることも忘れないようにしてください。

空き家のまま実家を放置しておくのは危険が伴います。

売却できるのであれば、まずは家の価値がどれくらいなのか、不動産会社に相談してみましょう。