【パターン別】不動産売却スケジュールの立て方

2019/07/11 投稿

家を売るのためには3ヶ月から6ヶ月ほどの期間がかかると一般的にはいわれています。
ただし、その内訳はどのような理由で家を売るのかによってさまざまです。
売却理由によっては、平均的な売却期間よりもさらに時間がかかってしまうこともあり得ます。

そして、家を売ろうとしている多くの人達にとって、家を売ることがゴールではありません。
たとえば、新しい家に住み替えるために家を売るのであれば、家をできるだけ高く売って、そのお金を新しい家の購入資金にして「住み替え」を行うことがゴールです。

であれば、真っ先に家を売る間のスケジュールを立てておきたいですよね?
今回は、そんな不動産売却のスケジュールを6のパターンで紹介します。

まずは基本の売却スケジュール

まずは、基本の売却スケジュールを解説します。
「基本」とは、次項以降のパターンに該当せず、自宅を自ら第三者に売却する…いわゆる「通常」の家売却です。

そんな基本の売却スケジュールは以下の通りです。

行程 内容 期間
1 査定依頼 1週間ほど
2 媒介契約の締結 査定から1週間ほど
3 売却活動 3か月ほど
4 申込&契約 1週間ほど
5 引渡し 契約から1か月ほど
6 確定申告 翌年の2月~3月

このように、査定から引渡しまでは5カ月ほどが標準になります。
物件によって期間はもちろん異なるので、あくまで目安の期間として認識ください。

査定依頼

査定依頼とは、大体いくらくらいの金額で売れるか?という目安金額(=査定金額)を算出してもらうことです。

家の検査をされているところ

たとえば、月曜日に査定依頼をして、机上査定の結果が火曜に来るとします。
そして、その週の土曜に訪問査定をして正式な査定額を聞く…という流れであれば1週間で査定は終わります。

媒介契約の締結

媒介契約とは、不動産会社に対して正式に不動産売買の仲介を依頼することです。
査定をしてから1週間以内に結ぶケースが多いです。

売却活動

売却活動の期間は物件によって最も異なるフェーズです。

東京カンテイの資料によると、首都圏の中古マンションの約67%は、売り出してから3か月以内に成約しています。

また、媒介契約の期間も3か月で結ぶケースが多いため、一旦は「売却活動期間=3か月」と思っておいて良いでしょう。

申込&契約

売却活動を経て、売主・買主間で金額や引渡し日を合意できたら申込みを受け付けます。

その後、1週間以内に売買契約を結ぶという流れが一般的です。

引渡し

引渡しとは、買主が売買代金を支払い、売主から買主へ不動産の所有権を移転する日です。

売主は、引渡し日までにローンの残債を返済する手続きをしたり、引越しをしたりしなければいけません。

一方、買主も住宅ローンの本契約をするなど、何かと忙しいです。
そのため、契約から1か月後を目安に設定することが多いですが、買主・売主の合意があれば引渡し日は自由に設定できます。

確定申告

不動産を売却した場合で、利益が出た場合や「3,000万円の特別控除」という特例を利用する場合は、翌年の2/15~3/15の期間に確定申告をします。

仮に、売却益がマイナスでれば確定申告は不要です。

住み替えのために家を売るときのスケジュール

不動産売却の基本的なスケジュールが分かったところで、次は住み替え(買い替え)時のスケジュールに関して以下を解説します。

買い先行と売り先行でスケジュールは異なる
買い先行と売り先行でメリット・デメリットが異なる

買い先行と売り先行でスケジュールは異なる

住み替えには買い先行と売り先行の2パターンあり、それぞれのスケジュールは以下の通りです。

各フェーズでの期間は、上述した「基本の売却スケジュール」と同じになります。

 

項目 先売り 後売り
STEP1 売却:査定依頼 購入:物件探し
STEP2 売却:媒介契約 購入:売買契約
STEP3 売却:売却活動 売却:査定依頼
STEP4 購入:物件探し 売却:媒介契約
STEP5 売却:売買契約 購入:引渡し
STEP6 購入:売買契約 売却:売却活動
STEP7 売却:引渡し 売却:売買契約
STEP8 購入:引渡し 売却:引渡し

多少順番が前後することはありますが、簡単にいうと先売りは「売り物件の売買契約を先に締結」して、買い先行は「購入する物件の売買契約を先に締結」するということです。

買い先行と売り先行でメリット・デメリットが異なる

買い先行と売り先行のメリット・デメリットは、以下のように仮住まいとダブルローンの2種類に分けられます。

  先売り 後売り
仮住まいリスク 可能性あり なし
ダブルローンリスク なし 可能性あり

結論からいうと、ダブルローンリスクは金銭的なリスクが大きいので、ダブルローンリスクがない先売りの方が無難な売り方といえるでしょう。

仮住まいリスクとは

「仮住まい」とは、新しい家に移り住むまで、賃貸マンションなどに仮の家として住むことです。
仮住まいすることで、無駄な引越し費用や初期費用(礼金や仲介手数料)がかかってしまいます。

後売りの場合は先に新しい家を買ってしまうので、仮住まいすることはありません。
しかし、先売りの場合には売り物件と購入する物件の決済日が同日でない限り、仮住まいリスクはあります。

そして、売り物件と買い物件の決済が同日になることは少ないので、仮住まいリスクはあると思っておきましょう。

ダブルローンリスクとは

ダブルローンとは、2つのローンを同時に組む(支払う)ことす。
つまり、売り物件のローンを支払いながら新しく購入する物件のローンを支払うことになるので、金銭的な負担が非常に大きいです。

先売りの場合は売り物件を先に売却してしまうので、ダブルローンリスクはありません。
一方、後売りの場合は売り物件の売却が成立するまではダブルローンになります。

ローンが2本ある状態が長く続けば金銭的な負担は大きいので、上述したように「先売り」をすすめているというわけです。

離婚で家を売るときのスケジュール

離婚により家を売る場合のスケジュールは人によって異なります。

一般的な流れは、まず財産分与の協議を行った後は、「基本の売却スケジュール」と同じように家を売るという流れです。

以下より財産分与の協議とは何か?について詳しく解説していきます。

財産分与とは?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を、離婚時に夫婦で分配するという制度です。
財産分与の割合などは離婚理由などによって異なるので一概にはいえません。

ただ、婚姻後に不動産を購入したのであれば、その名義人やローン支払い人が誰であれ、基本的に「婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産」になります。

つまり、夫婦間で「分配すべき財産」になるというわけです。

財産分与の協議とは?

このように、婚姻後に取得した不動産は財産分与の対象になるので、以下の手順で財産分与の協議をして、夫婦間でどのように財産分与するかを決めます。

1.財産の一覧表を作る
2.一覧表を基に分配方法について協議
3.財産分与の合意
4.離婚協議書を作成す

まずは、分与すべき財産の一覧表を作成し、それを基に財産分与について夫婦間で話し合います。仮に、夫婦間の折り合いが悪くなっている場合は、弁護士などを間に挟む場合もあります。

また、財産分与について合意したら、基本的には離婚協議書を作成して書類として証拠を残します。たとば、家という財産を半々に分けるなら、売却益を夫婦で半々にするということです。

財産分与の協議後以外の「家の売却」に関しては、基本的には通常の家売却と同じスケジュールになります。

相続した家を売るスケジュール

次に、相続した家を売る際のスケジュールです。

相続した家を売るスケジュールは、相続登記をしてから「基本の売却」と同じ流れになります。

相続登記のスケジュールは以下の通りです。

1.遺言書の有無を確かめる
2.相続人を調査する
3.相続財産の調査をする
4.遺産分割協議の開始
5.遺産分割協議書の作成
6.相続登記をする

遺言書の有無~相続財産の調査

まずは、被相続人(亡くなった人)の遺言書の有無を確認し、相続人の調査、および相続財産の調査をします。

これらは一般的に司法書士に依頼することが多く、司法書士が戸籍謄本などから調査してくれます。

遺産分割協議~協議書の作成

相続財産と相続人が分かれば、次に遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成します

仮に、民法通りの割合で分割するなら遺産分割協議書の作成は不要ですが、遺言書などによって割合を変える場合は必要になります。

この書類作成も司法書士に依頼しますが、協議書を作成するためには以下が必要です。

・相続人全員の戸籍謄本が必要
・相続人全員の実印での押印が必要
・相続人全員の同意が必要

相続登記をする

遺産分割が決まったら、その不動産の相続登記をします。相続登記とは、被相続人(亡くなった人)から相続人に名義変更することです。

基本的に、不動産の売却は名義人しか行えないので、相続登記しないと売却活動ができないのです。

その不動産の相続人が決まったら、その相続人に名義変更をしてから不動産の売却をするという流れになります。

実家を売却するときのスケジュール

次に、実家を売却するときのスケジュールについて解説します。この場合は以下2パターンに分かれます。

・委任状を利用する(親の判断能力あり
・成年被後見人制度を利用する(親の判断能力なし

上記のように、今回解説するのは実家の名義が親であり、親の代わりに売却する方法です。

委任状による売却

たとえば、親に判断能力があるものの、高齢のため家の売却は子どもが主導したい…という場合には委任状による売却ができます。

その際は、以下を知っておきましょう。

・売却のスケジュール
・委任状とは?
・必要書類は?

売却のスケジュール

委任状を利用した家の売却スケジュールは以下の通りです。

行程 内容 期間
1 査定依頼 1週間ほど
2 委任状作成 数日ほど
3 媒介契約の締結 査定から1週間ほど
4 売却活動 3か月ほど
5 申込&契約 1週間ほど
6 引渡し 契約から1か月ほど
7 確定申告 翌年の2月~3月

基本的には媒介契約の締結から代理人(子供)が行うので、それまでに委任状を作成するのが基本です。

委任状とは?

委任状とは、特定の人に一定事項を委任したことを証明する書類です。つまり、この場合は「親が子供(特定の人)に自分の家の売却(一定事項)を委任する」ということです。

委任状のフォーマットは仲介会社から取得できますし、ネットでも取得可能です。

必要書類は?

委任状には以下を記載します。

・物件の詳細情報(所在地や構造、面積など)
・委任の範囲
・代理人の住所氏名および押印(実印)
・委任者(親)の住所と署名および押印(実印)
・書面の日付

この委任状と、委任者(親)と代理人の印鑑証明書(3か月以内のもの)と住民票が必要です。また、代理人は身分証明のために、運転免許証などの写真付き証明書も必要になります。

成年後見人制度を利用した売却

仮に、親が認知症などになり、判断能力がない場合は成年後見人制度を利用して家を売却します。成年後見人とは、判断能力のない人に代わって財産の処分などを行う人を指します。

家売却のスケジュール

成年後見人制度を利用する場合のスケジュールは以下の通りです。

行程 内容 期間
1 家庭裁判所への申し立て~後見人の選任 3~4か月
2 査定依頼 1週間ほど
3 不動産処分に関する許可 3~4週間
4 媒介契約の締結 査定から1週間ほど
5 売却活動 3か月ほど
6 申込&契約 1週間ほど
7 引渡し 契約から1か月ほど
8 確定申告 翌年の2月~3月

申し立てと許可が必要

前項のように、後見人になるためには家庭裁判所への申し立てが必要です。

また、査定依頼をして、その金額で売却するのは妥当か?売却理由は?売却益の用途は?などに関して裁判所からの許可が必要になる点も認識しておきましょう。

住宅ローンが払えない場合

さいごに、住宅ローンが払えない場合にはどうするか?について、以下を解説します。

・任意売却する
・競売にならないように注意する

結論からいうと、競売になってしまうと大きなリスクがあるので、早めに任意売却の手続きをした方が良いです。

任意売却する

そもそも、住宅ローンを完済しない限り家を売却できません。そのため、家の売却益で住宅ローンを完済できるのであれば、通常の家売却のスケジュールで良いです。

しかし、家の売却益でも住宅ローンを完済できない場合には、金融機関と相談して残債がある状態でも家の売却を許可してもらう必要があります。

これが「任意売却」です。

任意売却するためには、まず金融機関に任意売却したい旨の相談に行きましょう。

自分達だけでは不安な場合は、不動産コンサルティング会社などに依頼するとスムーズに金融機関と交渉してくれます。

金融機関の許可を得てからは、通常の家売却と同じスケジュールです。

競売にならないように注意する

住宅ローンを何か月も滞納してしまうと、強制的に競売になります。競売になると、相場価格の半値以下で成約する場合もあるので、競売だけは絶対に避けなければいけません。

住宅ローンを滞納してから競売までのスケジュールは以下の通りです。

行程 内容 滞納期間
1 金融機関から電話などで連絡がくる 滞納1か月
2 金融機関から催促状が届く 滞納2~3か月
3 媒介契約の締結 滞納3か月~半年
4 競売がスタートする
5 入札が開始される
6 落札される
7 強制退去させられる

上記の「2.金融機関から催促状が届く」までには、前項の任意売却を金融機関と相談しておきましょう。

不動産売却のスケジュールはさまざま

このように、売却理由によって不動産売却のスケジュールはさまざまです。

いずれも共通して言えるのは、先におおよそのスケジュールを把握しておくことで慌てずに済むということ。これは間違いありません。

家を売った後の未来を実現させるために、まずは不動産売却のスケジュールをしっかりと立てておきましょう。