認知症になった親の家を売るための方法

2019/05/31 投稿 2019/06/17更新

現在の日本は超高齢化社会に突入しており、これからますます加速していきます。そのため、認知症になってしまった親に代わり、実家を売却したいという方は少なくないはずです。

もともと自分が育った実家だし、しかも家族なら親の代わりに売却することぐらいできるだろう…なんて考えている方もいるかもしれませんが、それほど簡単な話ではありません。

というのも、親が所有している家を売ることができるのは本人ただ一人であり、家を売るためには相応の意思決定能力と判断能力が必要だからです。

仮に、親が認知症になってしまった場合は判断能力があるとは言えないため、このままでは家を売ることができなくなってしまいます。

もう相続するのを待つしかないのか…。
そんなこともないですよ。今回は、認知症になってしまった親の家を売るための方法を紹介します。

認知症になった親の家を売る方法

まずは、認知症になった親の家を売る方法を解説します。具体的には以下3つの方法です。

・相続されてから売る
・判断能力が戻ってから売却する
・成年後見人制度を利用して売る

相続されてから売る

相続されてから家を売るとは、親が亡くなったときに家を相続し、自分の名義に変更した後に売却するということです。

そもそも、子供であっても親の家を勝手に売れないのは、その家の名義人ではないからです。

そのため、相続をして名義人を自分にすることで家を売ることができます。しかし、親の代わりに家を売りたいときは、「親を施設に入れなくてはいけない」などの場合もあるでしょう。

つまり、相続してから売るのでは遅い場合があるということです。また、このケースは相続税も発生するので、金銭的なデメリットがある点も認識しておきましょう。

 

判断能力が戻ってから売却する

2つ目の方法は、親の判断能力が戻ってから、親自らが家を売るという方法です。

判断能力が戻っているのであれば、親名義の家を親自身が売っても問題ありません。

しかし、親の判断能力が戻るかどうかは不明ですし、判断能力が戻っているかどうかは医師の診断が必要です。

さらに、一度判断能力が戻っても、また判断能力を失ってしまう可能性もあります。

そのため、この「判断能力が戻ってから売却する」というのは、今売りたいというニーズがあるなら現実的とはいえないでしょう。

 

成年後見人制度を利用して売る

3つ目の方法は、成年後見に制度を利用して、子供が親の代わりに家を売るという方法です。結論からいうと、この方法が最もスムーズに家を売却できます

成年後見人とは、簡単にいうと「判断能力がなくなった人の代わり」をする人です。

たとえば、家の売却を含む「財産の整理」なども、成年後見人になれば本人に代わって主導することが可能です。

ただし、成年後見人になるためにはさまざまな手続きをして、家庭裁判所から認められる必要があります。

そんな成年後見人制度についての詳細を次章より解説していきます。

 

成年後見人になれるのは?

まず、成年後見人制度とはどのような制度か?という点について以下を解説します。

・成年後見人になれるのは?
・成年後見人制度の種類
・申立てにかかる費用
・申し立てに必要な書類

 

成年後見人になれるのは?

成年後見人になれる人は親族や法律や福祉の専門家、第三者福祉関係の公益法人や法人などです逆にいうと、以下のような人以外は誰でも成年後見人になる資格があります。

成年後見人になれない人

・未成年者
・過去に法定代理人(後見人等)、保佐人、補助人を解任されたことがある者
・破産者
・被後見人となる本人に対し訴訟をし、またはした者、その者の配偶者、直系血族
・行方の知れない者

実は、成年後見人=親族というわけではありません。

そして、親族だからといって必ず成年後見人になれるわけでない点は認識しておきましょう。

 

成年後見人制度の種類

成年後見人制度には以下2種類あります。

・法廷後見制度
・任意後見制度

上記は、どちらも「判断能力が落ちた人を保護する」というのが目的の制度には変わりありません。しかし、以下のような違いがあります。

後見制度のはじめ方

この2つの制度の最も大きな違いは、後見制度のはじめ方です。

というのも、法定後見制度は本人の判断能力が落ちた「後」に申立人が家庭裁判所に申し立て、任意後見制度は本人の判断能力が低下する「前」に後見契約を結ぶからです。

任意後見の場合は、実際に判断能力が低下した後に後見開始となります。

本人の意思反映

前項のような違いがあるので、法定後見制度の場合は本人の判断能力が低下していることを不安に思った親族が、家庭裁判所に申し立てるという流れでしょう

そのため、すでに本人の意思能力は欠如しているため、本人の意思は反映しにくいです。

一方、任意後見の場合は本人の意思がはっきりしている中で申し立てをするので、「財産をこうして欲しい」などの本人の意思は反映されやすいといえます。

申立てにかかる費用

成年被後見人制度の申し立てには、以下の費用がかかります。

家庭裁判所に納める費用(手数料や切手代など) 6,000円~7,000円
本人の精神状況を確認するための鑑定 10万円以下
医師の作成した診断書 1万円前後
必要書類の取得 数千円~1万円ほど
申し立て依頼費用(弁護士への依頼費用) 10万円~20万円

上記の「鑑定」は案件によっては不要です。実際に鑑定が実施された件数は全体の約9.2%なのでそう多い事例ではないといえます※成年後見関係事件の概況
-平成28年1月~12月-より

鑑定が必要な場合は20数万円~30数万円、鑑定が不要な場合は10数万円~20数万円ほどの費用がかかると思っておきましょう。

 

申し立てに必要な書類

成年後見人制度の申し立てに必要な書類は以下の通りです。

・申立書
・本人の戸籍謄本
・本人の住民票または戸籍附票
・本人の診断書(家庭家庭裁判所が定める様式のもの)
・本人の成年後見等に関する登記がされていないことの証明書(法務局・地方法務局の本局で発行するもの)
・本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や通帳の写しなど)
・成年後見人候補者の住民票または戸籍附票

詳細は、実際に手続きする家庭家庭裁判所に確認しましょう。

 

成年後見人制度を利用して家を売る方法

前項で法定後見制度の概要が分かったと思いますので、次に成年後見人制度を利用して実際に家を売る方法について以下を解説していきます。

・家を売る流れは通常と異なる
・売却には家庭裁判所の許可が必要

 

家を売る流れは通常と異なる

成年後見人制度を利用した家の売却は以下の流れになります。

・不動産の査定を行う
・不動産会社の媒介契約を結ぶ
・家庭家庭裁判所へ売却許可の決定の申し立てをする
・申込み&売買契約
・引渡し

上記のように「家庭家庭裁判所へ売却許可の決定の申し立てをする」という作業が必要であり、この点が通常の売却と異なるところです。

次項より、この点に関しての詳細を解説していきます。

 

売却には家庭裁判所の許可が必要

成年後見人制度を利用して家を売却する場合は、以下の理由で家庭裁判所の許可が必要です。

・家の処分をする必要性を検証するため
・家の処分の相当性を検証するため
・家の売却代金の使途と管理方法を検証するため

仮に上記が認められない場合は契約できませんし、すでに売買契約を結んでいるなら売買契約は原則無効になります。

成年後見人制度を利用して家を売却する場合には、その家の売却が成年被後見人(この場合は親)にとってプラスでないといけません

家の処分をする必要性を検証するため

家の売却の必要性とは、そもそもその家を売る必要があるのか?という点を、成年被後見人の立場から検証することです

要は、成年後見人(この場合は子ども)の都合で家を売却していないことを確認するというわけです。

たとえば、「子供の利益のため…」「相続税対策のため…」などの目的であれば、家庭裁判所から家の売却は却下されるでしょう。

家の処分の相当性を検証するため

家の処分の相当性とは、主に売却価格のことです。仮に、相場より著しく安価で売却することは、成年被後見人の不利益となります。

そのため、きちんと市場価格通りに売却しているか?を家庭裁判所が確認するというわけです。

家の売却代金の使途と管理方法を検証するため

上述したように、成年後見人制度を利用した家の売却は、成年被後見人にプラスになるときしか売却できません。

そもそも、売却する家は成年被後見人の所有物なので、その利益は成年被後見人が享受する必要があります。

そのため、たとえば「家の売却資金を成年被後見人が入居する施設費用、およびその後の生活費に利用する」など、その売却代金の使途や管理方法を家庭裁判所が確認する必要があるのです。

後見人制度による売却は時間がかかる

さいごに、後見人制度「後見人制度を利用しての売却は時間がかかる」という点について、以下を知っておきましょう。

・手続きの流れと期間について
・不動産会社選びの重要性

 

手続きの流れと期間について

成年後見人制度の申し立て手続きと期間については以下の通りです。

・成年後見の申し立て
・家庭裁判所による事情聴取
・審判
・登記手続き

期間を先にいってしまうと、後見人の選任まで3~4か月、不動産処分許可審判の申立から許可までは3~4週間程度かかるのが一般的です。

成年後見の申し立て

まずは、家庭家庭裁判所に対して上述した必要書類などを用意し、後見開始の申し立てを行います。

管轄家庭裁判所は成年被後見人の住所地の家庭家庭裁判所であり、申し立てができる人は以下の通りです。

・本人(任意後見の場合)
・配偶者
・四親等以内の親族
・検察官など

家庭裁判所による事情聴取

次に、家庭裁判所が事情聴取を行います。事情聴取とは、本人や申立人、成年後見人の候補としている人を家庭裁判所に呼び、調査官から後見人制度を利用する背景などを聴取することです。

審判

事情聴取が終われば、家庭裁判所が成年後見の審判をします。審判とは、家庭裁判所が候補者から成年後見人を選ぶことであり、稀なケースですが候補所以外で弁護士などを選任することもあります。

登記手続き

審判が終われば、家庭裁判所から審判書謄本を受け取ります。成年後見の申し立てが認定されれば、その旨の登記手続きをして法的に成年後見人として認める作業に入るのです。

 

不動産会社選びの重要性

このように、後見人制度を利用した家の売却だと、通常の家の売却よりも時間がかかります。

そのため、事前に不動産会社を選定しておき、スムーズに売却活動を進めることが重要です。

その際には、以下の理由で一括査定サイトを利用して不動産会社を選定しましょう。

一括査定サイトのメリット

・手間がなく早い
・横並びで比較できる

不動産会社にとっても「成年後見人制度を利用した家の売却」は慎重な案件だけに、早めに動いておくに越したことはありません。

手間がなく早い

一括査定サイトをおすすめする最も大きな理由は、数分の入力作業で複数社に査定依頼できるからです。

一括査定サイトを利用すれば、ネット上で物件情報などを入力するだけで5~6社程度へ当時に査定依頼できます。

しかし、一括査定サイトを利用しないと、電話やメール、もしくは直接店舗へ訪問して査定依頼することになるので手間がかかるのです。

横並びで比較できる

不動産会社によって査定金額は異なります。そのため、査定金額の「根拠」をきちんと見極めるために、一社だけでなく複数社に査定依頼しなければいけません。

一括査定サイトであれば前項のように査定依頼自体に手間がかかりませんし、大体の不動産会社は査定依頼から1~2営業日ほどで査定結果の連絡をくれます。

つまり、複数社を同時に横並びで比較しやすいということです。横並びで比較することで、査定金額の根拠が明確な優良不動産会社を選定することができます。

 

家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

 

まとめ:認知症になった親の家を売るならしっかり準備を整えておこう

このように、認知症になった親の家を売るためには、まずは成年後見人になる必要があります。そして、親の代理として家庭裁判所に不動産処分許可をもらうという流れです。

この手続きは、もちろん親のためでなければ許可が下りませんので、しっかりと事情を申立書に記入して親のために家を売るんだと言うことを伝えましょう。

つまり、自分の利益のために親の家を売ることはできないので、その点をよく考えるようにしてください。

ただ、老朽化した家をそのまま放置しておくとどんなトラブルになるか分かりません。そのようなトラブルが高齢の親に降りかかってくるのを防ぐためにも、検討すべき事案ではないでしょうか。