子どもに家を売るには?その方法と注意点を徹底解説

2019/04/26 投稿

親から子供へ家を譲るとなると家の名義変更が必要です。名義変更の方法としては、親から子供へ家を贈与するのか売却するのかの2パターンあり、結論からいうと親から子供へ売却する方が節税になりお得です

ただ、子供に家を売るとなると気が引けてしまうという親の方も多いと思います。また、親から買うなら安く売って欲しいと考える子ども側の意見もあるでしょう。

しかし、適正な価格で売却をしなければ、親から子供へお得に家を譲り渡すことはできないのです。

「自分ひとりでは家が手広なので子どもに譲りたいけど、税金のことが心配」「親が家を譲ってくれるみたいだけど、お互いにコストがかからない方法はないのかな?」このように考えている人のために、今回は親子間で家を売買する適切な方法を紹介します。

親から家をもらうのってタダじゃないんだな…。
家は大きな資産ですから、税金がしっかりとられますよ。
なるほどなあ。
子供に家を託す時、親から家を託されるときすればいいのか解説します。

贈与と売却どちらがお得なの

まずは、贈与と売却のどちらがお得か?という点ですが、冒頭のように売却の方がお得になるケースが多いでしょう。ここでは、その大きな理由である税金について詳しく解説していきます。

親から子供へ家を贈与する方法とは

はじめに、親から子供へ家を贈与する場合について解説します。親から子供へ家を贈与するときに知っておくべきことは以下の点です。

・贈与の流れ
・贈与税について

贈与の流れ

家を子供に贈与する際の流れは以下の通りです。

・物件調査
・税金の確認
・書類の用意
・贈与契約書等の書類作成
・贈与契約
・法務局へ申請(名義変更)

実際は司法書士などを間にいれて手続きしますが、簡単にいうと贈与時の不動産評価額を計算し、その評価額に応じて贈与税を算出します。

そして、贈与契約を結んだあとに、親から子供へ名義変更手続き(所有権移転登記)するという流れです。

贈与税について

次に、贈与したときの税金について解説します。

直系尊属(親や祖父母)から20歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の子どもに財産を贈与した場合には、その贈与額から110万円の基礎控除を差し引いた後に、以下の税率・控除額が適用されます。

基礎控除後の
課税価格
200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

不動産の場合には、建物部分は固定資産税評価額、土地は路線価の評価額です。

仮に、評価額3,000万円のマンションを贈与した場合には、贈与税は以下の通りです。

贈与税=(3,000万円-110万円)×40%-190万円=966万円

このように、不動産を贈与した場合には高税額になるので、子供に家を贈与する選択肢はおすすめしないのです。

親から子供へ家を売る方法とは

つづいて、贈与ではなく親からこどもへ家を売る方法について以下を解説します。

・譲渡所得とは?
・譲渡所得税率について
・3,000万円の特別控除について

譲渡所得とは?

そもそも譲渡所得とは、不動産を売却(譲渡)して得た利益のことであり、以下の計算式で算出されます。

譲渡所得
(売却価格-売却費用)―(購入時の不動産価格+購入費用-減価償却費用)

このように、単純に売却価格から購入時の価格を差し引くのではなく、売買時の諸費用や減価償却費用を加味して計算しなければいけません。

譲渡所得税率について

譲渡所得税率は以下のように長期保有と短期保有によって異なり、その不動産を売却した年の1月1日時点で保有期間が5年超であれば長期保有、5年以下なら短期保有になります。

 

譲渡所得の税率
(所得税+住民税)
課税譲渡所得
1000万円の場合
短期譲渡所得 39%(30%+9%) 納税額:390万円
長期譲渡所得 20%(15%+5%) 納税額:200万円

仮に、譲渡所得が600万円の場合には長期保有の場合で合計121.89万円、短期保有の場合で合計237.78万円の税額になります。

もちろん、前項の計算式に当てはめて譲渡所得がゼロであれば税金はかかりません。

3,000万円の特別控除について

譲渡所得税に関しては、3,000万円の特別控除という税制優遇があります。

この特例は、譲渡所得が3,000万円控除されるので、譲渡所得が3,000万円を超えない限り譲渡所得税はゼロというわけです。

しかし、贈与税や相続税逃れを防ぐため、子供などの近親者への売却の場合にはこの特例が利用できない点は覚えておくべきです。

自宅を第三者に売却する場合だと、この特例を利用できるケースは多いので勘違いしないように気を付けましょう。

親子間売買の価格設定

次に、親子間売買の価格設定について解説します。親が子供に「家を譲りたい」という目的であれば、家の価格を1円にして売買契約を結ぶことも可能です。

そうすれば、譲渡所得税はかかりませんし、子供が住宅ローンを組む必要もありません。しかし、このように著しく相場より低額で売買すると贈与扱いになる場合もあるので注意が必要です。

売買価格の決定

売買価格の設定は「相場価格」を算出する必要がありますが、その方法は以下の通りです。

・不動産会社に査定依頼する
・自分で相場を調べる
・不動産鑑定士に依頼する

不動産会社に査定依頼する

その相場価格は不動産会社の査定によって決まります。

そのため、周辺事例比較法という「周辺で成約した売却事例」を元に、土地であれば路線価などを加味して算出するという流れです。

つまり、通常の不動産売却時と同じように、不動産会社に査定依頼することで相場価格を算出し、その価格を基に売却価格を決めるというわけです。

ただし、その場合は不動産会社が媒介契約欲しさに、時価よりも高い金額を伝えてくる可能性があります。

そうなると譲渡所得が高額になってしまう可能性があるので、複数の不動産会社に査定を依頼して平均をとるようにしましょう。

家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

自分で相場を調べる

また、相場を自分で調べるという方法もあります。その際は以下のサイトで成約事例を調べられます。

・REINS Market Information
・土地総合情報システム

不動産会社への査定依頼は無料なので、不動産会社に依頼しつつ自分でも相場を調べるようにしておきましょう。

その上で相場を割り出し、売却価格を設定するという流れです。

>家がいくらで売れるのか自分で調べる方法

不動産鑑定士に依頼する

次に不動産鑑定士に依頼するという方法です。有資格者である分、不動産会社に査定依頼するよりも信頼性は高いといえますが、鑑定には費用がかかります。

そのため、無理に依頼する必要はなく、たとえば周辺で成約事例が少なく不動産会社でも自分でも相場が分かりにくいときに利用すると良いでしょう。

低額で贈与した譲渡の注意点

仮に、親から子供に家を売却したものの、譲渡所得を抑えるためにその売却価格を著しく低額にしたとします。

その場合、通常の取引価格(相場価格)との差額は「贈与」となり、その部分には贈与税がかかります。

たとえば、本来は3,000万円の価値(相場価格)があるマンションを1,000万円で売ると、差額は2,000万円です。その2,000万円に贈与税がかかるので、結局は高額な税金の支払いになります。

このように、売却したとしても相場価格を著しく下回って売却した場合には贈与税が適用になることがあるので、通常の相場価格で売却する必要があるのです。

親子間売買の流れ

次に、親子間で家を売買するための流れ解説していきます。

親子間売買の流れは以下の通り。「売買価格の決定」については上述した通りなので、それ以降の流れを詳しく解説します。

・売買価格の決定
・媒介契約の締結
・購入者の資金確認
・売買契約&決済
・確定申告

媒介契約の締結

不動産の売却は、不動産を第三者に反復して売却しない限り宅地建物取引業の免許は不要です。

つまり、自宅の売却は不動産会社を介さずに、親子間で売買契約書を締結すれば問題ないということです。

売買契約書のフォーマットは、宅建協会のホームページなどに掲載しているので、それを利用すれば問題ないでしょう。

ただし、親子間とはいえ不動産という高額な商品の売買になるので、自ら売買契約書を作成するのは不安な人もいると思います。

その場合、不動産会社や司法書士に書面作成だけ依頼することもできます。ただ、不動産会社によっては仲介業務がない限り請け負わないこともあるので確認は必要です。

購入者の資金確認

当然ですが、相場価格を決めてその価格で売買契約を交わすということは、実際に子供は親へその金額を支払う必要があります。

親子だから…という理由で売買契約だけ締結し、実際にお金の支払いがないとそれは贈与に該当します。

そのため、購入者である子供は住宅ローンを組むなどして資金調達する必要があります。

売買契約&決済

資金調達が終われば、売買契約を交わし決済に移ります。

決済とは売買契約書に記載した金額を買主が売主に支払うことであり、決済した日に鍵の引渡しと登記手続きに入ります。

登記することで、その不動産の所有権が親から子供に移り、正式に子供の所有物になるという流れです。

実は、この登記手続きも自分でできます。

とはいえ、資料の準備や手続きなど専門性が高い上に煩雑な手続きになるので、司法書士に依頼するケースが多いでしょう。

司法書士に支払う費用は数万円~10万円ほどなので、その金額を節約したい方は自力で登記手続きすることも可能です。

確定申告

決済が終わり親から子供に所有権が移れば、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をします。

なぜなら、譲渡所得を計算して譲渡所得がプラスのときは税金がかかるからです。

その場合は、譲渡所得額および納税する税額を申告し納税するという流れになります。

譲渡所得額の計算は、国税庁ホームページの「確定申告作成コーナー」を利用すれば、減価償却費用なども自動計算されるので楽です。

仮に譲渡所得がマイナスの場合は税金がかからないので、確定申告は不要になります。

親の不動産を子どもが売却できるのか

次に、親の不動産を子供が売却できるか?という点について解説します。

結論からいうと可能であり、以下2つの方法があります。

・委任状の作成
・成年後見人になる

まずは委任状を作成し、親が子供に家の売却の全権を委任すれば子供が家を売却できます。ただし、親(所有者)の本人確認などは必要です。

また、親が認知症などを患っており判断能力が著しく低下している場合は、子供が親の成年後見人になることで、子供が主導して家を売却できます。

しかし、成年後見人になるための手続きも必要ですし、家を売るときには裁判所の許可も必要です。

詳しくはコチラの記事【親の家を売るには?親の代わりに実家を売却する方法】で解説しています。

家を相続した場合

さいごに、家を相続して譲り受けた場合に必要な手続きと税金について以下を解説します。

・相続手続きとは?
・相続税について
・相続税精算課税制度とは?

結論からいうと、相続税のことを考えると生前に子供へ売却する方が税金はかからない可能性が高いです。

相続手続きとは?

相続手続きの流れは以下の通りです。

・遺言書の有無の確認
・相続人の調査
・相続財産の調査
・遺産分割協議
・遺産分割協議書の作成
・相続登記

簡単にいうと、相続人を確定し相続する人を決めて、相続登記することで親から子供へ名義変更します。

相続税について

相続した場合には以下の相続税がかかります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税は、不動産の評価額から基礎控除として、「3,000万円+600万円×相続人数」を差し引いた後に、上記の税率を掛けて控除額を差し引きます。

そして、不動産の評価額は建物部分を固定資産税評価額で算出し、土地は路線価を元に算出します。上記の費用と売却時にかかる費用を考え、どちらがお得かを判断するという流れです。

ただし、相続を選択すると、その建物を売却したり貸したりするときも名義人である親が手続きしなければいけません。

そのため、子供が自由に利用できるよう所有権を持たせたいのでれば、売却という選択肢を選ぶ必要があります。

相続税精算課税制度とは?

また、相続時精算課税制度を利用するという方法もあります。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母が、20歳以上の子や孫に財産を生前贈与する際するときに利用できます。

本来であれば上述した贈与税を利用しますが、相続時精算課税制度を利用すれば贈与税はかからず、相続時まで繰り越すことができるのです

相続の清算の際には合計2,500万円までは贈与税がかからず、超えた部分に一律20%かかるという仕組みです。

贈与税よりは税額が安くなる可能性は高いものの、結局は相続時に繰り越されるので相続時の負担が増える可能性が高いです。

その点を考えると、家を売却してしまった方が相続時に余計な心配をする必要がないといえるでしょう。

まとめ:子供に家を売る方が贈与よりもお得

子どもに家を譲るとき、親から家を譲られるときは、贈与ではなく売買で譲り受ける方が節税ができてお得です。
ただし、親子間で売買するとは言ってもは、適正な相場価格で売却価格を設定しなければ意味がありません。
「みなし贈与」として贈与税を納めなければならないからです。
適正価格については、複数の不動産会社に査定を依頼して平均をとってみるのがかんたんでおすすめの方法です。
複数社に査定価格を聞くだけでなく、親子間売買をサポートしてくれる業者を見つけることも必要になるでしょう。
まずは不動産会社に、家の価格について相談してみてください。