不動産業界に潜む囲い込みとは?家を売る人が知っておきたい驚愕の真実
2015年、テレビ東京の人気番組「ワールドビジネスサテライト」や「週刊ダイヤモンド」にて取り上げられた、“囲い込み”という不動産仲介業者の営業手法をご存知でしょうか?
囲い込みとは、不動産の売却依頼を受けた不動産仲介業者が、他社から買付の問い合わせがあったにもかかわらず、自社で買い手を見つけるまで物件の情報を隠し続ける悪徳な手法です。
売主からすれば、囲い込みが行われることで売却の機会を気付かないうちに逃していることになります。
囲い込みはもちろん違法。しかし、法の目をかいくぐり物件を囲い込むことで多くの利益を出している不動産会社がいるのが現実です。
家を高く売りたいのなら、囲い込みの実態を知り、対策を知ってから売却にのぞまなければなりません。
不動産業界に潜む囲い込みとは
“囲い込み”についてもう少し詳しく見ておきましょう。
なぜ、不動産仲介業者が囲い込みをするのかというと、囲い込みをして自社で買い手を見つけた方が、自社に多くの利益を出せるからです。
囲い込みの原因は、不動産仲介業社の儲けの仕組みにもその一端があります。
不動産仲介業社の儲けの仕組み
不動産仲介業を営む不動産会社は、家を売って欲しいと依頼してきた売主と契約を結び、売買を成立させることで得られる仲介手数料を収入としています。
その逆に、家を購入したいと依頼してきた買主と契約し、売買を成立させた場合も同様です。
仲介手数料の金額は、宅地建物取引法によって上限が定められており、
となっています。
例えば、3000万円で売却した場合だと、
が売主と契約した不動産会社の報酬になります。
囲い込みの原因とは
売却を依頼された不動産会社がより多くの儲けを出すためには、より高い金額で家を売却するしかない。
そうであれば、囲い込みなど行われずに済んだのですが、実際にはそうではありません。
不動産仲介業者の儲けの仕組みが、自社で買主を見つける方がたくさん儲かる仕組みになっているからです。
自社で買い手を見つけて、売り手と買い手の両方の仲介役になることを両手仲介と言います(両手取引・双方代理とも言います)。
例えば、売主としか契約をしていない場合(片手仲介の場合)、3000万円で売買が成立したときに得られる報酬は103万6800円ですが、両手仲介の場合、2000万円で売買が成立した場合でも142万5600円の報酬を得ることができます。
このように両手仲介なら、高く売る努力をしなくても多くの利益を手にすることができます。
さらに言うと、囲い込みをしておけば他の不動産会社が買付ける心配もなく、在庫を抱えているわけではないので時間をかけてでも大丈夫というわけです。
実は、海外では両手仲介が禁止され、囲い込みが行われないような仕組みになっている国もあります(アメリカ、シンガポールなど)。
囲い込みが行われる根本を断つためには、制度自体を改革していく必要がありそうです。
囲い込みをされるとどうなるのか
囲い込みをされてしまうと、売主には2つの被害があります。
・売却期間が長くなる
どちらも売主にとっては死活問題。詳しく見ていきましょう。
囲い込みの被害➀売却価格が安くなる
不動産会社に囲い込みをされるとなぜ売却価格が安くなるのか。
それは、価格を下げれば自社で買い手を見つけやすいからです。
相場価格通りに売り出されたマンションが相場の2割引で購入できるとしたら、大々的な宣伝を何もしなくても値段だけで食いついてくれる買主が見つかりそうですよね。
不動産会社からすれば、広告費も仲介手数料で負担することになるので、広告費を抑えられさらに利益が増加します。
囲い込みの被害②売却期間が長くなる
なかなか買い手が見つからない場合でも、在庫コストがかからないため不動産会社に損はありません。
むしろ時間をかけることで、自然な流れで売主に値下げを提案することができるようになります。
実際には早い段階で他社からか問い合わせがあったとしても、自社で買い手を見つけるまでは「ただいま商談中です」と言って囲い込みを続けます。
囲い込みを回避する方法とは
囲い込みを回避する方法は2つあります。
ひとつは、不動産会社との契約方法を一般媒介契約にすること、もう一つは複数の不動産会社を比較して囲い込みをしない不動産会社を見極めることです。
囲い込み回避方法①契約方法を一般媒介契約にする
不動産会社との契約方法は3つの種類があります。
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
契約できる 不動産会社数 |
複数 | 1社 | 1社 |
売主への 報告義務 |
なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
レインズへの 登録義務 |
なし | 契約後7日以内 | 契約後5日以内 |
契約期間 | 規定なし | 最大3ヶ月 | 最大3ヶ月 |
個人間売買 | できる | できる | 仲介が必要 |
3つの契約方法の内、一般媒介契約のみ複数の不動産会社と契約することが許されています。
複数の不動産会社と契約できるので、囲い込みが行われるリスクは少なくなります。
何故かというと、仲介手数料が得られるのは、売買契約を成立させた1社のみだからです。
囲い込みに時間をかけている間に他社が売買契約を成立させれば、儲けを出すどころか広告費分マイナスで終わってしまいます。
そのため、一般媒介契約であれば、囲い込みは行われずに済むと考えていいでしょう。
一般媒介契約の落とし穴
ただし、一般媒介契約で高く売れる家は、希少性が高く、誰もが欲しがるような超人気の立地にあるような家だけです。
一般媒介契約は複数の不動産会社が競い合ってくれてこそ高額で売却ができる可能性が高くなります。
ごく普通の家では買い手を見つけるまでに時間がかかり、他の不動産会社が売買契約を成立させるリスクを考えると、熱心な売却活動に期待することができません。
売却しようとしている家が、希少性の高い超人気物件かどうかを見極めてから契約方法を選ぶ必要があります。
囲い込み回避方法②不動産会社を見極める
囲い込みをしない不動産会社をどのように見極めればいいのでしょう。
不動産会社に「囲い込みはしないでくださいね」と言っても「もちろんしません」と返答されるだけです。
まずは多くの不動産会社に査定を依頼して、査定から不動産会社を見極めていきましょう。
査定価格の根拠から不動産会社を見極める
不動産仲介業者のルールを示した宅地建物取引業法の第34条の2第2項には、「宅地建物取引業者は、前項第2号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。」と定められています。
つまり、売却の査定を依頼された不動産仲介業者は、依頼された物件の査定価格について、その査定価格に至った根拠を示さなければならないのです。
ただ、根拠を示さなければならないとは定められていますが、査定価格の根拠を詳しく事細かに説明せよとは定められておらず、例えば査定資料に書き添えておくだけでも問題はありません。
このような対応ではなく、明確な根拠を具体的な数値で説明してくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。
不動産会社を見極めるためには必ず訪問査定を受ける
不動産会社の査定には、机上査定(簡易査定)と訪問査定(実査定)があります。
机上査定は、依頼者からヒアリングした物件の基本情報(立地、築年数、間取りなど)を、不動産会社それぞれが持つマニュアルやスコアリングシステムに入力して算出する簡易的な査定です。
そのため営業担当者ではなく事務員の方でも、査定結果を算出することができます。
机上査定の結果は、正確な家の売買価格というより相場のデータと比較してシステムによってはじき出された参考価格にすぎません。
一方、訪問査定では、実際に不動産会社の営業担当者が現場調査を行い、机上査定では確認できなかった、物件独自の情報(劣化具合、修繕履歴、周辺環境など)を加味して査定価格を算出します。
また、担当者のこれまでの経験や会社で抱えている顧客の情報を元にして査定価格が変動するため、訪問査定の価格は各不動産会社でバラバラになります。
より正確な査定価格を知りたい時は必ず訪問査定を受けるようにしてください。
久美:訪問査定は1時間~2時間程度の時間で完了します。その間に売主は、査定をしてくれる担当者がどんな人物なのか見極めなければなりません。
査定価格はあくまで査定価格
査定価格が、自分が想像していた価格よりも高額だった場合、思わずこの不動産会社に任せようと思ってしまう人も多いでしょう。
しかし、高額すぎる査定価格は、囲い込みをして両手仲介を狙うためのエサである可能性があります。
エサに引っかからないために売主の方に覚えておいて欲しいのが、査定価格はあくまで査定価格だということです。
家がいくらで売れるかは「高く売りたい」と思っている売主と「安く買いたい」と思っている買主の希望価格が一致したときにしかわかりません。
不動産会社の査定価格は、過去の取引事例の相場という目安価格と、これまでの実績や営業担当者の勘とでも言うべき要素で算出される価格です。
査定価格に対して「必ずこの価格で売れます」と言い切る営業担当者は怪しんだ方がいいでしょう。
複数の不動産会社に査定を依頼できる不動産一括査定サイトを利用する
複数の不動産会社の査定価格を比較したい時は、一度の入力で複数の不動産会社に一括で査定依頼ができる不動産一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
一軒一軒に電話をかけたり、あるいは店舗まで足を運んだりするには多くの労力が必要になります。
不動産一括査定サイトなら、パソコン・スマホから24時間どこからでも査定依頼ができるので、複数の不動産会社への査定依頼が驚くほど簡単にできてしまいます。
例えば、累計1000万人以上が利用してきた不動産一括査定サイト『イエウール』なら、ラインでやり取りをするような形で情報を入力でき、わずか3分ほどで複数の不動産会社への査定依頼が完了します。
最大6社まで査定を依頼でき、もちろん無料で利用できます。
まずは出来るだけ多くの不動産会社に机上査定を依頼して、続いて2、3社に訪問査定を依頼してみるのがいいでしょう。
写真のように、机上査定の結果だけでも不動産会社の対応の違いが見てとれます。
大きなお金が動く不動産売買になりますので、時間をかけて慎重に、売却のパートナーとなる不動産会社を見極めていきましょう。
大手不動産会社は両手仲介が基本!名前に安心してはいけない
この表は、不動産地流通推進センターが発表している、平成29年度の流通大手各社の取扱高等の推移になります。
上位5社の平均仲介手数料率を計算すると、
・住友不動産販売:約5.1%
・東急リバプル:約4.7%
・野村不動産グループ:約4.1%
・三菱UFJ不動産販売:約4.1%
になります。
仲介手数料は売買価格×3%+6万円+消費税が上限ですから、仲介手数料率は3%~4%に落ち着くはずですが、上位3社に関しては5%前後の数字になっています。
このことからも大手不動産会社はほとんどの取引を両手仲介で行っていることが分かります。
では、大手不動産会社が全て囲い込みを行っているのかというとそういうことではありません。
不動産売買は一般消費者にとっては不透明なこと(囲い込みを含めて)が多く、家を売るにしろ買うにしろ、情報を持たない人のほとんどが安心を求めて大手不動産会社と契約を結びます。
ただ、2015年に囲い込みの実態が報道された際、囲い込みの実態が明らかになったのは、ランキング1位の大手不動産会社でした。
大手だから安心という訳では決してありません。
大手不動産会社だから、地場中小不動産会社だからという理由で契約する不動産会社を決めず、担当者が信頼できるかどうかで、契約する不動産会社を判断するようにしてください。
契約した不動産会社が囲い込みをしているか確かめるには
既に不動産会社と媒介契約を結んでいる場合でも、囲い込みをされているかを確かめる方法はあります。
知人に購入希望者を装ってもらい、別の不動産会社から問い合わせをする方法です。
売主への報告なしに、他社からの問い合わせに対して「商談中」と回答していた場合、囲い込みを行っている可能性が高いです。
その後、今度は直接契約した不動産会社に物件の問い合わせをしてもらいましょう。
その際、他社からの問い合わせには「商談中」と回答したにもかかわらず、「ご案内出来ますよ」という回答が返ってくれば、完全にクロ。囲い込みを行っているということになります。
自分で不動産会社のフリをするのはNG
売主自身が不動産会社を装って問い合わせてみるという方法をおすすめする記述をよく見かけますが、それは避けておいた方がいいでしょう。
囲い込みが悪意のあるものか、善意からなのかが判断できないからです。
不動産仲介業者の責務は、依頼された不動産の売却を売主の希望通りに“安全”に成立させることです。
そのため、得体のしれない不動産会社からの問い合わせや、不動産業界の中で悪名が立つ不動産会社からの問い合わせは、安全な取引ができないと判断して、問い合わせの時点でシャットアウトするケースがあります。
このような行為も“囲い込み”にあたりますが、売主の利益を守るための判断とも言えます。
よって、あくまで素人である売主が不動産会社を装って問い合わせをしても、怪しい業者からの問い合わせだと判断されれば、善意の囲い込みによって「商談中」と回答されることがあるかも知れません。
現在契約している不動産会社の囲い込みを探るのなら、知人に依頼して別の不動産会社から問い合わせてもらう方法をおすすめします。
レインズの情報を確認する
2015年の囲い込みの報道を受けてか、今までは不動産会社しか見ることができなかったREINS(レインズ)を、2016年からは売主も見ることができるようになりました。
レインズとは、不動産会社に依頼された売却物件のデータベースで、各不動産会社は自社が抱えていない物件でも、レインズを通じて買い手に紹介できるようなシステムになっています。
他社から物件の問い合わせが入るということは、レインズに登録された物件情報をみて問い合わせているということになります。
売主が見ることができるレインズの情報は、自らが売り出した物件の情報だけですが、取引状況について確認することができます。
取引状況は“公開中・売主の都合により一時停止中・商談中”といった表示によってわかるようになっています。
例えば売主には何の報告もなく“売主の都合により一時停止中または商談中”になっていた場合、その不動産会社は自社の利益のために囲い込みを行っている可能性が極めて高くなります。
専任媒介契約、専属専任媒介契約にはレインズへの登録義務と売主への報告義務があります。
いずれかの契約方法を選択し売主自身もレインズを注視することで、より囲い込みをされる可能性が低くなります。
囲い込みをされていた場合は媒介契約を解除できる
もし契約している不動産会社が囲い込みをしていることが判明すれば、媒介契約を速やかに解除して、新しい不動産会社と契約しなおしましょう。
不動産会社との媒介契約は最長3ヶ月ですが、不動産会社側に落ち度があった場合は3ヶ月以内で解約することが可能です。
ただし、囲い込みの明確な証拠がなかったり、不動産会社側の落ち度が証明できなかったりしたときは3ヶ月以内に解約すると、それまでに発生した広告宣伝費などを請求されるケースもあります。
その場合は、契約期間が満了する3ヶ月を待ち、契約を更新しないようにしましょう。
全ての両手仲介が悪ではない
ここまで、囲い込みの実態と、囲い込みの回避方法を紹介してきました。
その中で、囲い込みは両手仲介だけを狙う悪徳な不動産会社の違法な手法であると説明しましたが、囲い込みは違法であっても、両手仲介そのものは違法という訳ではありません。
本来両手仲介とは、家を高く売りたい売主と家を安く買いたい買主の希望を調整し、お互いが納得する価格を導き出して売買を成立させるという、不動産会社にとってはとても高度なスキルを要する取引です。
そのため、売主からも買主からも感謝され、どちらからも報酬を得られる仕組みになっています。
また、1人の担当者が売主と買主の間に立つほうが、連絡もスムーズになるというメリットもあります。
両手仲介は買主ひいきになりがち
しかし、中古不動産の売買では、希少性の高い超人気物件でなければ、買主有利に事が進んでいくケースがほとんどです。
売主には家を現金化しなければならない事情がある方がほとんど、住み替えのためや離婚のため、住宅ローンの支払いができなくなったために家を売るという方もいるでしょう。
対して買主は、今すぐに家を手に入れなければならないという方はいません。
高額な買い物になるため慎重になるのは当然であり、購入ではなく賃貸という選択肢もあります。
そのため、中古住宅の売買で必要に迫られるのは売主側であり、優位に事を進めることができるのは買主です。
不動産会社も、両手で利益を増やしたいとなれば買主をひいきして、上手く売買を成立させるのが定石となります。
売主の利益を無視した結果が囲い込み
両手仲介では、利益の相反する売主と買主の両方を納得させる必要がありますが、そのためにはあまりにも労力と時間がかかります。
不動産会社が、自社の利益を最大限上げるために、売主の利益を無視して、買主ひいきで両手仲介をしようとした結果、囲い込みという悪しき営業手法が生まれてしまったのです。
まとめ:囲い込みをしない不動産会社を見極めて家の売却を成功させよう
不動産仲介業者による囲い込みとは、自社の利益だけを追求して両手仲介だけを狙う悪徳な営業手法です。
このような不動産仲介業者を見極めるためには、まずは複数の不動産会社に査定を依頼してみることが大切です。
また、既に契約している不動産会社が囲い込みをしているかどうか見極めるためには、知人に頼んで他の不動産会社から物件の問い合わせをしてもらう方法があります。
囲い込みをされているなと確証がもてたら、不動産会社との媒介契約を解除し、新たな不動産会社を探すことをおすすめします。
不動産会社を探すためには、複数の不動産会社を一括で比較できる、不動産一括査定サイトがあります。
無料で利用できるサイトになっているので、これから家を売ろうと思っている方も、新しい不動産会社を探している方も、一度査定依頼をしてみてください。