3,000万円の特別控除とは

2019/05/21 投稿
3000万円の特別控除っていったいどんな制度なんだ?

 

不動産を売却するときには、3,000万円の特別控除という税制優遇を知っておくべきです。

というのも、3,000万円の特別控除を適用できる場合は、不動産売却時に税金がゼロ円になるケースが大半だからです。

この記事では、そんな3,000万円の特別控除について、概要や適用条件などを詳しく解説していきます。また、そのほかにも「不動産売却時に知っておくべきこと」を合わせて解説します。

家を売ったときの税金を納めなくても済むかもしれません。しっかり覚えておきましょう。

譲渡所得と譲渡所得税について

3,000万円の特別控除を解説する前に、まずは譲渡所得と譲渡所得税について以下を知っておきましょう。

・譲渡所得の計算式
・譲渡所得を算出するときの注意点
・譲渡所得税率

譲渡所得の計算式

譲渡所得(不動産の売却益)の計算式は以下の通りです。

譲渡所得
=(売却価格-売却時の諸費用)―(購入時の不動産価格+購入時の諸費用-減価償却費用)

減価償却費用などは分かりにくいと思いますので、譲渡所得額を算出する場合には国税庁の「確定申告作成コーナー」を利用すると良いでしょう。

このサイトで構造や築年数などの情報を入力すると、減価償却費用を含む譲渡所得金額を自動計算してくれます。

譲渡所得を算出するときの注意点

譲渡所得を算出する際の注意点は、購入時の費用が分からない場合には「売却価格×5%」で計算されてしまうという点です。

たとえば、売却価格が3,200万円の場合には、その取得金額はたったの160万円になります。そうなると、前項の計算式に当てはめた場合に、譲渡所得が高額になる可能性が高いです。

特に、親の家を相続して住んでいる…など、購入時期が昔の場合には要注意です。その場合には、購入金額の証明となる、売買契約書や入出金履歴の分かる通帳などを探しておきましょう。

譲渡所得税率

仮に、前項の計算式で譲渡所得を計算してプラスになった場合、以下3種類のいずれかの譲渡所得税率が適用されます。

・10年超保有の場合
・5年超保有の場合(長期保有)
・5年以下の保有の場合(短期保有)

※上記は、不動産を売却した年の1月1日時点の保有期間のことです。

10年超保有の場合

不動産を10年超保有して売却した場合の譲渡所得税率は以下の通りです。

課税長期譲渡所得金額(=A) 税額
6,000万円以下 A×10%
6,000万円超 (A-6,000万円)×15%+600万円

仮に、譲渡所得が800万円の場合には80万円が譲渡所得税になります。こちらは、後述する「3,000万円の特別控除」とは併用できますが、「買い替え特例」とは併用できません。

5年超保有の場合(長期保有)

長期保有の場合の税率は以下の通りです。

税金 税率
所得税 譲渡所得額×15%
復興特別所得税 上記の所得税額×2.1%
住民税 譲渡所得額×5%

仮に、譲渡所得が800万円の場合、税金の総額は1,625,200円のです。

5年以下の保有の場合(短期保有)

短期保有の場合の税率は以下の通りです。

税金 税率
所得税 譲渡所得額×30%
復興特別所得税 上記の所得税額×2.1%
住民税 譲渡所得額×9%

仮に、譲渡所得が800万円の場合、税金の総額は3,170,400円です。

家を売ったときの税金について、詳しくは下記の記事を参考にしてください。

>高く売れると税金がかかる?家を売る前に「譲渡所得税」を知ろう!

3,000万円の特別控除を詳しく知る

前項までで、譲渡所得と譲渡所得税の概要が分かったと思います。ここからは、本題である3,000万円の特別控除について、以下の点を詳しく解説していきます。

・3,000万円の特別控除の概要
・適用される条件
・適用されないケース
・空き家を相続したケース

3,000万円の特別控除の概要

3,000万円の特別控除とは、譲渡所得を3,000万円控除(マイナス)してくれる税制優遇のことです。

つまり、上述した「譲渡所得の計算式」に当てはめた譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得がゼロになり税金もかかりません。

通常の居住用不動産の売却で、譲渡所得が3,000万円を超えるケースは極めて稀です。そのため、3,000万円の特別控除を適用できれば、大半のケースで譲渡所得税が非課税になるというわけです。

適用される条件

ただし、3,000万円の特別控除は全ての物件に適用できるというわけではなく、適用条件の概要は以下の通りです。

・自宅の家屋や敷地、借地権の売却であること
・現在住んでいない場合は住まなくなった日から3年以内に売ること
・既に家屋を取り壊している場合は取り壊した日から1年以内に売却すること
・上記の場合で、住まなくなってから駐車場など別の用途に利用していないこと
・過去2年間で住宅売却に関する特例を受けていないこと
・売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

簡単にいうと、自宅の売却であり、親族ではなく第三者への売却であることが条件になります。ただ、上記の適用条件は抜粋版なので、詳細は国税庁ホームページを確認ください。

適用されないケース

3,000万円の特別控除が適用されない代表的なケースは以下のケースです。

・投資用不動産の売却
・特殊な買主への売買

投資用不動産の売却

まず、この3,000万円の特別控除の税制優遇は、あくまで自宅の売却時の話なので投資用不動産の売却時には適用されません。

売却した不動産が自宅か?投資用か?を判断する基準は、基本的に住民票があるかどうかです。

ただし、この適用を受けるために一時的に住民票を移す…短期間居住する…などの場合は、3,000万円の特別控除の適用が認められません。

仮に、無理やり適用させても税務署に指摘されるリスクがあります。

特殊な買主への売買

また、特殊な買主への売買である以下のケースも適用できません。

・親子間の売買
・生計を共にする親族
・家屋を売った後その売った家屋で同居する親族
・内縁関係にある人
・特殊な関係のある法人

このような関係間での売買を適用除外しているのは、主に相続税や贈与税対策の売却と見なされるからです。

そのため、「自宅の売却かつ第三者(他人)への売却」が、3,000万円の特別控除の適用を受けるための条件だと認識しておきましょう。

空き家を相続したケース

3,000万円の特別控除について覚えておくべき点は、空き家を相続したときにも条件を満たせば適用できるという点です。

以下より適用条件について解説していきますが、詳細は国税庁ホームページを確認ください。

適用できる空き家の概要

3,000万円の特別控除を適用できる空き家の概要は以下の通りです。

・相続した不動産を平成31年12月31日までに売却する
・相続開始の直前において相続した家屋が以下3つの要件全てに当てはまること
1.昭和56年5月31日以前に建築されている
2.区分所有建物登記がされている建物ではないこと(マンションやアパートはNG)
3.相続開始の直前まで被相続人(亡くなった方)以外に居住者がいなかったこと

このように、基本的には一戸建てに適用するための制度になり、いわゆる旧耐震物件が対象となります。

適用を受けるための条件

前項のような空き家の売却で、3,000万円の特別控除を適用させるためには、以下の条件に合致している必要があります。

・売主がその物件の相続人であること
・譲渡時に耐震基準を満たすものであること
・相続~売却までほかの用途で利用されていない
・相続から3年経過の日を属する年末までに売る
・売却代金が1億円以下である
・親子間売買など特殊な売買でないこと

このように、旧耐震物件を残したまま売却する場合は、耐震補強などをして耐震基準を満たした後に売却する必要があります。また、相続してから売却までの期間にも決まりがあるので、その点も注意しましょう。

3,000万円の特別控除の適用は確定申告が必要

前項までで、3,000万円の特別控除の概要や適用条件が理解できたと思います。

この3,000万円の特別控除を受けるためは確定申告が必要であり、確定申告については以下を知っておきましょう。

・不動産売却時の確定申告についての整理
・確定申告の作成方法
・確定申告の期間と提出方法

不動産売却時の確定申告についての整理

ここで、一度不動産売却時の確定申告の必要性について、以下で整理しておきます。

譲渡所得ゼロorマイナス 確定申告必要なし
譲渡所得プラス 確定申告して納税
3,000万円の特別控除の適用(空き家時も) 確定申告必要あり

このように、譲渡所得がゼロ、もしくはマイナスになるときは確定申告が不要であり、特にすることはありません。ただ、後述する「損失の繰り越し」を適用したい場合は、確定申告が必要になります。

確定申告の作成方法

確定申告書類の作成は、上述した国税庁の「確定申告作成コーナー」を利用する方法が一番簡単でしょう。

税務署で紙の書類を取得して提出することも可能ですが、自動計算もされませんし書類作成に手間がかかります。

確定申告の期間と提出方法

確定申告の期間は、不動産を売却した翌年の2月15日~3月15日までの期間であり、提出方法は以下から選べます。

・e-TAX(ネット上からデータを送信)
・郵送による提出
・税務署のポストへ投函
・税務署への持ち込み

提出方法による優劣はありませんので、自分が楽な方法を選びましょう。

知っておきたい不動産売却時の特例について

さいごに、今回解説した3,000万円の特別控除以外に、不動産売却時に知っておくべき以下特例について解説していきます。

・譲渡損失の損益通算と繰り越し控除
・買い替え特例

以下より解説するのはあくまで概要なので、詳細は国税庁ホームページを確認ください。

譲渡損失の損益通算と繰り越し控除

この制度は、不動産売却時に譲渡損失(売却損失)が発生した場合、その損失額をほかの所得から控除できる制度です。また、控除できない場合は翌年以降も3年間に渡り繰り越すことができます。

損益通算と繰り越し事例

たとえば、給与所得700万円の会社員が自宅を売却し、1,000万円の譲渡損失が発生したとしましょう。

このとき、次項で解説する適用条件に当てはめることができれば、給与所得の700万円は譲渡損失の1,000万円と相殺され、給与所得ゼロ…つまり所得税も住民税も非課税になります。

また、引ききれなかった300万円は、3年間繰り越すことが可能です。

適用要件

この制度を適用するための要件は3,000万円の特別控除とほぼ同じですが、以下の点は違います。

繰り越し控除ができない 売却する家の敷地が500㎡を超える場合は超える部分の譲渡損失は繰越不可
繰り越し控除を適用する年の年末時点で住宅ローンが10年未満である
合計所得金額が3,000万円超
損益通算も繰り越し控除もできない 親子間売買など特別な売買である
過去2年間で3,000万円の特別控除など住宅売却の特例を利用している

買い替え特例

買い替え特例とは、仮に不動産売買で譲渡所得税が発生しても、その税金を将来に渡って繰り延べることができる制度です。

結論からいうと、この制度は税金をゼロにするのではなく、あくまで繰り延べているだけです。また、3,000万円の特別控除と併用できないので、ほぼ利用することはない制度になります。

まとめ:3000万円特別控除を使えば譲渡所得税が非課税になる可能性大

このように、3,000万円の特別控除を利用することができれば、譲渡所得税が非課税になる可能性は高いです。

また、一般的な自宅の売却であれば適用できるケースは多いでしょう。

そのほかにも、譲渡損失控除や繰り越し、買い替え特例などもあるので、該当する場合は詳細を調べてみることをおすすめします。