媒介契約とは
家の売却を不動産会社に依頼するためには、不動産会社と「媒介契約」を結びます。
家を売るときに、「媒介契約」の仕組みや特徴を知っておくことは必須といえます。
というのも、媒介契約の種類によって家の売れ行きは大きく変わり、売却価格にも影響してくるからです。
媒介契約の種類による違い
そもそも媒介契約とは、「わたしの家の売却をあなたの会社に依頼します」という意味の契約になります。
売主と不動産会社の間で媒介契約を交わすことで、不動産会社は正式に家の売却を依頼されたという状態になります。
媒介契約には一般媒介契約・専属専任媒介契約・専任媒介契約の3種類あり、それぞれの違いは以下の通りです。
一般媒介 | 専属専任媒介 | 専任媒介 | |
---|---|---|---|
契約できる不動産会社 | 複数社に依頼可能 | 依頼は1社のみ | |
レインズ登録 | 任意 | 契約後5日以内 | 契約後7日以内 |
売却報告義務 | 義務なし | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 |
自己発見取引 | 可能 | 不可能 | 可能だが注意点あり |
ここでは、専属専任媒介契約と専任媒介契約を、まとめて「専任系媒介契約」といいます。
契約できる不動産会社
最も大きく異なるのは、一般媒介契約は複数社と媒介契約を結ぶことができ、専任系媒介契約は一社のみとしか媒介契約を結べないという点です。
つまり、一般媒介契約の場合は複数の不動産会社が自分の家を売るための活動をしますが、専任系媒介契約は一社のみが売却活動をするというわけです。
売却活動とは、具体的には以下を指します。
・内見希望者との日程調整
・内見者の案内や交渉
上記の売却活動を経て、物件の購入希望者から申込を受けて、売買契約の締結…という流れです。
レインズ登録
レインズの登録に関しては、以下の点を解説していきます。
・レインズに登録するメリット
レインズとは?
レインズ(REINS)とは「Real Estate Information Network Systemの」略で、不動産情報ネットワークシステムのことです。
REINSは不動産会社しか閲覧することができず、現在の売り出し物件や、過去の成約物件が掲載されています。
レインズに登録するメリット
上記のように、一般媒介契約にはレインズ登録義務がなく、専任系媒介契約はそれぞれ5日以内・7日以内で登録義務があります。
レインズに登録するメリットは、レインズに登録することで媒介契約を結んでいない不動産会社(他社)が、自分の家を「売り出し物件である」と認識する点です。
つまり、他社から検討顧客を紹介してもらえる可能性が高まりますので、家を売却するスピードが早くなるということです。
そのため、媒介契約から5日以内にレインズへ登録する専属専任媒介契約が最もメリットが大きいといえます。
売却報告義務
売却報告義務とは、具体的に以下のような報告を不動産会社から受けることです。
・広告への反響(問い合わせ数など)
・検討顧客の状況
このように、家の売却に関する報告義務について、一般媒介契約には義務はなく専任系媒介契約は義務があります。
報告方法に指定はなく、メールでも電話でも構いませんが売主の方で連絡方法を指定することは可能です。
自己発見取引
自己発見取引とは、自分が買主を見つけたときの取引になります。
一般媒介契約は自己発見取引可能なので、売主と買主で直接取引可能です。
一方、専属専任媒介契約は自己発見取引が不可能なので、自分で買主を見つけたとしても、媒介契約を結んでいる不動産会社が仲介したという扱いになります。
つまり、自分で買主を見つけたとしても、専属専任媒介契約の場合は仲介手数料を満額支払うということです。
専任媒介契約の場合は売主・買主で直接取引できますが、売主は不動産会社からそれまでにかかった広告費用などを請求される場合があります。
実際に不動産会社が請求するかはケースバイケースですが、広告費用を支払う可能性がある点は認識しておきましょう。
ただ、請求されたとしても、専属専任媒介契約の「満額の仲介手数料」よりは安価になります。
媒介契約はどの種類を選ぶべきか?
結論からいうと、以下の理由で専任系媒介契約の方が良いでしょう。
・営業マンの優先順位が高い
・売却報告義務を受けるメリットは大きい
効果の高い広告を積極的に展開する
まず、専任系媒介契約の方が効果のある広告を積極的に展開します。その点を理解するために以下を解説していきます。
・広告費用の負担は不動産会社
・専任媒介契約は自社しか売却活動しない
家を売却するときの広告とは?
家を売却するときの広告は具体的に以下です。
・自社ホームページ
・不動産ポータルサイト
まずは、投函チラシなどで地元の方へ広告します。中古マンションはチラシを自社で印刷して、営業マン自ら投函したり、業者に依頼したりするくらい、投函チラシは重要な集客ツールです。
不動産は地元の人が購入するケースが多いので、チラシ量は集客量と直結する「最も効果の高い広告」といえるでしょう。
また、チラシ以外にも自社ホームページや不動産ポータルサイト(SUUMOなど)というネット広告も行い、内見希望者を集客します。つまり、広告量が多いかどうかは集客が多いかどうかに直結するということです。
広告費用の負担は不動産会社
広告費用はもちろん無料ではありません。チラシの印刷や投函にかかる人件費、ネット広告の製作費用や掲載料などがかかってきます。
そんな広告費用は不動産会社が負担し、その費用は仲介手数料から賄います。しかし、仲介手数料は成果報酬なので、物件を成約しない限り不動産会社は仲介手数料をもらえません。
専任媒介契約は自社しか売却活動しない
このような事情のため、複数社と媒介契約を結べる「一般媒介契約」だと、他社が先に成約してしまうかもしれないので、積極的に広告展開を期待できないのです。
特に、印刷代や投函代が継続的にかかるチラシ広告は、一般媒介契約の場合には展開しない不動産会社が大半です。
一方、専任系媒介契約の場合は自社しか売却活動をしないので、他社が先に成約することはなく、チラシ広告を積極的に展開します。
その結果、専任系媒介契約の方が効果の高い「チラシの広告」の量が多くなるので、集客も増え成約しやすくなるのです。
また、店舗に来訪した人へ積極的に案内する物件も、自社でしか売却活動をしない専任系媒介契約を締結している物件です。
営業マンの優先順位が高い
不動産会社の営業マンは、複数の物件の売却を担当します。仮に、A物件・B物件・C物件を担当しており、A物件・B物件が一般媒介契約でC物件が専属専任媒介契約だとします。
たとえば、同じ日程に3物件とも内見予約が入ったとき、営業マンはどの物件の案内を優先させるでしょうか?売却価格に大きな違いがない限り、専属専任媒介契約のC物件を優先させるでしょう。
理由は前項と同様、一般媒介契約だと他社が先に成約する可能性があるからです。一方、専属専任媒介契約のC物件は、自分が内見者を案内しないと誰も内見できません。
このように、営業マンは専任系媒介契約の方を優先させるため、結果的に専任系媒介契約の方が早く・高く家を売りやすいです。
売却報告義務を受けるメリットは大きい
上述したように、一般媒介契約は売却報告義務がなく、専任系媒介契約は売却報告義務があります。一般媒介契約の場合には、不動産会社は積極的に売却報告しないことが多いです。
というのも不動産会社は、専任系媒介契約を結んでいる物件に注力したいからです。
さらに言えば、一般媒介契約は積極的に広告展開しないので、わざわざ売却報告することで「もっと広告して欲しい」などの要望を受けることがあり、連絡がおざなりになります。
売却報告義務を受けると以下のようなメリットがあります。
・売却戦略を変更しやすい
・不動産会社が変わっても引き継ぎしやすい
営業マンをしっかりと管理できる
まずは営業マンをしっかりと管理できる点です。売却報告義務があるということは、営業マンは何かしらの成果を出す必要があります。
少なくとも、「今週は家を売るために○○という広告を実施した」など、売却に向けて行ったことを報告しないといけません。
また、売却報告義務があることで「競合物件の調査」なども積極的に行うようになるため、精度の高い売却戦略を立てやすいです。
売却戦略を変更しやすい
精度の高い売却戦略とは、たとえば以下のような戦略です。
・現在の広告は効かないないので内容を変更する
・現在の広告は効かないので媒体を変える
売却報告を受けることで売主も物件の状況を把握できるので、価格変更などを決断しやすくなります。
不動産会社が変わっても引き継ぎしやすい
残念ながら媒介契約を結んだ不動産会社が中々売却できないこともあり、その場合は不動産会社を変更することもあります。
その際、売却報告を受けている場合には、今までの売却に関する情報を新しい不動産会社に引き継ぐことができるのでスムーズです。
たとえば、今までどのような広告したか?問い合わせ件数はどのくらいか?という情報は、不動産会社が広告戦略を考える上で非常に重要な情報です。
その点を加味すると、売却報告は引き継ぎやすいメールで受けておいた方が良いでしょう。
人気物件なら一般媒介契約でも良い
基本的には媒介契約は専任系媒介契約の方が良いです。
ただ、人気物件であれば「積極的に広告展開する」という理由で、一般媒介契約でも良いでしょう。
たとえば、「恵比寿駅」という人気のターミナル駅が最寄りの物件を売却するとします。不動産会社からすると、この物件は人気物件であり集客が見込めます。
そのため、この物件を積極的に広告掲載して、その広告で集客できた検討者にほかの物件を紹介することができるのです。
このように、人気物件であれば目玉住戸になり「広告を積極的に行わない」という点が解消されるため、複数社が売却活動してくれる一般媒介契約でも良いでしょう。
媒介契約を結ぶ際の多い質問
では、さいごに媒介契約を結ぶ上で、よくある質問である以下について解説します。
・媒介契約の期間は?
・仲介手数料の値引きはできる?
専任系媒介契約はどちらを結ぶべき?
そもそも専属専任媒介契約と専任媒介契約の違いは以下でした。
専属専任媒介 | 専任媒介 | |
---|---|---|
レインズ登録 | 契約後5日以内 | 契約後7日以内 |
売却報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 |
自己発見取引 | 不可能 | 可能だが注意点あり |
結論からいうと、専属専任媒介契約の方が良いです。
というのも、レインズへの登録も早いですし、売却報告義務の頻度も高いからです。
一方、自己発見取引の場合には専属専任媒介契約は仲介手数料を満額支払いますが、そもそも買主を自ら見つけてくることは極めて稀なケースです。
仮に、自分で買主を見つけたとしても、重要事項説明書や売買契約書の作成などは、プロである不動産会社に依頼しないとトラブルリスクがあります。
つまり、買主を自分で見つけてきたとしても、結局は不動産会社が間に入るケースが多いので専属専任媒介契約で問題ないということです。
媒介契約の期間は?
媒介契約は「自分の家の売却を依頼する」契約なので、期間が定められています。
専任系媒介契約は3か月以内で設定し、一般媒介契約は法令上の制限はありません。
ただし、行政の指導は3か月以内となっているので、一般媒介契約も3か月を期限とするケースがほとんどです。
いずれの媒介契約でも、あくまで「3か月以内」が期限なので、1か月でも2か月でも可能です。とはいえ、基本的には3か月で契約することをおすすめします。
というのも、1か月や2か月では家を売るには短い場合があり、不動産会社が売却計画を立てにくいです。
仮に、1か月の期間で媒介契約を結び、1か月で売れなければ媒介契約は解除になるかもしれません。
その際は、投下した広告費用が無駄になるので、期限が短いと積極的に広告展開しなくなります。
そのため、基本的には3か月で媒介契約を結び、売却活動に十分な期間を不動産会社に与えましょう。
仲介手数料の値引きはできる?
媒介契約には仲介手数料率を明記します。仲介手数料は、以下のように売買価格によって手数料率の上限が定められています。
売買価格 | 仲介手数料率 |
---|---|
200万円未満 | 売買金額×5% |
200万円超~400万円以下 | 売買金額×4%+2万円 |
400万円超 | 売買金額×3%+6万円 |
上記はあくまで上限ですが、基本的に不動産会社は上限いっぱいで請求します。
この仲介手数料率を値引きことはできますが、無理な値引きはおすすめしません。
なぜなら、仮に値引きに成功したとしても、営業マンからすると「報酬の下がった物件」になるため、広告費などが削られるからです。
不動産会社は自費で広告費を捻出しており、それは仲介手数料から賄われます。
つまり、仲介手数料率を値引きしてしまうと、その分広告費を削ることになるのです。
まとめ:どの媒介契約が合っているのかを事前に知っておくのが正解
媒介契約に関しては、3種類それぞれの内容の違いを理解し、基本的には専任系媒介契約を結ぶという点を覚えておきましょう。
また、媒介契約の期限や仲介手数料の値引きなどは、媒介契約を結ぶ前に知っておくことが重要です。