ホームインスペクションとは

2019/01/29 投稿 2019/03/15更新
ホームインスペクションって聞いたことあるけど、いったい何のことなんだろう?

家を購入する・売却するときに気になるのが「あと何年持つか」「耐震設計は大丈夫?」といった外見では分からない家の劣化や状態ですよね。

特に近年、日本全国でも建設や設計上の問題が住んでから見つかる欠陥住宅が社会問題にもなりました。

その疑問や不安を解消する上で注目されているのが「ホームインスペクション」です。

今回は、ホームインスペクションの概要や導入するシーン、メリット、その方法について紹介します。
よろしくお願いします!

 

ホームインスペクションとは?

家の検査をされているところ

中古住宅の売却や購入時、ホームインスペクションという文字を目にする機会も増えました。まずはホームインスペクションの概要について見てみましょう。

住宅の状態を見る調査や診断を指す

ホームインスペクションの「インスペクション」とは、英語で「検査、診断」という意味があります。

よって、ホームインスペクションとは別名「建物状況調査」「住宅診断」とも呼ばれ、住宅の現在の状態を把握するための、専門家による診断を指します。

第三者的な見地から調査、診断

ホームインスペクションは、資格を持ったホームインスペクターや建築士が第三者的な視点から住宅の状態を診断します。

なお、ホームインスペクションが「建物状況調査」「住宅診断」と呼ばれるかによって、若干定義が異なります。

【建物状況調査とは】
国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための目視または非破壊検査による調査。インスペクションと呼ばれることも多い。
【住宅診断とは】
民間資格であるホームインスペクターによる住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用の診断およびアドバイス。ホームインスペクションと呼ばれることも多い。

いずれの場合も、外見では判断しにくい現状の住宅の状態を調べ、状況を把握するための調査、診断と考えてよいでしょう。

ホームインスペクションの日本での歴史

ホームインスペクションが日本でどのように広まってきているかを紹介します。

2000年前後から登場

ホームインスペクションはアメリカやオーストラリアなどの海外諸国ではすでに一般的になっていましたが、日本でも歴史はまだ新しいものです。

元々日本はマイホームを持つなら新築物件であるのが一般的だったため、海外諸国よりも中古物件購入のニーズが少なかったためです。

ところが、日本でも中古物件の購入ニーズが増加してきたこと、さらに新築でも構造や耐震設計上に問題のある欠陥住宅が問題になり、「購入前に住宅への不安を解消する」目的で、ホームインスペクションが2000年前後より認知されるようになりました。

2018年4月より中古物件取引の記載事項に

2008年には、ホームインスペクションに関する団体として日本初となる「旧任意団体(現NPO法人)日本ホームインスペクターズ協会」が設立されました。

ホームインスペクションに関する民間資格である「ホームインスペクター」の誕生に伴い、徐々にホームインスペクションの認知度は日本でも広まっていきます。

中古物件購入と売却ニーズの増加はさらに増し、民間だけでなく国としても中古物件売買市場でホームインスペクションの重要性を示唆する動きが現れます。

2013年6月には、国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を発表、2018年4月からは、既存住宅の取引において、宅地建物取引業者との媒介契約書面に建物状況調査のあっせんの有無が記載されるようになりました。

今後ますます重要になる可能性大

今まではホームインスペクターをはじめとした、民間団体の発行した資格を持つ者が「住宅診断」を行っていました。

これに加えて、国土交通省の定める講習を修了した建築士による「建物状況調査」を国として勧めるようになり、よりホームインスペクションの認知度と重要性が近年高まっています。

ホームインスペクションを導入する目的とシーン

住宅の状態を把握するために行われるホームインスペクションは、色々な目的のために導入されています。

具体的にホームインスペクションが導入される3つのシーンとともに目的を解説します。

中古物件を売却したいとき

現在ホームインスペクションが活用される主なシーンが、中古物件を売却したいときです。

ホームインスペクションを行うことで、「調査済み」という安心感を購入希望者への付加価値として提示できます。

中古物件を売却しやすくする、また実際に売却した後の欠陥や破損などのトラブルを回避する目的でホームインスペクションが導入されるケースです。

物件を購入したいとき

購入したい物件があるとき、購入希望者が購入したい物件に対してホームインスペクションを行うケースもあります。

この場合は、中古物件だけでなく新築物件を購入する場合も含まれます。

2018年4月より、事実上中古物件売買においてはホームインスペクションの説明や記載が義務化されていますが、「不動産会社のあっせんによるホームインスペクションは信用できない」と考える購入希望者も少なくありません。

購入価格が安かったとしても、ホームインスペクションによって修理や改修が必要だった場合、修繕費用が予想以上に高くなってしまう場合もあるでしょう。

安全面でも、費用面でも安心・納得できる家を得るために、新築物件・中古物件購入時にホームインスペクションを導入します。

住宅の現状を把握するため

現在住んでいる住宅をすぐに手放す予定はなく、住み続けたい人もホームインスペクションを導入する場合があります。

住宅の現状を把握し、必要な修繕や耐震対策を行い、長く住宅に住む目的で用いられます。また、ライフスタイルの変化によるリフォームやリノベーションの機会に、一緒に住宅の修繕や対策も行っておきたい目的でもホームインスペクションが実施されることも少なくありません。

今の家に安心して住み続ける目的でも、ホームインスペクションは活用されています。

ホームインスペクションを導入するメリット

ホームインスペクションを導入するシーンや目的は主に3つありました。

とはいえ、ホームインスペクションを導入するには当然専門の診断士を手配する、費用もかかるため二の足を踏んでしまう人も少なくありません。

さらに、ホームインスペクションを受けたことで修繕や修理費用が予想以上に高くなってしまう場合もあるでしょう。

それでも、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会の調査した「ホームインスペクション利用者100人のホンネ」では、95%の人が中古物件をもう一度購入するならホームインスペクションを受けたいと答えています。

なぜなら、ホームインスペクションを受けることに大きな3つのメリットがあるからです。

ホームインスペクションのメリット

・物件購入の安心感につながる
・物件売却がしやすくなる
・安心して住む家づくりにつながる

物件購入への安心感につながる

物件の購入やリフォームを考えているときには、あらかじめホームインスペクションを受けることで、欠陥住宅の購入回避や、中古物件なら修理の必要性や費用を購入前に把握できます。

中古物件は特に目に見えにくい欠陥や破損が隠れている場合もありますので、ホームインスペクションは目視で確認できないポイントを把握する上でも最適です。

物件を購入する前に、「安全を購入する」ことができるのも、ホームインスペクションのメリットのひとつでしょう。

物件売却がしやすくなる

国土交通省では、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」にてホームインスペクションの重要性の示唆と推進を行っています。

その中で、売り主がホームインスペクションを行うことで得られる2つのメリットを挙げています。

ひとつ目が、あらかじめホームインスペクションを行うことで、入居後引っ越し後のトラブルを回避できることです。修理や修理の必要性が見つかった場合は、適切な修理や修繕を行った上で売却できますので、売却後のトラブル回避にもつながります。

ふたつ目は、売却する物件にホームインスペクション済という付加価値をつけることです。

例えば、立地、価格、間取りなど条件がほぼ同じの2つの物件があるとします。

一方はホームインスペクション済みだった場合は、購入希望者に安全面でも付加価値を付けられます。

売却したい物件をほかの物件と差別化し、売れやすくするのにもホームインスペクションは有効なのです。

安心して住む家づくりにつながる

住まいは住み続けていると当然経年劣化してきます。今後も安全・安心の家に住み続ける上でもホームインスペクションは有効です。

特に、リフォームやリノベーションの機会にホームインスペクションを行えば、例え修理や修繕が必要な場合も、リフォームやリノベーションの期間に並行して行えますので、ライフスタイルの変化による住まいの修繕やリフォームの上での効率化も図れます。

また、ホームインスペクションは第三者の視点で行います。住み続けるためのホームインスペクションなら、実際に住む人の視点に立ってのアドバイスも受けられますので、より安全かつ快適に住める住居づくりにも役立ちます。

ホームインスペクション導入の方法と費用

ホームインスペクションは、住宅の多様なニーズを満たす目的で活用されます。

メリットも大きいホームインスペクションを導入する具体的な2つの方法をご紹介します。

ホームインスペクターに依頼をする

住宅診断であるホームインスペクションを依頼するには、診断したい物件のある地域で活動している、ホームインスペクターに直接依頼する方法があります。

NPO法人日本ホームインスペクターズ協会の公式サイトから、ホームインスペクターの検索ができます。

依頼したいホームインスペクターが見つかれば、問い合わせや見積もりを行い、納得できれば申し込みをします。

 

その後必要書類をそろえて実際にホームインスペクションを行い、料金を支払います。ホームインスペクションの実施時間は2~3時間が平均で、費用は依頼するホームインスペクターによって異なりますが、平均5~6万円です。

複数から見積もりを取るのがおすすめです。

参考サイト:日本ホームインスペクター協会「ホームインスペクションを利用したい」

建物状況調査技術者を探す

国土交通省の定める講習を修了した建築士による、建物状況調査を依頼したいときは、日本建築士会連合会などの既存住宅状況調査技術者検索ページより対象物件のある地域の技術者を検索し、依頼をします。

費用は機材を使用して耐震診断も含める場合は、10万円以上になる場合もあります。

参考サイト:公益社団法人 日本建築士会連合会 / 既存住宅状況調査技術者の検索

あっせんか付帯サービスとして提供している不動産業者を選ぶ

物件の購入や売却時、ホームインスペクションを行う診断士や建築士と提携している不動産業者なら、あっせんを受けられます。

さらに、ホームインスペクションを付帯サービスとして提供している不動産業者もあるため、このような不動産業者を選ぶと自分でホームインスペクションを行う業者の検索や依頼の手間を省いたり、費用を抑えられたりします。

不動産売却を依頼する業者比較できる不動産一括査定サイトというものがあるので、査定を依頼するのと一緒に、ホームインスペクションを付帯サービスとしている業者かどうかを比較してみるのがおすすめです。

>家を売るなら必見!不動産一括査定サイトを賢く利用する方法とは?

まとめ:今後ホームインスペクションの需要は高まっていく

ホームインスペクションの概要や導入するシーン別の目的、メリット、導入する方法や費用をご紹介しました。

中古物件売買市場が活発になることに加えて、近年の災害対策の観点からも、ホームインスペクションの認知は今後広がっていくと予想されています。

納得の住宅購入や売却、そして安心して住み続けられる家づくりのために、今後ホームインスペクションの重要性や必要性はより高くなっていくでしょう。