家を売るための手続きと不動産売却の全体像
家を売るためにはいくつかの手続きがあります。
基本的にはそれぞれの手続きに関わるプロの下で行うのですが、何も知らずに手続きをしていくと、トラブルに発展する恐れもあります。
家の売却をスムーズに、安全に成功させるために、家を売るための手続きと不動産売却の全体像を把握しておきましょう。
家売るための4つの手続きと注意点
家を売るためには4つの手続きがあります。
・買い手との売買契約
・残金決済と登記手続き
・引渡の手続き
そしてこれらの手続きは、すべて売却する家の名義人本人が行わなければなりません。
【注意!】不動産売却の手続きはすべて名義人本人が行う
家を売るために必要な手続きはすべて、売却する家の登記名義人が行わなければいけません。
これは、名義人の意思以外で行われる不当な取引を防ぐために守らなければならないルールです。
不動産売買は高額かつ専門性の高い取引のため、本人の意思なく実行されると大きなトラブルに発展します。
契約手続きにおける署名・押印などは、名義人本人でなければならないのです。
しかし、下記のような場合は親族や後見人が手続きを代行することができます。
・名義人の意志判断能力がない場合
高齢の親から依頼された場合
このような場合、親族が手続きを代行するためには以下の書類が必要になります。
・名義人の印鑑証明
・名義人の身分証明書
・名義人の住民票
・委任された家族の本人確認書類
・名義人の意思が確認できる委任状
名義人の意思が確認できる書類には、依頼人と依頼を受けた人それぞれの署名・押印が必要です。
名義人の意志判断能力がない場合
名義人の意思判断能力がない場合は、成年後見人制度を利用して、後見人となった人が売却の手続きを代行することができます。
名義変更には多額の贈与税がかかる
名義人を変更すれば問題ないのではないかと言われれば確かにその通りです。
しかし、名義変更の手続きをすると、贈与税が発生し多くの税金を納めなければなりません。
売却を目的としているのであれば、やむをえない理由がない限り名義人本人が売却手続きを行うようにするのがベストです。
まずは全体像を確認
手続きの注意点が分かったところで、まずはざっくりとですが、不動産売却のアウトラインを確認しておきましょう。
②不動産会社に売却を依頼して家を売り出す
③不動産会社が見つけた買い手に室内を案内する
④買い手と売買契約を締結して手付金を受け取る
⑤残金の決済をする(住宅ローンがあれば完済する)
⑥家の登記を移転する
⑦家を引き渡す
このような流れで、不動産売却は行われます。
不動産会社に売却依頼
家を売るときは、不動産会社に売却を依頼するのが一般的です。
不動産会社に売却を依頼して、家を売るためのサポートをしてもらう契約を媒介契約と言います。
媒介契約は3種類
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
契約できる 不動産会社数 |
複数 | 1社 | 1社 |
売主への 報告義務 |
なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
レインズへの 登録義務 |
なし | 契約後7日以内 | 契約後5日以内 |
契約期間 | 規定なし | 最大3ヶ月 | 最大3ヶ月 |
個人間売買 | できる | できる | 仲介が必要 |
不動産会社と結ぶ媒介契約は、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約という3つの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
どの契約でも支払う報酬は同じ
不動産会社に支払う報酬を仲介手数料と言い、売買が成立したときにだけ発生します。
仲介手数料は売買価格によって変化し、その上限が法律で定められています。
そのため、3種類のうちどの契約を結んだとしても、不動産会社に支払う報酬は同額です。
人気の立地にある家を早く売りたいなら一般媒介契約
人気の立地にある家を売るなら、一般媒介契約で複数社と契約をする方が高額で売却できるだけではなく、早期売却も期待できます。
不動産会社は、家を売らなければ報酬を得られないので、高く売れるのは当たり前の人気物件に限り、早く売るための競争が不動産会社同士で発生します。
なお、ここでいう人気物件とは、本当に限られた希少性の高い物件です。
多くの人が欲しいと思っているのに、中々家が売りに出されないという限られたエリアでなければ、一般媒介契約は適していません。
家を高く売りたいなら専属専任媒介契約
ごく一般的な家を売るなら、専属専任媒介契約を選ぶ方がいいでしょう。
専属専任媒介契約は1社の不動産会社に売却のサポートを任せる契約方法。つまり不動産会社からすれば、確実に仲介手数料がゲットできる契約です。
となると高額で売却するために時間をかけても、他社が買い手を連れてくる心配がありません。
高額売却に集中してもらえるため、売主にとっても好都合なのです。
不動産会社選びが重要
専属専任媒介契約を結ぶためには、不動産会社選びが重要です。
契約手続きをする1社を決めるためには、複数の不動産会社を比較して、信頼できる会社を見極めなければなりません。
不動産会社選びのポイント
不動産会社を選ぶときのポイントは3つです。
ポイント2.対応がきめ細かい
ポイント3.人として信頼できる
これらをチェックするためには、売却前に訪問査定を受ける必要があります。
まずは複数の不動産会社に簡易査定を依頼して、そこから気になる業者には訪問査定をいらいし、直接会って担当者をチェックしていきましょう。
査定価格に根拠がある
不動産会社と契約するためには、まずは売りたい家を査定に出すことです。
今は複数社に査定を依頼できる不動産一括査定サイトもあるので、業者を比較するのもカンタンになりました。
各社の査定資料を読みながら、不動産素人の自分でも査定価格の根拠に納得できるかどうかチェックしてみてください。
査定価格は、あくまでも各不動産会社が「この価格で売りに出せば3ヶ月以内に売却できるだろう」と判断した金額です。
高額な査定価格だからと言って、確実にその金額で売れるわけではないので、根拠がしっかりしているかどうかが肝心なのです。
査定結果で気になることがあれば、直接不動産会社を家に呼び、訪問査定を受けながら根拠を確かめてください。
対応がきめ細かい
そして同時に、査定依頼時の返答・訪問査定時の対応をチェックしましょう。
査定を依頼した途端、連日時間を問わずに電話してきたり、一方的に「訪問させて欲しい」と言ってきたりする業者は、買い手にも同じことをしてしまうかも知れません。
対応が雑だと感じたら、その業者とは契約しないのが無難です。
人として信用できる
これらをチェックして、最終的に人として信頼できると思える担当者と媒介契約を結ぶようにしてください。
不動産会社の比較は一括査定サイトで
不動産会社を比較するのに便利なのが、不動産一括査定サイトです。
依頼主の情報と物件の情報を1度入力するだけで、複数の不動産会社に査定を依頼することができます。
何社に査定を依頼しても、利用料は無料なので、「今すぐ家を売るわけじゃないけど、売ったらいくらになるのか気になる」という方でも安心して利用することができます。
累計1000万人以上が利用してきた一括査定サイト『イエウール』なら、まるでラインでやりとりをしているかのように、カンタンに査定依頼ができますよ。
売却依頼手続きの流れ
不動産会社が決まれば、以下のような流れで売却依頼の手続きを行います。
①媒介契約の締結 | 媒介契約書に住所氏名の記入と押印 |
---|---|
②物件周辺状況報告書(告知書)の記入 | 売主が知りうる限りの建物の状況、周辺の騒音などを物件周辺状況告知書に記入 |
③付帯設備表(告知書)の記入 | 建物内にある設備の状況や、置いていくのかどうかの記入 |
④書類の貸与 | 建物の間取り図や購入時のパンフレットなどをコピーして不動産会社に預ける |
⑤案内方法などの確認 | 購入希望者が現れたときの案内日時や案内方法などを取り決めておく |
買い手との売買契約
続いての手続きは、買い手との売買契約です。
売買契約が締結されるまでは、家が売れたと言い切ることはできませんので、油断せずに一つ一つの手続きを丁寧に行っていきましょう。
売買契約までの流れ
家を売り出して購入希望者が現れると、購入申込書が渡されます。
購入申込書を受け取ってから売買契約を締結するまでの流れは以下の通りです。
②必要書類の準備
③条件合意、諸々検査の立ち合い、重要事項説明書の確認
④売買契約
価格・条件の交渉
売主にとって価格交渉は悩ましいポイント。
目安としては売り出してすぐの交渉と、売り出してから半年後の交渉は応じるべきでしょう。
売り出してすぐに価格交渉が合った場合は、ずっとアンテナを張っていた購入希望者である可能性が高く、少額の値引きでもすぐに売却できる可能性が高いからです。
逆に半年後の交渉は「この値段なら買ってもいい」と思いながら、物件に注目してくれていた購入希望者である可能性が高いです。
売り出してから半年が経過すると、すでに売れ残り感も強く、売却できるラストチャンスかもしれません。
必要書類の準備
売買契約時に必要な書類の準備も忘れてはいけません。
不動産会社との契約手続きのときに記入した告知書に記載漏れがないかも確認しておいてください。
売買契約書に貼る収入印紙も用意しなければならない場合があります。
不動産会社に確認を取りましょう。
条件合意、諸々検査の立ち合い、重要事項説明
売却する物件に、買主がホームインスペクション(住宅診断)を希望することもあるでしょう。
ホームインスペクションは売買契約を締結する前に完了させなければならないため、売主は立ち会うようにしてください。
重要事項説明は売主が聞かなくてもいい場合がありますが、事前に内容を確認しておきましょう。
売買契約締結の流れ
売買契約は、基本的には不動産会社の事務所内で行われます。
契約自体には2時間程度を要するので、事前に売主と買主で不動産会社を介して日時を決めておくのが一般的です。
売買契約の手続きは以下のように進みます。
②重要事項説明
③売買契約書の締結
④告知書の説明
⑤覚書・合意書などの説明
⑥売買契約書など理解の確認
⑦本人確認
⑧売買契約書に署名押印、収入印紙貼付
⑨手付金授受
⑩残金決済のスケジュール確認
売主は売買契約時に手付金を受け取る
手付金とは、不動産を購入するための前金です。
売買価格の1割程度が基本とされ、購入前に買主からキャッシュで支払われます。
残金決済時には返金することとなりますが、万が一買主が購入を拒否した場合は、手付解除として手付金をキャンセル料代わりに受け取ります。
仲介手数料の支払い
売主にも支払いがあります。
売買契約が成立後には、不動産会社に仲介手数料を支払いましょう。
仲介手数料は、媒介契約書に記載された物件の売買が成立したときに発生するため、引渡しを待たずにこのタイイングで支払うのです。
売買契約時と残金決済時の2回に分けて支払うケースもありますので、不動産会社との契約時には、仲介手数料を支払うタイミングも確認しておいてください。
売買契約締結後の流れ
売買契約の手続きが終わってから売主がするべきことは 2つです。
・売買条件の実施
建物内にある物の仕訳
付帯設備表を確認しながら、買主に引き渡すもの、新居に持っていくもの、処分するものなどを仕分けていきましょう。
このとき、残金決済で使う登記識別情報通知や実印を失くしてしまわないように注意してください。
売買条件の実施
購入に際して、買主から土地の測量やリフォームなどを条件として提示している場合、残金決済までの期間ですべて実施しておきましょう。
売買契約の締結から残金決済までは、買主の住宅ローン審査などもあり1~2ヶ月ほど期間があります。
それまでにやっておかなければいけないことはすべて完了しておいてください。
残金決済と登記の手続き
買主の住宅ローン本審査が通れば、売買契約を解除される可能性はほぼなくなりますので、引渡へ向けてのラストスパートが始まります。
残金決済と登記手続きまでの流れ
残金決済と登記手続きの流れを確認しておきましょう。
②抵当権抹消登記の手続き
③不用品などの仕訳・処分
④引越し業者との契約
⑤各種インフラ、管理組合への連絡
⑥残金決済の準備
⑦残金決済と登記手続き
残金決済の場所と日時
残金決済の場所は、買主が住宅ローンを買立金融機関で行われることが多く、登記の手続きもあるため、平日の午前中~15時までに行われます。
住宅ローンが残っているなら抵当権を抹消する
住宅ローンを借りて購入した家を売却する場合、残金決済までに抵当権を抹消する手続きをしておかなければなりません。
抵当権抹消手続きは以下の手順で行います。
②抹消手続き書面に必要事項を記入
③決済時に売却金から残金を振込む
④完済書面を受領する
①金融機関へ連絡
家の売却が決まったら、まずは住宅ローンを借りた金融機関へ連絡を取って、売却金で残りの住宅ローンを完済することを伝えてください。
②抹消手続き書面に必要事項を記入
続いて、本人確認書類と実印、通帳、通帳の届出印を持って金融機関に行き、抹消手続き書面に必要事項を記入していきます。
このとき決算日、つまり残金を完済する日を記入するのですが、金融機関の処理には2週間ほどかかるので、余裕を持って日程を調整する必要があります。
金融機関によっては、書類を郵送してくれる場合もあるので、その点も含めてまずは連絡を取るようにしてください。
③決済時に売却金から残金を振込む
決済日に買主から売却代金が振り込まれたら、そこから住宅ローンの残金を完済します。
④完済書面を受領する
住宅ローンを完済すれば、金融機関から完済書面が貰えます。
それを司法書士に渡して、抵当権の抹消登記をしてもらい、ようやく抵当権が抹消されることになります。
不用品の処分~各種インフラへの連絡
抵当権抹消の手続きが完了したなら、次は家に残った不用品を処分していきます。
引っ越し業者との連絡もこの時点ではすでに完了しておくようにしてください。
各種インフラへの連絡も忘れないようにしましょう。
マンションに住んでいる場合は、専用使用権のある共用部(駐車場など)の解約手続きも忘れずに。
残金決済当日の動き
残金決済同日は多くの手続きがあります。
流れを把握しておき、余裕を持って対処できるようにしておきましょう。
②振込伝票等の記入
③領収書、引渡完了確認書などの記載
④伝票にて着金確認
⑤買主に領収書、物件資料、鍵などを渡す
⑥諸費用の支払い(仲介手数料、登記費用、固定資産材の残金など)
⑦登記識別情報通知の案内
⑧抵当権完済書面の授受
移転登記手続きは司法書士が代行
決済と同時に行われるのが移転登記手続きです。
移転登記手続きは、司法書士に依頼するため、売主は司法書士への委任状を作成しましょう。
司法書士が委任登記手続きのために作成するのは、以下の書類が必要になります。
・代理権授与証明書(決済当日に売主が立ち会わない場合)
引渡の後には確定申告が待っている
不動産会社との売却依頼手続きから買主との売買契約、そして決済と移転登記が完了すれば、あとは家を買主へ引き渡して、不動産売却は完了です。
しかし、売却後にもまだやらなければならない手続きは残っています。
それが確定申告です。
売却後に税務署から案内が届く
売主には、家を売った後で税務署から「譲渡所得税等の申告の案内」が届きます。
内容をよく確認し、家を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告をしましょう。
譲渡益があった場合は税金を納める
不動産を売却したときの譲渡所得税の基本は「家を売って儲かった人から税金を徴収しよう」とするものです。
課税金額は今の資産価値で算出
つまり家を売ったときの儲けに対して税金が課せられるわけですが、この儲けの金額は購入価格と売却価格を比較するわけではありません。
家を売ったときに課税される金額は、売却時点での価値と売却価格を比較して算出します。
こ:もしかして税金でほとんど持っていかれるんじゃ…?
く:自分が住んでいた家を売ったときは、控除の特例があるので安心してください。
詳しくはこちら【高く売れると税金がかかる?家を売る前に「譲渡所得税」を知ろう!】の記事を参考にしてください。
売却損も確定申告で取り返せる
一般の人が住み替えなどを理由に家を売却したとき、儲けが出ることはほとんどないと思います。
その場合、確定申告をしなくていいのかと言われると、そうではありません。
家を売って譲渡損失が出た場合は、その他の所得と損益通算することができるからです。
損益通算をして還付金を受け取るためには、やはり確定申告が必要となりますので、家を売った後は必ず確定申告するようにしましょう。
必要書類も確認しておこう
家を売るための手続きには、その都度必要になる書類が沢山あります。
ここに必要となる書類をまとめておきましたので、家を売る前に確認しておいてください。
家を売るための必要書類一覧
必要書類 | 入手方法 | タイミング |
---|---|---|
登記簿謄本 (登記事項証明書) |
法務局の窓口 | 売却前 |
家の図面、仕様書、 購入時のパンフレット |
自宅にない場合は施行会社や不動産会社 | 売却前 |
住宅ローン償還表、 ローン残高証明書 |
金融機関から送られてくる | 売却前 |
購入時の売買契約書、 重要事項説明書 |
自宅にない場合は施行会社や不動産会社 | 売却前 |
土地測量図 | 法務局の窓口 | 売却前 |
境界確認書 | 隣接する土地の所有者と合意して作成 | 売却前 |
地図・公図 | 法務局 | 売却前 |
本人確認書類 | 売主所有の免許証など | 売却前 |
マンションの管理規約、 議事録、 長期修繕計画書 |
マンション管理会社から | 売買契約締結時 |
印鑑証明書 | 最寄りの市役所 | 売買契約締結時 |
住民票 | 最寄りの市役所 | 売買契約締結時 |
登記済権利書、 登記識別情報 (権利書) |
法務局から取得時に交付される | 売買契約締結時 |
建築確認済証、 検査済証 |
購入時に売主(不動産会社)から交付される | 売買契約締結時 |
抵当権抹消申請書 | 金融機関より | 売買決済時 |
登記関連の書類 | 司法書士が作成 | 売買決済時 |
固定資産税評価証明書、 固定資産税納税通知書 |
都税事務所、県税事務所、毎年5月に税務署から郵送される | 売買決済時 |
預貯金口座情報 | 売主所有 | 売買決済時 |
まとめ:家を売るための手続きは何かと多い
家を売るための手続きと、不動産売却の全体像を総まとめしました。
家を売るために必要な手続きは、何かとたくさんあり、一つ一つ自力でこなすのはてても大変です。
基本的には、売却依頼をする不動産会社がサポートしてくれますので、やはり一番重要なのは、最初の不動産会社選び。
こればかりは自分で信頼できる業者を見極めるしかありません。
まずはイエウールなどの不動産一括査定サイトを利用して、不動産会社を比較してみましょう。
家を売るための手続きを任せられる担当者に出会えるはずです。