重要事項説明書とは

2019/03/26 投稿 2019/03/25更新
重要事項説明書って、家を買ったときに貰った気がするけど、売るときも必要なの?

不動産売買には「重要事項説明」がつきもの。重要事項説明自体を売主が行うわけではありませんが、重要事項説明の内容によっては売買契約が流れてしまう可能性もあるのです。

そのため、売主としても理解しておく必要があります。

そこで今回は、そもそも重要事項説明とは何か?誰が何のために行うか?説明する内容やチェックポイントとは?について詳しく解説していきます。

不動産売却を検討している人、もしくはすでに売却中の方はチェックしてみてください。

重要事項説明書とは?

重要事項説明書とは、その名の通り「売買する不動産に関する重要なこと」を説明する書面のことです。

一般的には、仲介を依頼した不動産会社が重要事項説明書を作成し、宅建士の資格を有している社員が買主に説明します。

そのため、不動産の売主・買主は不動産会社に一任するのが通常ですが、その内容は把握しておく必要があります。

重要事項説明書を行う流れとしては以下のとおりです。

・買主から申込を受け付ける
・重要事項説明(申込から1週間程度)を買主に行う
・売買契約の締結(重要事項説明と同日)

このように、売買契約と同日に重要事項説明をするという流れです。

そのため、買主が重要事項説明に納得しなければ、その日に売買契約を結べない可能性もあります。

重要事項説明書の内容とチェックポイント

次に重要事項説明書の内容とチェックポイントについて解説していきます。

前もっていっておくと、売主が重要事項説明の内容を細かく理解する必要はありません。

というのも、そもそもその不動産を購入するときに重要事項説明を受けているので、ある程度は頭に入っているはずだからです。

また、重要事項説明を行う目的が「買主に説明するためだから」というのも理由の1つです。

ただ、重要事項説明で何を説明するか?を思い出しておき、売主としてチェックするポイントを知っておくことでトラブルを事前に防げます。

そのため、重要事項説明の内容である以下について、内容とチェックポイントを理解しておきましょう。

・取引物件に関する事項
・取引条件に関する事項
・その他の事項

取引物件に関する事項

まずは、取引物件に関する以下の項目が盛り込まれています。

・登記記録に関する事項
・法令に基づく制限
・私道負担に関する事項
・飲用水、電気、ガスなどのインフラ設備
・敷地に関する権利や共用部分に関する規約など

登記記録に関する事項

登記記録とは、その物件の所在地住所や面積などが記載されています。

登記面積は内法面積といって、壁の内側から測定される面積を採用しています。

一方、パンフレットには壁芯面積といって壁の一部が含まれた面積です。

つまり、登記面積はパンフレット(広告など)に記載されている面積より小さくなるので、その点を踏まえて広告などに記載された「買主が認識している情報」と相違ないかチェックしましょう。

法令に基づく制限

法令に基づく制限とは、用途地域や各種法令に基づく建築制限のことです。

たとえば、行政が決めている「高さ制限」などが概要し、この辺りが変更になっているケースはほぼありませんので、注視せずに一読だけすれば問題ありません。

私道負担に関する事項

私道負担とは、その不動産(住宅)までの道のりに個人が所有している「私道」があり、その私道を利用する料金を支払っている(負担)ということです。

私道負担金がある場合はその金額を確認します。

稀なケースですが、金額が変わったり、新たに私道負担が発生したりというケースは、必ず不動産会社に伝えるようにしましょう。

飲用水、電気、ガスなどのインフラ設備

飲用水、電気、ガス、または下水などのインフラ設備についても重要事項説明に記載されています。

これも稀なケースですが、たとえば供給施設が未整備の場合があります。

その場合は、いつまでに誰が整備し、工事費負担があるか?という点が記載されているかチェックしましょう。

また、既に完了している場合などは管理会社や行政から書面で提示されているはずなので、その書面を不動産会社に渡します。

それらの点が不明の場合、不動産会社に伝えて行政や管理会社にヒアリングしてもらいましょう。

敷地に関する権利や共用部分に関する規約など

こちらはマンションだけの内容ですが、マンションの敷地や共用部に関する規約が記載されています。

管理規約集が別にあるので、その管理規約集でもさらに重要な部分をピックアップしたイメージです。

既存の重要事項説明と同じような内容になりますが、管理規約集からピックアップされてないものの「住んでみて意外と知っておくべき規約」があれば、不動産会社に伝えて盛り込んでもらいましょう。

取引条件に関する事項

取引条件に関する事項とは、具体的には以下のような項目です。

・代金などの金銭授受に関する事項
・契約の解除に関する事項
・損害賠償額の予定または違約金に関して
・支払金または預り金の保全措置
・瑕疵担保責任の履行に関する事項

代金などの金銭授受に関する事項

代金などの金銭授受は、不動産の売買代金だけなく手付金なども盛り込まれます。

支払いタイミングなどが記載されていますので、詳細内容をチェックしましょう。

契約の解除に関する事項

契約解除については主に以下です。

・一方的解除
・ローン特約による解除

一方的解除は、買主・売主どちらかからの一方的な解除です。

その場合は違約となるので、次項の違約金を確認しましょう

ローン特約とは、買主の責任ではなく「ローンの本申込に否決」した場合に、白紙解約するという内容です。そのほかに特約を盛り込んでいたら、この欄に記載されるので内容をチェックしておきましょう。

損害賠償額の予定または違約金に関して

損害賠償請求額とは、たとえば買主・売主どちらかの責任で引渡しが遅れるときなどの損害賠償請求金額です。

また、違約金は預かっている手付金額が違約金になります。その旨もチェックしておきましょう。

瑕疵担保責任の履行に関する事項

瑕疵担保責任とは、引渡し後に建物の瑕疵(≒欠陥)があった場合に、売主が補修などの義務を負うことです。

個人が売主の中古不動産売買は、瑕疵担保責任を負う期間を買主・売主間で決めます。

一般的には半年~2年程度で決められ、それを重要事項説明に明記するという流れです。

その旨を不動産会社と相談して、きちんと反映されているかをチェックします。

その他の事項

その他の事項とは具体的には以下の事項です。

・国土交通省令や内閣府令で定める事項
・割賦販売に係る事項

これは定型文に近い文章なので物件によって大きな違いはありません。そのため、一読しておくだけで問題ないです。

重要事項説明書に関して知っておくべきこと

次に、重要事項説明書に関して知っておくべき以下について解説していきます。

・告知書とは?
・事前にコピーをもらい一読しておく
・引渡し後から変更したことを伝えておく
・トラブル時の連絡先

告知書とは?

重要事項説明と付随して「告知書」については理解しておく必要があります。

告知書とは、その不動産の状況を買主に告知することであり、以下のような項目があります。

告知書の記載項目
雨漏り 現在までない・過去にあった・現在ある
シロアリ被害 現在までない・過去にあった・現在ある
エアコン 設置台数、撤去の有無
給水管や排水管 故障の有無

告知書の目的は?

雨漏りやシロアリ被害など、不動産に関する重大な瑕疵と、エアコンや給水管などの設備部分は分ける場合があります。

その場合は、告知書と「設備機器確認表」などの名称になりますが、いずれにしろ引渡し後のトラブルを未然に防ぐのが目的です。

告知書で売主が見るべき点

中古不動産は現状渡しなので、基本的には「内見で買主が見たままの状態で売却します」という取り決めです。

ただし、告知書に記載する上記のようなことは内見しただけでは分かりません。

そのため、売主として把握している不備や瑕疵があれば、必ず不動産会社に伝えて反映しておきましょう。

事前にコピーをもらい一読しておく

不動産会社が作成した重要事項説明書のコピーを事前にもらっておき、重要事項説明を行う前に一読しておきましょう。

一読する中で、売主自身が疑問に思うことがあれば、それは買主側も疑問に思う可能性が高いです。

ただ、重要事項説明書の作成は申込~売買契約までの期間で行うので、重要事項説明書の作成が売買契約日直前になることも少なくありません。

そのため、事前に重要事項説明書がほしい旨を不動産会社に早めに伝えておき、コピーでなくデータでも良いのでもらうような流れにしておきましょう。

引渡し後から変更したことを伝えておく

仮に、引渡し後から以下のようなことが変更になったとします。

・駐輪場の使い方のルール変更
・ゴミ出しのルール変更
・共用部の利用料金の変更

一般的に、不動産会社は元々売主の所有している重要事項説明書を元に、今回の売買用に新たな重要事項説明書を作成します。

その過程で管理会社にヒアリングすることもあります。

ただ、上記のようなことを全て管理会社に確認するわけではなく、不動産会社が把握しきれないこともあるのです。そのため、引渡し後からルールなどが変更になったことがあれば、不動産会社に必ず伝えましょう。

記憶が曖昧な情報でも、不動産会社に伝えれば確認してくれて、それが買主からのクレームに対するリスクヘッジにつながります。

トラブル時の連絡先

万が一、重要事項説明書に関して買主、もしくは不動産会社とトラブルになったときのために、以下の連絡先があることを認識しておきましょう。

・「法テラス」日本司法支援センター
・「国民生活センター」「都道府県・市区町村の消費生活センター」
・その他の問い合わせ先

「法テラス」日本司法支援センター

日本司法支援センターとは、2006年に設立された支援センターです。

目的としては、あらゆる法律に関するトラブルを支援することであり、法務省所管の独立行政法人として設立されました。

通称「法テラス」と呼ばれており、法的トラブルの解決に役立つ情報や適切な相談窓口を紹介してくれます。

相談内容によって、法律の専門家である弁護士が対応してくれる点は安心できる点です。

「国民生活センター」「都道府県○市区町村の消費生活センター」

国民生活センターや消費生活センターは、法律問題に限らず生活や消費に関わるトラブル全般について相談できます。

全国700以上設けられた消費生活センターとすべての市区町村に設置された消費生活相談窓口の中から、最寄りの相談窓口を紹介してくれるので、法律に関係ないことについてはこちらの方が適切な処理をしてくれるでしょう。

その他の問い合わせ先

その他の問い合わせ先として以下も挙げられます。

・国土交通省の地方整備局や都道府県の宅地建物業法所管窓口
・社団法人全国宅地建物取引業保証協会
・社団法人不動産保証協会
・財団法人不動産適正取引推進機構

要は、宅建や不動産協会に関連する機関です。上記の問い合わせ先でも解決しない場合は、こちらに連絡してみましょう。

まとめ:事前の確認でリスクヘッジを

このように、重要事項説明は売買契約前に行う買主への大事な説明であり、売主も事前にチェックしておくことでリスクヘッジできます。

まずは、重要事項説明の内容を理解しておきましょう。その上で、売主がチェックすべき事項を契約前に一読しておきます。