買い替え特約とは

2019/03/18 投稿 2019/03/15更新
買い替え特約って、いったいどんなタイミングで使う特約なの?

転勤やライフスタイルの変化など、マイホームの住み替えや買い替えを検討する人の理由は色々です。

そんな中、あらかじめ希望の物件があり、かつ何らかの理由で早めに住み替えをしたい時に利用したいのが「買い替え特約」です。

買い替え特約は買い先行で買い替えをするときに、リスクを最小限にできる特約であり、覚えておくべきポイントがあります。

ここでは、買い替え特約の内容や記載事項、注意すべきポイント、さらにうまくいった場合、うまくいかなかった場合の両方からの売却後の流れを解説します。

買主にだけメリットがあるように見えますが、売主のメリットもあるので確認しておきましょう。

買い替え特約とは

買い替え特約とは、マイホームなどの買い替え時に一定の条件下で旧居が売れなかった場合に契約を白紙にできる特約を指します。

マイホームの買い替えは、旧居の売却と新居の購入の両方を同時進行していきます。

旧居の売却価格を新居の購入資金に充てるために、売り先行で新居の購入計画を進める人もいるでしょう。

一方で、購入したい人気物件が見つかった時や、急な転勤や離婚などで先に新居の購入契約を結ぶ買い先行を選ぶ人もいます。

ただ、十分な資金がないまま買い先行で買い替え計画を立てるのはリスクが高いです。旧居が売れるかどうかもわからず、売却金額が確定しないうちに新居を購入することになるからです。

この場合に買い替え特約を新居の購入契約時に盛り込んでおくと、旧居が売れなかった場合に、一定の条件を満たせば購入契約を白紙に戻す、契約の解消が可能となります。

買い替え特約の記載事項

買い先行や急ぎのマイホームの買い替え計画も立てやすくなる買い替え特約は、これから買い替えを検討している人にとっても心強い存在です。だからこそ、買い替え特約に盛り込む記載事項を良く確認するのが大切になります。

買い替え特約に記載する事項は以下の4つです。

・買い替えを目的にした売却であること
・不動産売買契約の締結日と物件詳細
・特約が利用できる条件
・手付金の返還義務

買い替えを目的にした売却であること

買い替え特約には、不動産売買契約が買い替えを目的に締結されていることが明記されています。

例えば「本物件売却は売主の買い替えを目的とした…」などです。

不動産売買契約の締結日と物件詳細

買い替えのための不動産売買契約の締結日と、購入予定の物件詳細(例えば、マイホーム買い替えなら新居)を記載します。

例:2019年〇月×日付けで購入物件の不動産売買契約を締結済み(下記参照)
所在:
建物の名称:
部屋番号:
専有面積:

特約が利用できる条件

買い替え特約が利用できる条件を記載します。

具体的には「いつまでに」「いくらで売れなければ」です。

例えば「2019年〇月×日までに、現在の住まいを〇百万円で売れなかった場合、本契約は白紙解除とし…」または「2019年〇月×日までに、売主の責めに帰すことのできない事由により購入不動産の売買契約が解除となった場合、本契約は白紙解除とし…」などです。

手付金の返還義務

買い替え特約を不動産売買契約に盛り込む目的とは、「もしも買い替え前(マイホームの場合は旧宅)が売れなかった場合に不動産売買契約を白紙にする」かつ「契約を白紙にすることで、契約時に支払った手付金が返還される」ことです。

よって、「売主は受領済みの金員を無利息にて買主に返還するものとします」など、不動産売買契約が白紙になった場合には、手付金が返還されることが記載されています。

売主にとってメリットはない?買い替え特約で覚えておくべきこと

買い先行でマイホームなどの買い替えを検討している人にとって、買い替え特約を利用すれば万が一旧居が売れなかった時にも安心材料になります。

ところが、実は買い替え特約をつけることは買主にはメリットがあっても、売主にとってはメリットが少なくなっています。

だからこそ、以下の4つのポイントを覚えておかなければいけません。

・売主の合意がないと付けられない
・特に人気の物件はつけられない可能性がある
・売り先行も視野に入れておく
・売却金額を踏まえて資金計画を立てる

売主の合意がないと付けられない

買い替え特約は、買い替え目的の不動産売買契約のすべてにつけるべき、と義務化されているものではありません。

よって、買主が人気の物件を押さえたい、すぐに買い替えをしたいなどの理由で買い先行の場合に買い替え特約を付けると、買主にとってのメリットはありますが、売主にとってはメリットが少ないため、買い替え特約を売主がつけるのを拒否することもできます。

買い替え特約はすべての不動産売買契約につけられるのではなく、あくまで売主の同意ありきで付帯可能な特約であると覚えておきましょう。

人気の物件ではつけられない可能性が高い

買い替え特約が盛り込まれていても、不動産売買契約が結ばれている以上売主は新しい買主を募集することもできません。

さらに、買い替え特約がついている物件は一度結んだ契約を解除される可能性もあります。

だからこそ、買い替え特約をつけるまでもなく売れる物件には、買い替え特約をわざわざつけない売主も多いことに注意しましょう。

例えば、人気のエリアや立地にあるところや、間取りなどの条件が良い物件はそれだけ購入希望者が多く現れる可能性があります。売主が売り急ぎをせずとも売れる可能性が高いため、買い替え特約をつけられないことも珍しくありません。

売り先行も視野に入れておく

買い替え特約の付帯を前提に買い先行で買い替えの計画を進めようと思ったところ、売り主から「買い替え特約はつけられない」と断られてしまう可能性もあります。

よって、買い替え特約の付帯の有無によっては、買い先行ではなく売り先行も視野に入れて買い替えを進める可能性もあることを、頭に入れて置きましょう。

売り先行で動くには、旧居がどのくらいの価格で売れるかどうかを把握するために、相場を知っておくのがおすすめです。

不動産一括査定サイトなどを利用して、旧居が売れるおおよその価格を踏まえておけば、売り先行に切り替えても上手な買い替えができるでしょう。

まずは、希望の物件の不動産売買契約で、買い替え特約がつけられるかどうかを確認しておくのがおすすめです。

売却金額を踏まえて資金計画を立てる

買い替え特約の記載事項には「〇百万円で売れたときに」と売却金額を記載します。

この売却金額は最低金額と最高金額が記載されており、最低金額は実際の不動産相場よりも低めに設定されていることが多いです。

つまり、買い替え特約を盛り込んだ場合、旧居が相場よりも低い価格で売却される可能性も高いのです。

よって、買い替え特約を付帯する場合は、売却の最低価格も踏まえて買い替えの資金計画を立てるようにしましょう。

買い替え特約~売却までの流れ

買い替え特約を利用して売却するときの流れを見てみましょう。

買主側の流れ

①購入したい物件を見つける
②主に買い替え特約が利用できるかどうかを確認する
③不動産売買契約を締結する
④手付金を支払う

【売却が上手く言った場合…】
⑤旧居が無事に売れた場合は、その時点で不動産売買契約が成立する
⑥残りの代金の支払いと新居の引き渡しを行う

【売却が上手くいかなかった場合…】
⑤買い替え特約の期限内なら、売却できなかったため不動産売買契約を白紙にしたい、もしくは期限の延長を申し入れる
⑥不動産売買契約を延長、または白紙に戻す
⑦不動産売買契約が白紙になった場合は手付金の返還を受ける
⑧売り先行に切り替えるなど、次の住み替え計画を練り直す

売主側の流れ

①買主の買い替え特約付帯希望を受け入れる
②不動産売買契約を締結する
③手付金を受け取る

【売却が上手く言った場合…】
④旧居が無事に売れた場合は、その時点で不動産売買契約が成立する
⑤残りの代金を受け取り新居の引き渡しを行う

【売却が上手くいかなかった場合…】
④買い替え特約の期限内なら、売却できなかったため不動産売買契約を白紙にしたい、または期限の延長希望など買主から申し入れがあれば対応する
⑤不動産売買契約を延長、または期限切れなら白紙に戻す
⑥不動産売買契約が白紙になれば手付金を返還する

買い替え特約が有効なケース

買い替え特約を利用すると、買主にはメリットが大きいですが、実は売主にも全くメリットがないとは言い切れません。

買い替え特約の付帯や利用が有効なケースを、買主側、売主側両方で見ておきましょう。

買主側の買い替え特約が有効なケース

買主側で買い替え特約を付帯したい、有効なケースは「買い先行での住み替え計画時」です。

買い先行での住み替えには以下のメリットがあります。

・転勤、離婚など住み替えをできるだけ早くしたいとき
・住宅ローン残債が少ないなど、資金にある程度余裕があるとき
・希望物件の人気が高いため先に押さえておきたいとき
・引越しや仮住まい探しなどの手間を省きたいとき

上記に当てはまるときは、買い先行での住み替え計画のため不動産売買契約を結ぶ(新居の購入)→旧居の売却、の順番になります。

よって、万が一旧居が売れなかったときも安心の買い替え特約の付帯が有効となるでしょう。

売主側の買い替え特約が有効なケース

買主側にはメリットが大きく、売主側にはメリットがないイメージのある買い替え特約ですが、実は売主側にも以下のケースで買い替え特約を利用すると、物件が売却しやすくなるメリットがあります。

・長期間売れ残っている物件
・できるだけ早く物件を売りたい時

長期間売れ残っている物件

立地条件が悪い、日当たりが悪い、旗竿地など土地の形で売れないなど、物件によっては売れにくく人気が低い物もあります。

長期間売れ残ってしまっている物件でも、買い替え特約付きで売りに出すと、購入希望者の安心材料となるため、「とりあえず契約だけ結ぼうか」と売れやすくなるメリットがあります。

できるだけ早く物件を売りたい時

買い替え特約を付けると、売主側にとっては物件が売れやすくなるメリットがあります。

わざわざ特約を付けなくても売れるような人気物件でも、より早く売却したい時には買い替え特約を付けると、早く売れる可能性も高くなります。

まとめ:買い替え特約を活用すれば理想の住み替えにつながる

買い替え特約の内容や記載事項、利用したい時の注意点や買い替え特約を付帯した場合の流れ、さらに買い替え特約を付帯すると有効なケースをご紹介しました。

買い替え特約は、買い先行で住み替え計画を進めたい時にとても大きな存在となります。

買い替え特約を付帯しておけば、万が一旧居が売れなかった場合にも不動産売買契約を白紙にし、手付金も戻ってきますし、買い替え計画も練り直しが可能です。

買い先行で売却ができなかった場合は、売り先行に切り替えて住み替えをするのもおすすめです。