住み替えローンの審査基準とは 住宅ローンよりも審査が厳しいって本当?

2018/11/02 投稿 2019/02/27更新

住宅ローンを借りて購入した家を売るには、今住んでいる家に設定された抵当権を抹消するために、住宅ローンの残債をすべて返済する必要があります。

その際、ローン残債が売却価格を下回っていれば、売却金額をローンの返済に使うことができるので問題ありません。

一方、ローン残債が売却価格を上回り、手持ちの資金を足してもローンが返済できなければ、家を売ることはできません。

ただ、住み替え(買い替え)を目的として家を売る場合であれば、住み替えローンを利用することができます。

このローンなら、旧居を売却した後に残った住宅ローン残債や売却にかかる諸費用を、新居を購入するときの住宅ローンに上乗せすることができ、旧居の住宅ローンが売却価格を上回っていても、抵当権を抹消して家を売ることができるのです。

しかし、初めから新居の資産価値以上のローンを組むことになるため、住み替えローンの審査は住宅ローンの審査以上に厳しいものになります。

今回は、住み替えローンを利用する条件や審査について、活用術と合わせて解説していきます。
よろしくお願いします!

 

住み替えローンを利用する条件および審査とは

これから住み替えを検討している、かつ今住んでいる家でローンが残っている、売却してもローンが返済できない場合、「住み替えローンを利用する」選択肢があります。

住み替えローンを利用するための条件や、審査について見てみましょう。

住み替えローンを利用する2つの条件

住み替えローンとは、その通り「新しく住宅を購入する時に利用できるローン」を指します。ローンの種類としては住宅ローンに含まれますが、以下の条件を全て満たしたときのみ利用できます。

・新しく住居を購入する(賃貸目的は不可)
・旧居を売却しても住宅ローンが残ってしまい、預貯金などでも完済できない

新しい住宅の購入ローンに、旧居を売った時に残った住宅ローンを上乗せして支払えるのが、住み替えローンです。

ほかにも、「日本国籍を有しているか」など、一般的な住宅ローンを利用する時と同じ条件が定められています。

条件を満たしたら、住み替えローンの利用申し込みができますが、当然審査に通らなければ融資を受けることはできません。

次に、住み替えローンの審査について見てみましょう。

住み替えローンの審査が厳しい理由

住み替えローンは一般的な住宅ローンよりも審査が厳しくなっています。

住み替えローンは、購入する住宅分のローンに、住み替え前の住宅分のローンを上乗せして返済します。

つまり、購入する物件の担保価値以上の金額を融資する、オーバーローン状態になるのです。

万が一ローンの回収が困難になった場合は、「担保による徴収」で融資額を回収しますが、住み替えローンの場合は担保価値以上の金額を融資するため、担保による徴収をしても融資額を全て回収することはできません。

ただでさえリスクの高い融資になりますので、金融機関としては確実に返済できる人に融資したいと考えます。

そのため、あらかじめ融資を受ける人に返済能力があるか、信用があるかを判断し、金融機関側のリスクをできるだけ低くするために、住み替えローンは一般的な住宅ローンよりも審査が厳しくなっているのです。

金融機関も、万が一の場合に融資したお金が返ってこないことだけは避けたいですからね。
そりゃ審査も厳しくなるわけだね…。おれ、住み替えローンを借りられるのかな…。

住み替えローンの審査対象

金融機関がローンを利用した人の信用状態と返済能力を見るためには審査を行います。

住み替えローンは主に以下の4つの審査対象によって、融資可能かが決まります。

・過去の借入履歴
・現在の収入
・現在の勤め先と勤続年数
・健康状態

住み替えローンの審査対象項目がどのように審査されているのかを順に解説します。

過去の借入履歴

過去の借入履歴は、住宅ローン以外の借入履歴についても調べられます。

車や家電など高額商品をローンで購入した場合から、月々のクレジットカードの利用状況まで見ます。

過去の借入履歴は内容だけでなく、きちんと返済されているかどうかも重点に見られます。

スムーズに返済できていればそれだけ信用があることになります。もしも返済が滞っているローンなどがあれば、審査に通りにくくなります。

ローンを利用する金融機関によっては、住み替えローンの利用申し込みの時点から断られる場合もあります。

ローンの返済だけでなく、残高不足などでクレジットカードの引き落としができなかったことがあれば、返済が滞っていたと見なされ、融資を受けられる信用が落ちてしまいます。

現在の収入

現在の収入状況では前提として、安定した収入があるかが見られます。

無職、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用の場合は、安定した収入がないとみなされ、住み替えローンの利用自体ができないこともあります。

これに加えて、高い収入であればあるほど、ローンの返済に充てられる可能性が高くなりますので、信用は高くなります。

もしも、平均程度の年収だったとしても、実際に住み替えローンで借り入れる金額に対して、返済能力があると見なされれば審査は通る可能性が高いので、安心してください。

現在の勤め先及び勤続年数など

現在の勤め先は正社員か非正規雇用かの雇用状況や、企業の規模について見られます。

さらに、正社員の場合は企業の規模が高いほど信用があります。

これは、大手企業なら収入の高さに加えて、社会的な信用があるからです。

とはいえ、収入額と同じく勤め先が中小企業の場合でも、借入金額に対して返済能力があると判断されれば審査は通ります。

勤め先と同時に、勤続年数も見られることがあります。

勤め先を転々としているよりも、同じ勤め先に長年勤めていた方が安定した収入、かつ高い収入を得ているからです。

なお、自営業者や個人事業主の場合は事業の営業年数と、経営状態を見られます。

営業年数が長ければ長いほど有利ですが、近年の経営状態が黒字であるかも信用を決めるポイントになります。

健康状態

最後のポイントが、借入希望者の健康状態です。

なぜ健康状態を見られるかというと、「団体信用生命保険」に加入するためです。

団体信用生命保険とは、ローンの融資を受けている人が、返済中に亡くなった場合、団体が代わりにローンの残債を返済する生命保険です。

団体信用生命保険に加入するには、一定の健康状態であることが求められます。

そして、団体信用生命保険への加入を、住宅ローンを利用する際の条件として定めている金融機関が多数となっています。

もしも団体信用生命保険に加入できない健康状態の場合、一部の住み替えローンを除いて利用できなくなり、住み替えローンの選択肢がごく一部に限られてしまいます。
なんだってー!?健康でいることって、住み替えのためにも大事なことなんだな。

 

住み替えローンの注意点

住み替えローンは融資額が大きく、審査も厳しいローンです。返済額も大きくなるため、住み替えローンの利用を検討する時には、慎重に判断しなければいけません。

次に、住み替えローンを利用する前に覚えておきたい、4つの注意点を紹介します。

借入金額は返済可能な金額か

住み替えローンを利用する時とは、「新しい住まいを購入する」「前の住まいの売却額+預貯金を充てても前の住まいのローンが残ってしまう」の2つの条件を満たした状態の時です。

新しい住まいのローンに、残ってしまった前の住まいのローンを上乗せして、支払っていくことになります。

返済する額が高いため、確実に返済できる金額であるか、返済計画をしっかりと立てておく必要があります。

返済可能な金額でない場合は、すぐにオーバーローンとなる危険性があります。

住み替えローンの審査が下りて融資を受けられたとしても、すぐに毎月の返済が困難になります。

その場合は、住み替えローンを受けて購入した新しい住まいを売却しなければいけません。

オーバーローン状態で売却しても、ほぼオーバーローン状態は続きます。さらに、住まいを失ってもオーバーローンが残った状態になりますので、生活も厳しくなります。

また、住み替えローンを検討する時には、返済が終わる期間や年齢も考えなければいけません。

まず、住み替えローンの利用申し込み時、年齢に関する条件が設けられています。

「借入時満20歳以上満70歳の誕生日まで」、さらに「完済時満80歳の誕生日まで」の条件を掲げている金融機関がほとんどのため、返済時の年齢は79歳以下でなければいけません。

利用できる年齢条件を満たしても、借り入れ開始年齢によっては返済が困難になる可能性があります。

例えば住み替えローン35年で利用した時の年齢が、20代なら返済が終わるのは50代です。

返済期間はずっと働いている状態のため、安定して返済し続けることができます。

さらに、返済が終わってもまだ働き盛りのため、ローンの返済後の生活の心配もありません。

一方で住み替えローンを借りた時点で40代なら、返済が終わるのは70代。60~65歳で定年退職を迎えるため、定年退職後も返済を続けなければいけないことになります。

無職の状態になっても、生活費に加えてローンの返済も続けていく方法を得ておかなければいけません。

なおローンの返済に退職金を充てる、と計画する人もいます。

けれども、年金を含めた社会保障制度がゆらぎつつある現代では、退職後年金だけで生活するのは困難です。

厚生労働省は、少子高齢化への年金対策も都度導入、検討すると発表していますが、具体的にどうなるかはわかっていません。

そのため、退職金は老後の生活資金として回されることがほとんどです。

退職金をローンの返済に充てると計画すると、退職後の生活が立ち行かなくなる危険性があります。

さらに、出産や子供の進学、受験など、多額の資金が必要なライフステージもあります。

ライフステージに応じて月の返済額を調整できる住み替えローンもありますが、返済総額自体を減らせるわけではありません。

長期間の返済に及ぶからこそ、まずは返済する年数や年齢に応じた返済計画を立てましょう。

無理なく返済できると判断できなければ、安易に住み替えローンを検討するのは危険です。

返済計画を立てる目安として役に立つのが、「資金計画シミュレーション」の活用です。

住み替えローンを取り扱っている銀行などの金融機関では、無理なく返済ができるかの資金計画をシミュレーションできるページを設けています。

例えば、「三井住友銀行」公式サイトには、「資金計画シミュレーション」のページがあります。

受取金額や返済金額、現在の年収などの必要項目を入力するだけで、住み替えローンの返済計画が簡単にシミュレーションされます。

住み替えローンの利用を検討する上での、ひとつの目安として活用できます。

参考:三井住友銀行住み替え資金計画シミュレーション

旧居の住宅ローンの完済日と新居の住宅ローン借入日を揃えなければならない

住み替えローンを利用するには、旧居の売却と新居の購入日を揃えて、返済と借入を同時に行う必要があります。

旧居の売却と新居の購入日を同じにするには、旧居の売却及び新居の購入を行う不動産会社、旧居の住宅ローン・新居への住み替えローンの融資を受ける銀行などの金融機関に加えて、司法書士や税理士の協力が不可欠になります。

多方面、他業種とのやり取りが発生するため、忙しい人はスケジュールのやりくりだけでも苦労します。

夫婦共働き、子供がまだ小さいなどの理由で、申し込みや手続きの時間が十分に取れないこともあります。

スムーズに動けるように、あらかじめ関係機関に相談したり、必要な書類を早めにそろえておいたりする工夫が必要になります。

旧居の売却と新居の購入を同じ不動産会社に依頼してしまうのも、日程調整をスムーズにするためのコツです。

【不動産売却で後悔しないための不動産会社の選び方】

住み替えローンの金利を確認しておく

住み替えローンは、利用する金融機関によって金利が異なってきます。また、同じ住み替えローンの中でも複数の金利を用意していて、自分でどの金利にするかを選ぶ場合もあります。

例えば、三井住友銀行の「住み替えローン」なら、以下の3つの金利から選ぶことになります。

・変動金利型…1年以上35年以内…短期プライムレートに連動する長期貸出金利を基準にして金利を決定。年に2回の金利見直しがある。

・固定金利特約型…2年以上35年以内の住み替えローンで選択可能。2年・3年・5年・10年の固定金利特約期間を選び、その間は金利が変動しない。

・超長期固定金利型(全期間固定金利型)…10年超35年以内…ローン借り入れ中の金利変動はない。ただしほかの金利型への変更はできない。

元々の住宅ローンの金利との比較に加えて、どの金利型を選択するかによって住み替えローンの金利が異なってきます。金利も住み替えローンの返済計画を考える上で重要なポイントです。

買い替え特約の付帯ができるか確認する

買い替え特約とは、一定期間のうちに旧居を指定した金額で売却できなかった場合、新居の購入契約をなしにできる停止条件付の特約です。

新居を購入した時のみ付帯でき、買い替え特約を利用して契約を白紙にした場合でも、違約金などのペナルティは発生しません。さらに手付金も戻ってきます。

ただし買い替え特約は、新居購入側にはメリットがありますが、売主側にはデメリットしかありません。

そのため、売り主側が特約の付帯を認めない場合があります。

買い替え特約の付帯を認めてもらうには、新居購入時に利用した不動産会社に、旧居の売却も「専属専任媒介契約」で依頼するなどの方法があります。

専属専任媒介契約とは、ひとつの不動産会社のみに旧居の売却を依頼することです。

【家を売るときの2つの契約「不動産売買契約&不動産媒介契約」とは?】

住み替えローンはどんな時に必要か

審査も厳しく、返済できないリスクもある住み替えローンですが、活用すれば大きな味方にもなります。

住み替えローンの活用が有効な2つのパターンを見てみましょう。

どうしても住み替えが必要な場合

急な転勤や、同居の家族との問題、ご近所トラブルが発生したなど、どうしても住み替えなければいけない事情がある場合です。

旧居の住宅ローンが残っている状態でも、住み替えローンを利用すれば住み替えを行うことができます。

転勤を断ると昇進に響く、精神的な理由でこれ以上我慢して住み続けたくない、といった場合でも、住宅ローンの残債を気にせずすみやかに住み替えへ行動を移せます。

現在の住宅ローン返済が苦しい

今住んでいる家のローンが苦しく、売却してグレードの低い家に住み替えたい人にも住み替えローンの利用はおすすめです。

住み替えローンを利用することで、住宅ローンの総額を減らすことができる場合があります。

旧居が少しでも高く売れば、住み替えローンで新居のローンに上乗せされるオーバーローン部分を減らすことができます。

そのため、できるだけ旧居を高く売れるかで、住み替えによる住宅ローンの総額を減らせるかどうかが決まることになります。

旧居をできるだけ高く売るには、多くの不動産会社から査定を受けて、より高い売却ができる不動産会社を比較するのが重要です。

不動産一括サイトを利用すると、インターネット上でいつでも、簡単に複数の不動産会社の比較ができますので、住み替えを検討している時にも気軽に利用してみましょう。

家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

まとめ:住み替えローンを利用する時は審査・担当者・借入金額に注意

住み替えローンは確かに通常の住宅ローンよりも審査が厳しいですが、マイホームの買い替え時、どうしても旧居の住宅ローンが残ってしまう場合には頼りになります。

利用するためには、不動産会社、司法書士、銀行、税理士などさまざまな専門家の協力も必要になります。

旧居の売却は、住み替えローンを利用した買い替えに携わった経験がある担当者がいる不動産会社を選ぶのがいいでしょう。

また、住み替えローンを利用した後ではたして返済可能な額なのかもよく考えてから利用するようにしてください。