宅地建物取引士とは

2019/03/12 投稿
宅地建物取引士って、いったい何をしてくれる人なの?

今回ピックアップする宅地建物取引士は、不動産取引の過程で必ず接する人達です。

もちろん、不動産を売買する方々が宅地建物取引士の免許を取得する必要はありません。

しかし、不動産という専門性の高い商品を取引するが故に、宅地建物取引士というプロにサポートしてもらう必要があるのです。

今回は宅地建物取引士の概要や試験の難易度、よくある質問などを解説します。

宅地建物取引士とは?

宅地建物取引士は「宅建士」とも呼ばれる国家資格であり、不動産取引の専門家を示す資格になります。

主に不動産会社に勤務する方が取得している資格であり、宅地建物取引業者(≒不動産会社)は以下の割合で常勤の宅地建物取引士を置くことが義務づけられています。

事務所 業務に従事する者の5名に1名以上
案内所など 1名以上

このように、宅地建物取引士は不動産会社とは切っても切れない関係であり、そもそも宅地建物取引士がいないと不動産会社は営業できません。

不動産の取引は高額であり、かつ民法・宅地建物取引業法など色々な法律が絡む取引です。

だからこそ、それらの取引をする不動産会社には、売主・買主が安心できるようプロフェッショナルである宅地建物取引士が必要になります。

宅地建物取引士の仕事

次に、宅地建物取引士の仕事に関する以下の点を解説していきます。

・宅地建物取引士は何をしている?
・宅地建物取引士の専任業務とは?

宅地建物取引士は何をしている?

上述のように、不動産会社には宅地建物取引士が従事している必要があります。

そのため、不動産会社の社員が宅地建物取引士を有しているケースが多く、宅地建物取引士の資格取得を義務化している不動産会社もあります。

しかし、当然ながら直接不動産に関わらない経理や人事などのスタッフ系の方もいるので、そのような方は「宅地建物取引士は持っているけど業務ではあまり使わない…」という方もいるでしょう。

一方、不動産仲介の営業マンであるものの、試験にパスできず資格取得ができていない方もいます。

つまり、宅地建物取引士の主な業務は、不動産関係の仕事であるものの、営業マン全員が宅地建物取引士の資格を有しているわけではないということです。

また、不動産管理会社・建築関係・金融関係でも宅地建物取引士の資格を有している人はいます。

宅地建物取引士の専任業務とは?

宅地建物取引士は不動産取引のプロフェッショナルであり、以下のように宅地建物取引士しかできない専任業務があります。

・重要事項説明書面への記名と押印
・37条書面(契約書面)への記名と押印

重要事項説明および記名・押印

不動産取引時には、不動産の重要事項説明が義務付けられています。重要事項とは以下のような内容です。

・物件に関すること(登記記録や私道の有無など)
・取引条件に関すること(契約解除に関する事項など)
・法令上の制限(都市計画道路など)
・その他

つまり、不動産の購入者が売買契約を締結する前に知っておくべき重要なことを、宅地建物取引士が説明するというわけです。

また、重要事項説明書には宅地建物取引士が記名・押印する箇所もあります。

37条書面(契約書面)への記名と押印

重要事項説明が終わり、買主・売主双方に問題がなければ売買契約の締結に移ります。売買契約に関しては、実は民法上では口約束でも問題ありません。

しかし、不動産取引は高額な取引になるので、通常は売買契約という書面をもって契約は成立します。

売買契約書には重要事項説明と同じような内容が記載されおり、売買契約書に関しては宅地建物取引士の資格を有していない人が説明しても構いません。

ただ、売買契約書に記名・押印できるのは宅地建物取引士の資格を有している人だけです。

上記の「重要事項説明および記名・押印」「売買契約書への記名・押印」は義務なので、守らなかった場合は宅建業者(≒不動産会社)が業務停止処分などの処罰を受けます。

宅地建物取引士になる方法とその後

次に、宅地建物取引士になるためには?に関する以下の点を解説していきます。

・試験の概要
・宅地建物取引士を取得後
・試験の難易度
・試験内容

上記を理解しておくことで、不動産取引で接する宅地建物取引士が、どのくらい不動産に関する知識を有しているかが分かります。

試験の概要

宅地建物取引士の試験概要は以下の通りです。

試験頻度 1年に1回
スケジュール 6月実施告知、10月試験、12月合格発表
試験方式 全問マークシート(50問)
試験時間 2時間

12月の合格発表で宅地建物取引士の試験に受かっても、すぐに建物取引士を名乗れるわけではありません。

宅地建物取引士の試験に合格すると受験地の都道府県知事の登録を受けることができ、その後に、登録を受けた都道府県知事から宅地建物取引士証の交付を受けます。

宅地建物取引士を取得後

宅地建物取引士の資格は、一度取得すれば一生有効な資格です。

しかし、宅地建物取引士の有効期間は5年なので、5年経過した後は更新が必要になります。

更新時には法定講習を受ける義務がありますので、その際に過去5年で変更した建物取引業に関する法律などを学ぶという流れです。

試験の難易度

宅地建物取引士の合格率は平均15%前後であり、毎年3万人前後の合格者が出ています。過去5年の受験人数・合格者数・合格率は以下の通りです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成30年度 213,993 33,360 15.60%
平成29年度 209,354 32,644 15.60%
平成28年度 198,463 30,589 15.40%
平成27年度 194,926 30,028 15.40%
平成26年度 192,029 33,670 17.50%

資格取得のTACによると、宅地建物取引士の難易度は相対的に普通で、ほかの資格と比較すると簿記2級、FP2級と同程度となっています。

相対的に「普通」とはいえ、公認会計士や司法書士などの難関試験も含まれるので、合格率なども加味すると簡単に取得できる資格ではありません。

試験内容

宅地建物取引士の試験内容は以下の通りです。

宅地建物取引業法 20問
民法など 14問
法令上の制限 8問
税金など 8問

上記のように、不動産取引に関する法律である宅地建物取引業法、および民法に関する問題が多いです。

以下より、各項目の概要を解説します。

不動産取引時に接する機会が多い宅地建物取引士が有している知識は何かを理解しておきましょう。

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法とは、重要事項の説明や売買契約の書面などに関する法律です。

宅地建物取引士の専任業務や義務に該当する範囲のため、最も重視される項目になります。

民法など

民法は不動産に限定した法律ではなく、通常の生活に関するあらゆる分野を網羅した法律です。

宅地建物取引士の資格における民法とは、代理・抵当権・相続・借地借家法・登記などになります。

法令上の制限

法令上の制限とは、国土利用計画法や都市計画法、建築基準法、農地法などのことです。

特殊な不動産取引や、行政が定めたルールなどが出題されます。

税金など

税金などとは、固定資産税や不動産取得税など、不動産取引に関する税金が出題されます。

よくある質問集

最後に、不動産取引を行う方が疑問に思うであろう、宅地建物取引士に関する以下の質問をピックアップしてお答えします。

・担当者が宅地建物取引士を持っていないが大丈夫か?
・売買契約書に記載されている名前が知らない人だが?
・免許登録の住所で資格取得に違いはあるか?
・自宅を売るにも宅地建物取引士の免許が必要か?

担当者が宅地建物取引士を持っていないが大丈夫か?

担当者が宅地建物取引士の資格を有していなくても問題ありません。

不動産取引時に接するのは、圧倒的に営業マンと接する時間が多いです。

営業マンは、査定や売却活動、申込・契約などを行ってくれます。

一般的に、営業マンは名刺に資格を記入しますので、宅地建物取引士という資格なければ、資格取得していないケースが多いでしょう。

そのため、重要事項説明などは営業マンの上司などが担当しますが、上述したように宅地建物取引士の資格を有していない営業マンもいます。

もちろん、宅地建物取引士の資格を有していることに越したことはありませんが、資格を有していなくても知識や経験があれば問題ありません。

売買契約書に記載されている名前が知らない人だが?

売買契約書に記載する記名・押印は、宅地建物取引士の資格を有していれば誰でも構いません。

一般的には重要事項説明書を読んだ人がそのまま記名・押印するケースが多いですが、不動産会社によってはその会社の上長が全ての売買契約書に記名・押印している場合があります。

そうなると、一回も会ったことがない人の名前が記名・押印されていることがありますが、取引上の問題はありません。

免許登録の住所で資格取得に違いはあるか?

宅地建物取引士の免許には、以下のように都道府県が記載されています。

・登録番号:(東京)第○○○○○号
・登録番号:(埼玉)第○○○○○号
・登録番号:(岡山)第○○○○○号

上記のカッコ内にある都道府県は免許を登録した場所なので、どこであろうと変わりはありません。上述した宅地建物取引士の試験は全国共通なので、都道府県ごとで異なる資格試験ではありません。

自宅を自ら売るにも宅地建物取引士の免許が必要か?

自宅を自ら売却する場合に宅地建物取引士の免許が必要か?という質問に関しては、「大半のケースは不要」というのが回答です。

この点を理解するために以下を解説します。

・宅地建物取引業に概要するか?
・自己発見取引の場合は?

宅地建物取引業に概要するか?

そもそもの話ですが、宅地建物取引士の資格を所有していても、以下に該当する業務を行うためには法人として宅地建物取引業の登録が必要です。

・宅地(土地や建物)を不特定多数に売買や交換する
・上記を反復して行う

自宅を売却するのは「不特定多数への売却」には該当しますが、反復して行うわけではありません。

そのため、宅地建物取引業法に該当しないので、宅地建物取引業法の免許も宅地建物取引士の資格も不要です。

また、宅地建物取引業法に該当しない場合は重要事項説明も義務ではありません。

自己発見取引の場合は?

不動産取引には自己発見取引があります。

自己発見取引とは、自分で買主を見つけてきて、売主・買主が直接取引することです。

前提として、自己発見取引は前項で解説した宅地建物取引業法に該当しないので、不動産会社を介さずに売主・買主で直接取引することは可能です。

また、宅地建物取引業法に当たらない以上、重要事項説明をする義務はありませんので宅地建物取引士の免許は不要になります。

ただし、実際はトラブル回避のために、宅地建物取引業の免許を有している不動産会社の宅地建物取引士に、重要事項説明書の作成・説明を依頼するケースが多いでしょう。

まとめ:宅建士は不動産取引の精通者

このように、宅地建物取引士は不動産に関する色々な分野に精通しています。

また、重要事項説明をするときに必ず接する存在ですので、売主の立場から宅地建物取引士とはどのような人か?は把握しておきましょう。

とはいえ、営業マンが宅地建物取引士を取得していなくても、その営業マンに知識と経験があれば問題ありません。

逆にいうと、宅地建物取引士を所有しているからといって、絶対に信頼できる営業マンとも限りらないので、その点は注意しましょう。