古家付き土地とは
ご自身の住宅や土地を売却したい時に「古家付き土地」という名称を目にしたことのある人も多いでしょう。
住み替えや買い替えなどで土地付き一戸建てを売却したい時、中古物件と古家の区別がつかず、悩んでいる人もたくさんいます。
ここでは、古家付き土地の概要や中古物件との違い、古家付き土地として売り出す場合のメリットとデメリット、さらに注意しておきたいポイントを解説します。
古家付き土地とは
古家付き土地とは、その名の通り古くなった住居や建物がついている状態で売りに出されている土地を指します。
普通の土地が何もない状態で売りに出されているのに対して、古家がついている状態で売っているため、不動産物件の分類としては「土地」にあたります。
なお、「古家付き土地」とは通称です。
不動産売買の広告上のルールとしては建物付きで売りに出されている場合は「中古一戸建て」または「土地※現状古家あり」の表記がされます。
古家付き土地と中古一戸建ての違い
土地と住宅をそのまま売りに出すときに気になるのが、「古家付き土地」として出すか、「中古一戸建て」として出すかです。
古家付き土地と中古一戸建ての違いは以下の通りです
・古家となる基準は築年数で決まる
それぞれのポイントを見てみましょう。
古家付き土地は「土地」、中古一戸建ては「一戸建て」として売られる
「土地付きの一戸建て」を売りに出す場合には、住宅をメインで売るか、土地をメインで売るかを考えると古家付き土地としてか、中古一戸建てとしてかが分かれます。
売りに出すメインはあくまで土地で、そこに古家がついている状態なら「古家付き土地」となり、土地として売りに出されます。
一方で現在建っている住宅を居住できる家として売却のメインと考えるのなら、「中古一戸建て」として、住宅として売りに出されます。
古家となる2つのポイントについて
土地の上に建っている住宅が古家にあたるのか、中古一戸建てにあたるかは実は明確な定義は設けられていません。
一般的には以下の2つのポイントに当てはまる場合は、古家とみなす場合が多くなっています。
・築年数が20年以上経過しているなら古家
昭和以前に建てられたなら古家
平成以降に建てられた家は、2019年現在築年数が最高でも31年以内のものとなります。
比較的新しいのに加えて、購入者にとっては以下のメリットが得られます。
・宅ローンが組みやすい
・住宅ローン控除が受けられる
・耐震基準をクリアしている
家として安心して住める条件を満たしているため、平成以降に建てられた住宅の場合は、中古一戸建てとして売りに出される傾向にあります。
一方で、昭和以前に建てられた住宅や建物の場合、現在の耐震基準をクリアしていない、住宅ローン減税が受けられないといったデメリットがあるため、家としての価値がないとして古家付き土地として出されることが多いです。
築年数が20年以上経過しているなら古家
一方で、平成以降に建てらえた住宅や建物でも、古家としてみなされ、売りに出される場合もあります。
住宅を購入するニーズは、実際に住むだけでなく、賃貸物件として貸出する、事業用の建物として使用するなど、居住用ではなく事業用として使う場合もあります。
建物や重機など、購入した時点での価値と年数経過、使用によって価値が減っていく資産を「減価滅却資産」と呼びますが、住宅も減価滅却資産に含まれています。
減価滅却資産には、「この年数までなら価値がある」とされる法定耐用年数がそれぞれで定められていて、事業用として住宅を貸し出す場合の法定耐用年数は、一般的な木造住宅の場合は22年です。
よって、法定耐用年数を数年で超える築20年以上が経過した住宅も、価値がないと考えて古家とし、「古家付き土地」として売りに出される傾向が高くなっています。
古家付き土地のメリット
買主にとっては古家付き土地を購入するメリットもあります。
裏を返せば、古家付き土地として売り出すと、売主にとっては売れやすくなるメリットがあるのです。
・古家でもそのまま住める場合がある
・リノベーションすれば住める家が手に入る可能性がある
・建て替えをする場合でも、間取りなどのイメージがつきやすい
それぞれのメリットを解説していきます。
古家としていても、そのまま住める場合もある
古家付き土地として売りに出すのは、住宅や建物としての価値がないため簡単に言えば「おまけのついた土地」として売りに出されている状態です。
古家を取り壊して建て直しても良いですが、もちろんそのまま住んでも問題ありません
前述通り古家とする明確な基準がないため、古家付き土地として出しても、古家ではなく中古一戸建て住宅として売れそうな状態の良い住宅が手に入る可能性もあるのです。
築年数は経過しているけれども、そのままの状態または少しの手入れだけで住める住宅が掘り出し物として手に入るかもしれないため、「土地付き住宅を安く欲しい」と思っているニーズが呼び込めるメリットがあります。
リノベーションすれば住める家が手に入る可能性がある
築年数は経過しているものの、取り壊しではなくリノベーションをすれば新しい家として生まれ変わる可能性もあります。
古民家の再生が話題になるように、今は古家を取り壊すのではなく、リノベーションして古家を活かした住まいづくりも人気になりました。
もしも古家がリノベーションに適した住宅の場合は「リノベーションするとまだ住める可能性がある」という付加価値をつけて売りに出せるメリットがあります。
リノベーションに適した住居とは、主に以下の住宅が該当します。
・玄関もスペースが広い
・耐震設計を満たしている、強固な建築資材を使っているなど安心して住める土台作りができている など。
建て替えをする場合もイメージがつきやすい
現在建っている古家を取り壊して新しい家を建てる場合でも、すでに古家が建っている状態のため、新居を設計する上でのモデルハウスとして活かすことができます。
建物の向きや日当たり、公道や隣近所との距離など実際に建っている住宅の視点から見ることができるので、新居を立てる上でも住むときのイメージがつきやすく、快適な住まいづくりにつなげられるのもメリットのひとつです。
ホームステージングを施して、理想の住まいを演出してあげれば、より古家を活用することができます。
古家付き土地のデメリット
買主にとってはメリットもある古家付き土地ですが、元々は価値のない家がついている土地という分類です。
よって、買主が購入をためらってしまう場合もあるのです。
売主にとって古家付き土地のデメリットは以下のものがあります。
・解体費がかかる
・敷地内の動産撤去は売主持ち
解体費がかかる
古家付き土地を購入した場合、古家の取り扱いは買主にゆだねられることになります。
そのまま住んだり、リノベーションをしたりできる一方で、取り壊して新しい土地を建てたい時には、解体費用も買主が出さなければいけません。
近年、エコの観点から廃棄物の分別がより詳細に求められるようになったことを受け、建物の解体費用も高額になる傾向にあります。
古家を解体する費用を考えると、買主にとっては普通に土地を買うよりも高くなってしまうため、買い渋りが起きやすくなるデメリットがあります。
敷地内の動産撤去は売主持ち
古家付き土地を売りに出すのは、空き家や相続で持て余した物件を売却するケースが多いように見えます。
実際には、今住んでいる住宅を古家付き土地として売却し、その資金で住み替えを考えている人が多くなっています。
もしも現在住んでいる住居を古家付き土地として売りに出し、成約となった場合は敷地内にある動産はすべて売主の責任で撤去しなければいけません。
今住んでいる家の中にある家財道具や庭にある用具など、たとえ不用品でも売主の責任で処分が求められますので、気を付けましょう。
古家付き土地を売却時の注意点
古家付き土地を売りに出す場合、ポイントを押さえておけばよりスムーズな売却にもつながります。
古家付き土地の売却時に注意すべきポイントは以下の4つです。
・解体やリノベーション、インフラ整備の費用
・法的な手続きや整理の抜けがないか
・瑕疵担保責任
家を残すか更地にするか
古家を残して古家付き土地として売りに出すほか、更地にして土地として売り出す選択肢もあります。
古家の場合は必要なリノベーションを行った上で出すこともできます。
一方で、リノベーションしても住宅としての価値は復活しない、解体費用がかかってしまう場合は、思い切って更地にする方法もあります。
古家を活かすか、更地にしてしまうかも売却するときに検討しましょう。
解体やリノベーション、インフラ整備の費用
古家付き土地として売りに出せば、売主にとっては解体費用を支払わなくて済むメリットがあります。
ところが、その分土地代は解体費用などを考慮した価格にまで下げないと、スムーズな売却にはつながりません。
古家をそのまま活かす場合にも、リノベーションやホームインスペクションの費用がかかります。
また、立地によっては上下水道を再整備しなければいけない場合も。
解体する場合にはもちろん解体費用はかかりますし、場合によっては木や石を撤去するための整地費用がかかることもあります。
古家付き土地として出すか、更地で土地として出すかは、トータルコストと買主のニーズで判断するのも有効です。
法的な手続きや整理の抜けがないか
土地や住宅などの不動産を所有していると固定資産税が発生します。
固定資産税は土地や住宅そのものにかかるのではなく、その不動産を所有している人そのものにかかります。
よって、固定資産税などを滞納していた場合は、古家付き土地を購入した買主に税金が動くのではなく、滞納している売主の元に残ることになります。
また、古い住居や土地の場合は、近隣との境界線があいまいになっていることも多いです。
境界確定図で境界線を確認した上で売りに出さないと、後のトラブルに発展する可能性も。
これらの、法的な手続きや整理の抜けがないかを売却前に確認しておきましょう。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは、不動産売買契約を結んだときに、不動産物件に重大な過失が見つかった場合、売主は買主に対して負わなければいけない担保責任を指します。
古家付き土地は、古家の解体後に瑕疵担保責任に問われる可能性があるのを覚えておきましょう。
例えば、古家を解体した後、古家の住居の下に防空壕や歴史建造物が発見される。または危険な化学薬品などが埋められているのが見つかったという可能性も十分にあるのです。
買主が古家にあるこれらの過失を知らない状態で不動産売買契約を成約した場合、万が一過失が見つかると損害賠償の請求や不動産売買契約の解除が可能になると、民法570及び559条に規定されています。
瑕疵は物理的なものだけではない
なお、「瑕疵」は解体時の地中から何かが出てきたといった物理的な物だけでなく、「その土地で昔事件があった」などの精神的な物も対象となります。
ところが、民法では明確な瑕疵の範囲を規定していませんし、効力は「半永久的」とされています。
免責特約を盛り込んでおく
これでは、売主が不動産を安心して売却できないため、一般的に瑕疵担保責任については不動産売買契約の中に具体的に盛り込みます。
不動産物件における瑕疵担保責任は、土地の瑕疵に加えて、建物の瑕疵が一般的に設定されます。
ただし、古家付き土地は住宅ではなくあくまで「土地」として売買されるため、建物つまり古家部分の瑕疵は、売主は免責になる場合がほとんどです。
まとめ:古家付き土地を知って上手な売却につなげよう
古家付き土地の概要や中古一戸建てとの違い、メリットやデメリット、売却時の注意点をご紹介しました。
近年のリノベーションブームもあり、古家付き土地の魅力を上手に伝え、瑕疵担保責任などの注意点を踏まえておけば、スムーズな不動産売買取引にもつなげられるでしょう。