マンション売却時の減価償却とは 税金や還付金の計算と合わせて解説

2018/08/27 投稿 2019/03/15更新

アナタが売却しようとしているマンション、購入したころと比べると資産価値が下がっていることにお気づきでしょうか?

住居としての価値は住む人によって様々なのですが、居住用の建物は国が定めた法定耐用年数のある減価償却資産であり、時間の経過とともに資産としての価値が減少してしまうのです。

なんだか難しい話だと思っていらっしゃることでしょうが、マンション売却前に減価償却に興味を持たれた売主さんはかなりラッキーです。

減価償却を知ることで、マンションを売却した後に支払わなければならない税金の額、または還付金の額を知ることができ、売却後の新生活の資金計画を立てることができるからです。

ラッキーッ!減価償却のことが取っても知りたいで~す!
わかりました、わかりました…。では、今回は減価償却について詳しく解説していきますね。

 

なお、とにかく今家がいくらで売れるのかが知りたいという方は、下記の記事から不動産会社のしつこい営業ナシで複数社に査定依頼ができる方法をご覧ください。

減価償却とは

減価償却とは、事業資産が経年によって劣化していく価値を必要経費として計上する手続きの事です。

また、経年によって劣化していく資産のことを、減価償却資産と言います。

不動産の場合は建物部分が減価償却資産にあたり、土地は時間の経過で価値が減少しないものとされています。

事業用資産と聞くと、テナントビルや賃貸物件のことを思われるかもしれませんが、居住用のマンションであっても減価償却をする場面があります。

それが、マンション売却後の不動産譲渡所得税を計算する場面です。

マンション売却後に税金を納めるかどうかは、売却価格と購入価格を比較して高く売れたのか安く売れたのかで分かれます。

ただし、購入当時の価格と比較するのではなく、売却時の資産価値と比較しなければならない決まりになっており、購入から売却までで減少した価値、つまり減価償却費相当額を購入価格から差し引くことになります。

マンションを売却したときの減価償却費の計算方法

減価償却資産は、国が定めた耐用年数によって減価償却率が決まっています。

居住用住宅の場合、上記のような耐用年数と減価償却率となります。

そして、減価償却費の計算は、

マンション購入時の建物価格×0.9×減価償却費×築年数

で計算します。

例えば、10年前に購入した建物価格3000万円の鉄筋コンクリート造マンションの場合、

3000万円×0.9×0.015×10=405万円

となり、この405万円が減価償却費に相当する額(減価償却費相当額)となります。

なお、このように毎年同じ金額が減価償却されていく計算方法を定額法といい、建物の減価償却費を求める計算ではこの定額法を使うことが一般的となっています。

建物価格が不明の場合

減価償却費は建物価格から計算するため、売却するマンションの購入時の建物本体の購入代金を、購入時の売買契約書で確認します。

ただし、売買契約書に建物価格が書かれていない場合は、購入金額の消費税から建物価格を算出します。

土地には消費税がかからないため、消費税額が分かれば建物価格を割り出せるからです。

平成20年に購入したマンションの購入金額が4000万円、その内消費税が100万円だった場合、

100万円÷消費税(5%)=2000万円

となり、建物価格は2000万円、土地価格は1900万円、消費税が100万円のマンションだったことが分かります。

売買契約書を紛失し本体価格が不明の場合

本体価格が一切不明の場合、専有面積が分かれば建物価格を割り出すことができます。

国土交通省が構造・年度別に建物建築単価を発表していますので、その単価と専有面積から建物価格を算出しましょう。

平成20年に建築された専有面積60㎡の鉄筋コンクリート造マンションなら、

20万6100円×60㎡=1236万6000円

が建物価格になります。

購入した時と同じ金額で売却したマンションは税金が発生するのか

減価償却費相当額が計算できれば、マンションを売却した後に支払わなければならない税金の額、または還付金の額を知ることができます。

一般的には、購入価格よりも売却価格が高ければ税金を納めなければいけないと言われています。

しかし厳密にはそうではないのです。

正確には、売却した時点の家の価値+購入と売却にかかった費用よりも高額で売却したときに税金を納めなければなりません。

では、購入したマンションが、まったく同じ価格で売却できた場合はどうなるのでしょうか。

10年前に購入した5000万円で購入した鉄筋コンクリート造マンション(建物価格3000万円、土地価格2000万円)が5000万円で売却できたケースで考えてみましょう。

10年前に5000万円で購入したマンションの現在の価値とは

まずは、建物の減価償却費相当額を計算です。

3000万円×0.9×0.015×10=405万円

続いて、本体価格から減価償却費相当額を差し引きます。

5000万円 – 405万円=4595万円

この4595万円が、減価償却された価値を差し引いた、現在の資産価値です。

購入と売却にかかった費用とは

今回のケースでは、購入と売却にかかった費用で最も高額であろう仲介手数料のみで計算します。

購入時の仲介手数料

5000万円×3%+6万円+消費税(5%)=163万8000円

売却時の仲介手数料

5000万円×3%+6万円+消費税(8%)=168万4800円

課税対象となる金額の計算方法

マンションを売却したときに譲渡益があれば課税対象となります。

課税対象となる金額(課税譲渡所得金額)は

売却価格 - 取得費(購入価格-減価償却費相当額+購入費用)- 売却費用

で計算します。

取得費とは、売却した時点の家の価値と購入費用を足した金額のことです。

先ほど算出した、売却した時点の家の価値と購入費用、売却費用を上記の式に当てはめると、

5000万円 -(4595万円+163万8000円)- 168万4800円=72万7200円

よって、譲渡益があるということになり、不動産譲渡所得税を納めなければなりません。

なお、今回は説明を簡略化するため、購入と売却にかかった費用を仲介手数料のみで計算しましたが、

・購入、売却時の印紙税
・不動産取得、抵当権抹消登記のための登録免許税
・司法書士への報酬
・リフォームにかけた改良費

なども取得費・譲渡費用として計上することができます。

また、築年数が古い実家マンションなどの建物価格がまったくわからない場合、概算取得費として売却価格の5%を取得費として計上することになります。

詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。

国税庁【No.3252 取得費となるもの
国税庁【No.3255 譲渡費用となるもの

不動産譲渡所得税とは

マンションを売却して譲渡益があった場合、確定申告をして不動産譲渡所得税を納める必要があります。

納める税金の額は、売却する家の所有期間によって変動します。

売却する家の所有期間による税率の違い

譲渡所得税は、国に納める所得税と、地方に納める住民税とに分かれます。

また、2037年までは復興特別所得税2.1%が加算されます。

所有期間によって税率が異なり、“売却した年の1月1日”に対して、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得税、5年と1日以上の場合は長期譲渡所得税となります。

 

譲渡所得の税率
(所得税+住民税)
課税譲渡所得
1000万円の場合
短期譲渡所得 39%(30%+9%) 納税額:390万円
長期譲渡所得 20%(15%+5%) 納税額:200万円

例えば、2015年の12月1日に購入した家を、2020年の12月2日に売却した場合、実際には5年と1日が経過しているのですが、所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断するため、2020年の1月1日では5年が経過していないことになり、短期譲渡所得税となります。

不動産譲渡所得税には控除の特例がある

不動産譲渡所得税は、“お金を儲けるつもりでマンションを売った人から税金をもらおう“という税制です。

儲けを出すつもりでマンションを売却したわけではないのなら、控除の特例を受けることによって税額を減らすことができ、税金を納めなくても済むことがあります。

ただし、控除の特例を受けるためには、クリアしなければいけない条件があります。

・売主自らが所有し居住している住宅(居住用財産)の売却であること
・現在住んでいない場合、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却すること
・特例を受けるためだけに入居した家、一時的な目的で入居した家、趣味や娯楽のための別荘などの家でないこと
・配偶者や子ども、父母、その他親族(内縁関係含む)や利害関係のある人物など特別な間柄の人への売却ではないこと

これらの条件をクリアしているマンションなら、売却後に受けられる控除が3種類用意されています。

なお、控除の特例を受けるためには必ず確定申告をしなければなりません。

確定申告について詳しくはコチラ【これから家を売る人も必見!「やらなきゃ損する確定申告」】をご覧ください。

3000万円の特別控除の特例

売主自らが住んでいる家を売ったときは、所有期間の長さに関係なく、最高3000万円までを課税譲渡所得から控除できます。

ただし、3年に一度しか控除を受けることはできません。

また、買換えの特例、譲渡損失がある場合の2つの特例と併せて利用することはできないので注意が必要です。

10年間ローン残高の1%が所得控除される「住宅ローン控除」との併用もできません。

軽減税率の特例

売却した年の1月1日時点で所有期間が10年と1日以上の自宅を売った場合、長期譲渡所得の税額を低くできる、軽減税率の特例を受けることができます。

軽減税率の特例が適用されると、課税譲渡所得額のうち6000万円以下の部分にかかる税率が14%になります(6001万円以上の部分は通常の20%)。

3000万円の特別控除の特例と同様に、3年に一度しか控除を受けることはできません。

また、買換えの特例、譲渡損失がある場合の2つの特例と併せて利用することはできませんが、3000万円の特別控除と併せて利用することはできます。

買換えの特例

売却した年の1月1日時点で所有期間と通算居住期間がともに10年と1日以上の自宅に適用されます。

上記の自宅を売った年の前年から翌年までの3年間に自宅の買換え(交換)をした場合、譲渡益に課税される税額を繰り越すことができます。

3000万円の特別控除の特例や軽減税率の特例が適用された、もしくは過去2年間の不動産売却で適用されたことがある場合は利用することができません。

また、売却代金が1億円以下であること、買い替え先の建物の床面積が50㎡以下、土地面積が500㎡以下であり、耐震住宅であることが条件になります。

さらに、住み替えのタイミングにより、旧居を売却してから2年以上、または新居を購入してから2年以上は住み替え先に居住することも条件になります。

譲渡損失があった場合も確定申告を

譲渡益があった場合は税金を納めるために確定申告が必要ですが、譲渡損失があった場合はその他の所得と損益通算をして還付金を受け取るために確定申告が必須です。

ただし、還付金を受け取るためにもルールが設けられていますので確認しておきましょう。

マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

新しい住居に住み替えるために、現在住んでいる自宅マンションを売却したときの譲渡損失に適用されるのが、「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」になります。

特例が適用されれば、所得金額の合計から譲渡損失額を控除し、税金の還付を受けることができます。

更に、控除しても残ってしまう譲渡損失額は、マンションを売却した年を含めた最大4年間繰越控除されます。

ただし、年間の所得金額が3000万円を超える年は控除されません(売却した年は3000万円を超えていても大丈夫です)。

売却するマイホームの条件

売却するマイホームは、

・譲渡損失があること
・所有期間が売却する年の1月1日時点で5年と1日以上
・日本国内で所有している自宅マンション(もしくは住まなくなって3年目の12月31日までに売却しているマンション)

・敷地面積500㎡以内501㎡以上の敷地に対応する金額は譲渡損失に適用されない

これらの条件をクリアしていなければなりません。

買い替え先の条件

「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は新居を買い替えることが条件です

そして、買い替え先は、

・旧居を売却して翌年の12月31日までに購入すること
・返済期間10年以上の住宅ローンが残っていること
・床面積50㎡以上の住宅

という条件をクリアしている必要があります。

その他の条件

その他にも、

・親族他、親しい間柄の人物への売却ではないこと
・過去3年以内にその他の控除の特例を受けていないこと

これらの条件をクリアしていなければ、特例が適用されません。

売却したマンションが適用条件をクリアできているかどうか、確認してみてください。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

自宅マンションの売却価格が、住宅ローン残高に満たず、譲渡損失が出てしまった場合の住宅ローン残高と売却価格の差額に適用されるのが「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。

この特例では、所得金額の合計から、住宅ローン残債の額または譲渡損失を比較して低い方の金額が控除され、税金の還付を受けることができます。

「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と同じく、マンションを売却した年を含めた最大4年間繰越控除されます。

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」では、新居に買い替える必要がないので、自宅売却後は賃貸住宅に暮らすという方でも適用されます。

ただし、年間の所得金額が3000万円を超える年は控除されません(売却した年は3000万円を超えていても大丈夫です)。

売却するマイホームの条件

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用されるためには、

・譲渡損失があること
・所有期間が売却する年の1月1日時点で5年と1日以上
・日本国内で所有している自宅マンション(もしくは住まなくなって3年目の12月31日までに売却しているマンション)
・売却時に返済期間10年以上の住宅ローン残高があること
・売却価格が住宅ローン残高を下回っていること

という条件がクリアされていなければなりません。

その他の条件

その他にも、

・親族他、親しい間柄の人物への売却ではないこと
・過去3年以内にその他の控除の特例を受けていないこと

という条件が必須になります。

売却したマンションが、特例を受けられるかどうか、確認しておいてください。

マンション売却時に譲渡損失が出たときの対応については、コチラ【マンションの売却損を取り返す方法とは?忘れちゃいけない確定申告】で詳しく解説しています。

売却するマンションを査定して事前に資金計画を立てよう

減価償却費がわかれば、売却後に税金を納めるのかどうか、還付金をもらえるのかどうかが分かります。

ただ、まだマンションを売却する前の場合、売却価格が分からなければどうすることもできません。

事前に資金計画を立てるためにも、不動産会社にマンションの査定を依頼し、査定価格から課税譲渡所得金額、あるいは還付金額を計算しておきましょう。

ただし1社だけの査定では、その査定価格が正確な金額かどうか判断できません。

不動産会社にはそれぞれ得意不得意があり、実績や経験も違うため、査定価格は1社ずつ異なる結果になるからです。

複数の不動産会社に査定を依頼して、査定価格の平均値を見ればより正確な自宅の価値が判明します。

そこで便利なのが、複数の不動産会社に一括で査定依頼ができる不動産一括査定サイトです。

物件の情報と売主の情報を入力するだけで、複数の不動産会社への査定依頼ができます。

複数社に査定を依頼したら、その分お金もたくさんかかるんじゃないの?
大丈夫です。その心配はありません。

 

複数の不動産会社に査定を依頼すれば、その分査定料金がかかるのではと思う人もいるでしょう。

質は、不動産会社に支払う費用は、売却が成立したときに契約していた不動産会社1社に支払う仲介手数料のみなのです

査定に費用はかかりませんし、査定されたからといって契約する必要もありませんのでご安心ください。

提携不動産会社数1800社以上!累計利用者数1000万人以上!『イエウール』

『イエウール』は2014年から運用を開始した、新興の不動産一括査定サイトです。

その成長スピードはすさまじく、わずか3年あまりで累計利用者数は1000万人を突破、掲載不動産会社数も1600社以上に達するなど一括査定サイトの急先鋒です。

ラインでやり取りするように査定依頼ができるので、依頼するのに必要な時間は1分あれば十分です。

提携不動産会社数が圧倒的に多く、アナタにあった不動産会社を早く見つけることができるでしょう。

マンション売却はお手の物!賃貸査定もお任せあれ『マンション.navi』

マンション.navi トップページ

『マンション.navi 』

『マンション.navi』のメリットは、とにかくマンションの売却に特化していること、マンションの売却と賃貸を同時に査定してもらえることです。

その他のサイトでも、売却査定と賃貸査定をそれぞれ別個にできるところはありますが、同時に最大9社まで(売却6社+賃貸3社)依頼できるのはかなり効率的です。

また、マンション売却経験者の生の声が聴ける「リアルボイス」というコンテンツもあり、実際に売却に入る前に、貴重な体験談を知ることができます。

相場価格がすぐに調べられる「マンションのWEB相場価格」も備わっており、売主へのサポートも充実しています。

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家を高く売るための不動産一括査定サイトの賢い使い方

まとめ:売却後の新生活のために、減価償却費について知っておこう

減価償却とは、本来は事業用資産が経年劣化する分の価値を経費として計上する手続きです。

しかし、居住用のマンションも減価償却資産のため、住み続ければ価値が下がっていきます。

この、マンションの減価償却費がわかれば、不動産譲渡所得税の計算に用いられる取得費がわかります。

つまり、減価償却費が分かれば、マンション売却後の税金や還付金の額が計算できます。

不動産会社に査定を依頼しておけば、査定額から取得費、売却費用を割り出して事前に資金計画が立てることができます。

マンション売却前に資金計画が立てられれば、売却後の新生活の計画も立てることができますよ。