転勤すると住宅ローン控除はどうなる?転勤先で住宅ローン控除を受ける方法とは
住宅ローンを利用してマイホームを購入した方なら、購入の翌年に確定申告をして10年間の住宅ローン控除を受けているのではないでしょうか。
そんな最中にもし転勤を言い渡され、引越しを余儀なくされてしまったら、残りの住宅ローン控除が受けられるのかどうかが気になりますよね?
結論を言うと、今住んでいる家を売却して、転勤先で住宅ローンを利用して新しい家に買い替えるなら、買い替えた新居で新たに住宅ローン控除を受けることが可能です。
住宅ローンが残っている状態で転勤を言い渡されたときの3つのケース
マイホームの住宅ローンが残っている状態で転勤が決まった場合、マイホームをどうするかによってその後の対応が異なります。
住宅ローン控除について触れるまえに、住宅ローンが残っている状態でとる行動のパターンを見ておきましょう。
マイホームを手放さない
マイホームは手放さず、転勤の辞令を受けたご主人に単身赴任をしてもらう方法があります。
または居住者全員で転勤先に帯同するとしても、賃貸に出したり両親に管理を任せたりして、マイホームを自宅として残しておく方法です。
ただし、条件によっては住宅ローン控除の対象外になりますので、注意が必要です。
マイホームを手放して賃貸に住む
マイホームを売却し、転勤先に帯同して賃貸に住む方法です。
今後も転勤が短いスパンで続く場合や、いずれは住みたい場所が決まっている場合、賃貸なら住宅手当などが支給される場合は、転居先では賃貸物件に住むパターンを選ぶ人も多いです。
この場合、マイホームを売却して住宅ローンが完済できたなら、返済すべき住宅ローン自体が消滅していますので、住宅ローン控除は受けられなくなります。
マイホームを手放して転居先で買い替える
マイホームを売却し、さらに転勤先で新しいマイホームへ買い替える方法です。
転勤先が住みたかった場所だった、子供も小学生以上などで部屋数が多い方がいいなどの理由で、転勤先で新しくマイホームを構える場合もあります。
この場合は前述通り、条件を満たせば買い替えた新しいマイホームの住宅ローン控除も受けられます。
住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除とは、「住宅借入金等特別控除」という正式名称で、住宅ローンの年末時点での残高と所得に応じて、一年の所得税額からの控除が受けられる制度のことです。
簡単に言えば、住宅ローンを払っている間は一年間の所得に応じた税金のうち、一定金額を差し引いて払う税金を抑えられる、節税効果が得られる制度と考えてよいです。
住宅ローン控除の適用の8つの条件
住宅ローン控除の適用は、以下の8つの条件を満たさなければいけません。
・新築または購入した日から6ヶ月以内に住み、控除を受ける年の12月31日まで住み続ける
・控除を受けたい年の合計所得金額が3千万円以下
・住宅の床面積の合計が50㎡以上、さらに半分以上は居住目的
・住宅ローンの借入期間が10年以上
・勤務先からの住宅ローン借り入れの場合は、金利0.2%以上であること
・親族や知人からの借り入れではない
・居住した年と前後2年(合計5年)の間に、ほかの居住用財産の譲渡に関する租税特別措置を受けていない
中古物件の場合はさらに条件がある
購入したマイホームが中古物件の場合は、さらに以下の4つの条件を満たさないと住宅ローン控除の適用にはならないため注意しましょう。
・地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの (耐震基準)に適合している
・平成26年4月1日以後に取得した中古住宅で上記に該当しない場合でも、購入日までに耐震改修を行うことについて申請、実施されれば「家屋が耐震基準に適合する」と証明されて、住宅ローン控除の適用になる
・知人や親族から譲渡されたものではない
転勤しても住宅ローンの控除を受け続ける方法
単身赴任の場合住宅ローン控除は受けられる
転勤や海外赴任などのやむを得ない事情がある場合は購入者本人が居住していなくても「配偶者、扶養家族その他生計を同一とする親族が該当の住宅に居住し続けている」場合は、購入者本人も居住しているものとみなされ、引き続き住宅ローン控除が受けられます。
つまり、転勤になって購入者本人が単身赴任して住んでいなくても、残された家族が住んでいる場合は、引き続き住宅ローン控除を受けられます。
単身赴任でも引き続き住宅ローン控除を受けるには、その家屋を居住の用に供しなくなる日以前、つまり購入者本人が単身赴任先へ転居する前に、手続きとして次の書類をマイホームのある所在地の所轄税務署長に提出する必要があります。
・未使用分の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」
・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(税務署長から交付を受けている場合)
いったん家族で帯同し、その後同じ住宅に住む場合は再適用になる
住宅ローンの残っている住宅を手放さずそのままにしておき、家族全員で帯同した場合はいったん住宅ローン控除の適応は受けられなくなります。
ただし、転勤先から戻ってきて再度その住宅に住み続けたときは、その年から住宅ローン控除が再適用されます。
しかし、住宅ローン控除の適応期間は最大10年で変わりません。
自宅に住んでいなかった期間分延長されるわけではありませんので、気を付けましょう。
マイホームに戻ってきて住宅ローン控除の再適用を受ける場合の最初の年分の手続は、必要事項を記載した確定申告書に次の書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(2か所以上から交付を受けている場合は、その全ての証明書)
・給与所得者の場合は、給与所得の源泉徴収票
なお、平成27年分以前の申告では、この控除を受ける本人の住民票の写し(マイナンバー(個人番号)が記載されていないもの)も必要になります
12月31日以前でも、条件を満たせば適用になる
住宅ローンの残っている住宅を残して家族全員で転勤先に帯同した場合でも、以下の条件を満たせば12月31日以前に転勤先に転居しても、その年は住宅ローン控除の適用になります。
・住宅購入時、購入者本人が6ヶ月以内に住んでいる
やむを得ない事情とは会社都合による転勤や海外赴任のほか、介護や療養による転居など自己都合でもやむを得ない事情と認められれば適応となります。
ケーススタディ
2017年4月に購入、5月に入居~12月31日まで住む←2017年は住宅ローン控除
2018年5月に転勤~家族全員で転居←条件によって住宅ローン控除適用か適用外かが決まる
2019年は転勤先ですごす←2019年は住宅ローン控除適用外
2020年4月にマイホームに戻ってきて以下継続して住む←2020年より住宅ローン控除の再適用
転勤先で家を買い替えれば住宅ローン控除が適用される
転勤によってマイホームの買い替えを行った場合も、条件を満たせば住宅ローン控除が適用されます。
転勤先で買い替えたマイホームも住宅ローン控除が受けられる方法を見てみましょう。
住宅ローンを利用して買い替えを行う
転勤前に住宅ローンが残っているマイホームを売却し、転勤先にて住宅ローンを使って新しくマイホームを購入すれば、新たに住宅ローン控除が受けられます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と併用できない
不動産を売却して譲渡益があった場合、通常であればその儲けに対して譲渡所得税を納めなければなりません。
しかし、自分が住んでいた家を売ったときに限り、3000万円まで課税される所得が控除される特例があるのです。
この特例を使用すれば、譲渡益が出たとしてもほとんどの場合税金を納めなくても大丈夫です。
ただ、住宅ローン控除と併用することができません。
住宅ローンの適応条件のひとつに「居住した年と前後2年(合計5年)の間に、ほかの居住用財産の譲渡に関する租税特別措置を受けていない」があるためです。
住宅ローン控除か3000万円の特例か、どちらが節税効果が高いのかを判断する必要があります。
ケーススタディ
旧居の売却益が1000万円、新居の住宅ローンが3000万円場合で考えてみましょう。
住宅ローン控除で控除されるのは10年間最大で300万円です。
一方、旧居の所有期間が5年以越え(長期譲渡)であれば譲渡所得税は約200万円、所有期間が5年以下(短期譲渡)であれば約400万円になります。
つまり、長期譲渡の場合は住宅ローン控除を受けた方が100万円の節税になり、短期譲渡の場合は3000万円の特別控除を受けた方が100万円の節税になるということです。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームの買い替えによって、旧居を売却した際に損失(譲渡損失)が出た場合に、一定の条件を満たすとその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除できる「損益通算」の特例があります。
さらに、損益通算を行っても譲渡損失が控除しきれなかった場合は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除ができる「繰越控除」の特例があります。
これらの特例を合わせて、マイホームを買い替えた場合の「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼ばれて。
ただし、これら「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」も住宅ローン控除と併用することはできません。
今住んでいる家がいくらで売れるのかを把握しておこう
住宅ローン控除を転勤先でも受けるには、まずは今のマイホームがどのくらいの価値を持っているかを把握しておく必要があります。
そのためには、複数の不動産会社に査定を依頼して、査定価格の平均値を算出します。
今すぐに転勤の可能性がなくても、住宅ローン控除の面で、今住んでいるマイホームの査定を受けておくと有効な理由やメリットをご紹介します。
住宅ローン控除とその他の控除特例を比較するため
転勤先で新居を購入したときは住宅ローン控除を受けるか、譲渡益があったときの特例または譲渡損失の損益通算を受けるか、節税面でどちらがお得になるかを理解した上で、適用させる特例を選びましょう。
そこから税金の額を算出して、住宅ローン控除で10年間控除される額を比較します。税額計算が複雑で分からない場合は、税理士に依頼をしましょう。
損益通算および繰越控除の特例が使えます。ただし、譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例を適用している間は住宅ローン控除が適用されません。しかも、住宅ローン控除が受けられるのは最大10年です。住宅ローン控除を減税として適用していない間でも、残期間は減っていくので注意しましょう。
どちらを選択する方が高い節税効果が見込めるのかは、事前に家の売却価格が把握できればわかります。
土壇場で慌てずに済むので、家がいくらで売れるのかは実際に売却活動に入る前に掴んでおきましょう。
今の家を売って住宅ローンを完済できるかを知るため
転勤にともなうマイホームの買い替えをすれば、転勤先でも住宅ローン控除が受けられると分かりました。
ただし、今住んでいるマイホームが住宅ローン残債を上回らなければ売却ができません。
まずは今住んでいる家がいくらで売却できるのかをするために、査定を受けてみましょう。
実際に住宅ローン残債なく買い替えができると分かれば、急な転勤のときも、速やかにマイホームの買い替えに動けます。
ただし、マイホームの査定価格は不動産会社によって異なり、より高い価格でマイホームを売却するには、複数の不動産会社を比較することが大切になります。
複数の不動産会社を比較したいなら、不動産一括査定サイトで複数の不動産会社に査定を依頼するのが有効です。
まとめ:マイホームを買い替えれば住宅ローン控除は転勤先でも利用できる
住宅ローン控除は大きな節税効果があるので、住宅ローンを利用してマイホームを購入したなら必ず利用したい特例です。
最長10年間控除されるのに、転勤のせいで数年しか適用されなかったなんてことになってしまわないように、転勤時に住宅ローン控除がどうなるのかはしっかり把握して、対応策を覚えておくようにしてください。
そのためにも、まずは今住んでいる家がいくらで売却できそうなのかを、複数の不動産会社の査定価格を比較して予想を立てておくことが大切です。
そうしておくことで、今後とるべき行動が見えてきますので、まずは不動産一括査定サイトを使って、複数の不動産会社に査定依頼をしてみましょう。